第2話 落ちてた眼鏡は拾っとけ⑵

「ガラガラガラー」

年日のはいったドアの音。

「失礼します」

そう言い、図書室に入るともう既に同じクラスの図書当番のペアである鈴木さんはカウンターに座っていた。

今日は昼休みは図書室の司書からの大体の仕事の説明を受ける。

俺はカウンターにある3つの椅子の真ん中を空けて鈴木さんとは1つ椅子を空けるようにして座った。

するとすぐに司書からの説明を5分ほど受けた。

そして、鈴木さんと俺は昼食を食べ始めた。

気まずいな、とても気まずい。

こういう時の選択肢は2つある。

①なにも話さず穏便に図書当番の時間を過ごす

②試しに話してみる

①は鉄板だ。だけど①はこれからの図書当番が本当につまらなくなる。

だからと言って②は俺には難しい。

もし②を選んだとして無理に話しかけて無視でもされた時はやばい。

俺は120%の確率で泣いてしまうだろう。

はあ〜、どうしようかな〜。

そんなことを考えながら俺は弁当を食べ進める。

あ、米粒落ちちまった。

俺はそれを拾おうと思い、少し屈んだ。

カチッ、カチッ、ちょっと学ランのポケットに入れた眼鏡が気になるな。

昼休みの時間はカウンターの机の上に置いておくか。

俺はそう思い眼鏡を取り出して机に置いた。

「あ」

ん?今鈴木さん何か言ったのか?

そう思い、鈴木さんに目を向けると、彼女は机に置かれた眼鏡をずっと凝視していた。

ん?まさか、この眼鏡って。

キーンコーンカーンコーン

一旦授業も始まるし帰るか。この件は放課後に回そう。


そして、帰りのショートホームルームが終わり、図書当番の時間がやってきた。

カラカラカラー

「失礼します」

あ、鈴木さんまだきてないな。

少し時間が経ち、鈴木さんが入ってきた。

昼休みのように彼女も椅子を1つ空けるようにして座った。

ん〜、とりあえず眼鏡置いてみるか。

カチャ、俺は眼鏡を慎重にカウンターの机に置いた。

そして、また昼休みのように彼女は眼鏡を凝視した。

は〜、何か言いたげな顔してるし絶対この眼鏡鈴木さんのだよな〜。

面倒なことになった。

俺は落とし物を事務室に届けずにずっと学ランのポッケに入れてたちょっとヤバい奴って思われてんのか今頃。

本当に面倒だな。

とりあえず返そう。

「あの〜、この眼鏡ひょっとして鈴木さんの?」

「はい!あ、ありがとうございます!」

あれ、意外と好印象なのか?

「入学初日に拾ったんだけど完全に忘れてて事務室に渡し忘れてたんだ。本当にごめんね」

「いや、結果的に私のところに戻ってきてるから、感謝するのは私のほうだよ、ありがとう!」

ん、いつもと印象が違うな。

なんか、なんて表現すればいいんだ、癒されるっていうか場があったくなるというか。

まあ、率直に言うと可愛かったんだ。

久しぶりだよ創作物以外でこんな気持ちになるのは。

この際だしもうちょっと話してみるか。

「ねえ、どこからきてるの?」

「千葉みなとからだよ」

「え、俺も千葉みなとからだよ」

同じ地域に住んでいたとは驚きだな。

「どこの中学だったの?」

そんな感じで会話が弾み、帰りも一緒に帰った。

「もう遅いし良ければ送るよ」

「いや、いいよ。末野さんの帰りが遅くなっちゃうし」

「わかった。気をつけてね」

そんな感じで、俺たちは解散するはずだった。

「さっきも言ったけど、気にせず帰っていいよ」

は〜、帰りまで道同じなのかよ!

これじゃ俺がキモイ奴みたいじゃねーか。

「いや、俺も帰ろうと思ったんだけど・・。俺も帰り道こっちなんだよね」

「あ、そうだったんだ。なんかごめんね」

は〜、一気に気まずくなったな。

まあ、もうすぐすれば流石に・・・

「あの〜、もういいんだよ帰って」

「いや、その〜同じ帰り道で〜・・・」

「あ、そうだったんだ。ごめんね」

は〜、ここまで同じとは。

まあ、もうすぐすれば流石に・・・

「あの〜、まさかとは思うけど・・・」

「俺もそう思ってました」

「「同じマンションなの!?」」

おいおいマジかよ。どうやら同じマンションだったらしい。

流石に階は違うけど。

そんなこんなで、怒涛の1日が終わった。


そして次の日

「「あ」」

またか、また鈴木さんと会った。

これ、一緒に行くやつなのか。

女の子慣れしてないから分からねえ。

まあ、マンションのエントランスで会って一緒に行かないわけにはいかないよな。

てか、鈴木さん前髪切ったのか。

いつもは前髪が長くて目があんまし見えなかったけど、かわいいな。

それに俺が昨日返した眼鏡も付けている。

まるで、今までの彼女とは別人のようだ。

そんなこんなで俺は鈴木さんと朝の登校を共にした。


そして俺は鈴木さんと共に学校に着いた。

「お、末野、おはよう」

「おう佐野、おはよう。またおにぎり食ってんのか、朝練あったんだな」

サッカー部はほぼ毎日朝練と放課後練をしている。

は〜、今日も学校後すぐ家に帰ってゲームでもするか。そんな事を考えながら俺は自分の席まで歩いていると・・

「おいおい、なにがどうして今日鈴木さんと登校することになったんだよおい」

まあそうなるわな。高校入学から女子とは無縁の俺が女子と登校なんて考えられないよな。

誤解されないように慎重に対処しないとな。

「昨日の図書当番でちょっと仲良くなったんだ。通学路も一緒でな、登校してる時たまたま会ったから一緒に学校まで来たんだよ」

こんな感じでいいよな。

「は〜、なんか怪しいな。他にも隠してることあるだろ〜、おいおい」

こいつ感がいいな。面倒くさくなるからマンションが同じってことは隠しておいたんだが。

「何もねえよ」

「は〜、ま、いいや」

ふ〜、一旦見逃されたってとこか。

それより、なんか教室暑いな。

何でだ。

メラメラメラ、ん?なんか音がするな。

メラメラメラメラメラメラ、ん?何か燃えてんのかこの音。

おいおい教室が燃えるなんてことあんのか?

そうして俺は教室を見渡した。

メラメラメラ、そこでは花野さんに思いを寄せた男子達が熱気を帯びていた。

そうか、今日はマラソン大会か。









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