第6話
*
「――この忘れられた都市は今から五百年前に、とある冒険者によって発見されました。以後発掘が進んでいますが、未だ謎は多く……」
紺地に白と紅の縁取りをあしらったこの土地独特の衣装を身に纏った青年は、衣装に似つかわしくない黄金色の長く豊かな髪を、肩の辺りで緩く一本に結んでいた。
「ねえねえ、ガイドさんは此処の人? 金髪なんて、珍しいわねえ」
観光客の女性が興味津々な眼差しで青年を見やった、その刹那――
“エトゥン ユル イスト……”
鈴のような声とともに、大きな旅行鞄を持った一人の少女が姿を現した。
漆黒の長い髪、宵闇色の瞳。
華奢な身体に纏われた白いワンピースが、ふわりと風に揺れる。
「“エトゥン ユル イスト”……アンスル古代語で、約束は、守られた……ですね?」
瞳を見開いた青年は二度瞬きをしてから穏やかに少女へと微笑むと、少女もまた、青年を見上げて微笑んだ。
「久しぶりね、ウル」
「あなたを待っていました、リュリ」
――空は、蒼。
祝福の紅色の花弁がひとひら、天へと昇っていった――
*FIN*
幼い約束~いつかまたここで~ 水無月 秋穂 @kosekiryou
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