第4話 佐野健

2年前・・・

「ようし、今日の練習も終わり。最終下向時刻なでには帰れよ。1週間後の試合までに各自調整しとくように。それじゃあ解散」

「ありがとうございました!」

今日の練習も終わったか。1週間後の試合の相手のクラブチームはなかなかに強いと聞く。

どれだけ自分が通用するか楽しみだ。


「ピッ、ピッ、ピーー」

「はあ、はあ、はあ」

0−13、嘘だろ。

県内でも俺たちは強い中学校のはずだ。それがどうして、こんなにボコボコにされるんだよ。

ふと俺は皆んなの様子を見た。

まるで死んだような目つきをしていた部員がコートに立っていた。

まるで気力がない。

聞いたことがある。とてつもなく強い相手と戦った時、そのスポーツを辞めかねないような大ダメージを被うことになると。

「みんな、ドンマイドンマイ。練習あるのみだよ!」

反応がない。おい、みんな、どうしたんだよ。いつもみんなでやってきただろ。

俺は怖かった。皆んなのようになってしまうのがただただ怖かった。

唖然と立っている俺の横を相手チームの選手が横切った。あたかもこの結果が当然だったような顔をして。

ふざけんな。ふざけんな。ふざけんなよ。

クラブチームだから何だよ、そこに入ってるだけで俺らより強いってか?

認めねえぞ、俺はそんなの絶対に認めねえ。


そこから俺は毎日放課後一人で残って練習を始めた。1日は24時間しかない。だからこそ俺は時間効率を良くして全ての物事を片付けて練習をした。

俺は体力とポジティブな精神力が取り柄だった。

あの日大敗したメンバーのほぼ全員が辞めてしまったけど俺は何事も前向きに考えて練習をしまくった。

やがて俺はチームで1番の実力を誇るまでに至った。

それから1年後、俺は中学3年生になり、中学最後の試合にまたあの日大敗したチームと再戦することになった。


皆んな、動いてくれよ。おい、まだ終わってねえだろ。

何でだよ、おい。


結果は0−10、また大敗だ。またその日でたメンバーはほぼ全員退部した。

俺も引退試合だったためその試合がラストの試合だった。

正直納得がいかねえ。俺は決して負けていなかったはずだ。

皆んなが諦めたから、くそくそくそ。

そしてまた1年前と同じやつが俺の横を横切った。美しくもまだ咲かない秀を見つめながら。


少しして俺は1つの結論に至った。

俺が一人でチームを勝利に導ける選手になればいいということに。

そこから俺は受験勉強をしつつトレーニングを欠かさなかった。

強くなるために。


受験は成功した。千葉のそこそこの学校に入学することができた。おまけにサッカー部もまあまあ強い。

ようしもっと強くなるぞ。

あの日戦ったチームの様な圧倒的な強さを誇るチームに勝つために。

そんな気持ちで俺は高校に入学した。


突然、同じクラスのサッカー部のやつが言った。

「おい、これ見てみろよ。末野裕太って試しに調べたら顔写真出てきたぜ!」

そう言われてスマホの画面を見せられた。俺はその画面を見た瞬間体の奥底から何かが沸々と膨れ上がった。

この顔、このチーム、末野お前。

あの日のあのクラブチームのメンバーだったのかよ。

試したい。あの日から俺がどれだけ強くなったのか。

そうして俺は末野に勝負を挑んだ。




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