第12話 ウィッシュ再び

 激しい戦闘の末、俺の倍ほどある怪物を何とか倒した。しかしながら俺も大きな代償を払った。左腕と右目を失ったんだ。両手でおっぱいを揉めないじゃないか!どうしてくれんだよ!ぱふぱふの夢が・・・

 俺の心はついに壊れてきたのかな?確かにおっぱいのことは大事だが、今思うことじゃない。生き残ったときのことを考えたくなく、現実逃避したとも言う。

 幸いなのは右腕が無事だということだ。色々な意味で俺は右利きだ。


 コホン。体中に傷があり最早限界を迎えていた。

 荷物を探ると・・・ありがたいことに回復ポーションが1本残っており、一気に飲んだ。

 液体が体に染み込んでいき、直ぐに痛みが引き呼吸も楽になった。

 しかし、最後の1本だった・・・


 今は魔物が近くにいないので、槍を地面に立てて寄りかかるようにしてひと息ついた。

 座ってしまったらもう立ち上がれないだろうな。


 仲間たちの無事を祈った。いや、シズク、リナ、みっちゃんの3人だけでも無事でいてくれと。

 他の奴のことまで知らん。


 そして今、俺の前には二つの道があった。一つはこのまま地面に横になって安らぎの地へと行き、怪我や疲れから逃れること。もう一つは力を振り絞り最後まで戦い続けること。

 疲れた・・・

 もしここに布団があったらもう横になっているぞ。


 とはいえ、もちろん俺の決断はもう決まっている。


 シズクが俺に託した願い・・・死んだクラスメイトの分まで生きること。それを守るために俺は立ち上がり先に進むことにした。


 その時ふとスマホを見たが、どうやら俺は半日ほど気絶していたことに気が付いた。

 回復ポーションを飲んだ後一瞬意識が飛んだと思ったら、半日寝ていたらしい。


 幸運にも魔物に襲われなかったが、欠損部位は治らなかった。自分の体を見てから、シズクから貰った槍を見た。元は魔鋼鉄だったはずだがオークジェネラルに続き、矢と槍はミノタウロスに刺さった状態で霧散し、更なる進化を遂げていた。


 これまで倒した中程度の魔物では矢とかナイフ位しか進化しなかった。でも、オークジェネラルやミノタウロスは強かったからか、魔鋼鉄の槍が進化したんだと思う。

 つまり、大きな武器が進化するのは強い魔物だけっぽい。


 今ある武器は・・・斬馬刀は両手でも持てないほどの大きさで、とてもではないが俺には持つことすら無理だ。

 それと理解しがたいほどに進化したシズクの槍が俺の手元にある。片腕となった俺にとって、今頼りになるのはこの槍だけだ。投げてくれたシズクに感謝だ!


 槍を見る度にシズクの顔が思い出され、槍を手にし弓矢は背中に背負う。片腕では使えないけど、アーチェリーは意地でも持ち帰ると決めたからだ。


 そして少し休むと再び前に進んだ。

 背後から魔物の気配が迫って来ているからだ。そしてすぐにボス部屋らしき扉が現れた。


 少し前から背後に魔物の気配があったが俺は怖くなかった。背後の魔物に追いつかれたら終わりだと思う反面、生きる望みはこの扉の向こうにあると分かっているからだ。恐らく中に入れば後ろは気にしなくていいだろう。


 でも・・・扉の向こうにはもっと恐ろしい奴がいるんだろうな。嫌だなぁと思うも扉を開けて中に飛び込むしかなかった。


 扉を開けるとやはりというか、そうですよねぇ・・・と唸るしかなく、デデデデン!と効果音がしそうな奴がいた。これは巨大なトカゲ、いや、ドラゴンだな?

 絶望としか言えない巨躯が中央にいた。大きさは・・・そうだな、一軒家ほどの大きさだろうか?100匹以上の魔物が周りにいて、広さは野球場くらいだった。

 サイクロプスや先ほどまで死闘を繰り広げたミノタウロスまでいやがる。それで大きさの比較ができたんだけどね。


 正直な所何の根拠もないが、胸騒ぎがした。俺の命が風前の灯だというのとは別で、シズクたちが危ない!何故か直感がそう告げたとしか思えず、彼女たちの周りにいる魔物を倒さなきゃと思ったんだ。

 これも何の根拠もないが、俺になら出来ると直感が告げる。


 そして俺はドラゴンに向かって叫んだ。


「お前たち魔物なんか全て死んでしまえ!滅びろよ!」


 その瞬間、スマホからアナウンスが流れた。


『畏まりました。現在のレベルですと半径100キロメートル以内の魔物を全滅出来ます。魔力不足により記憶等、精神的な障害が発生する可能性がありますが宜しいでしょうか?』


 俺は迷わなかった。障害が残ろうが残るまいが、今死ぬか生き延びるかの選択肢しかなかった。シズクやリナを助けるにはこの選択しかないと俺の直感が告げる。

 今までの人生でこの【直感】が外れたことはないんだ。だから迷わず実行を選んだ。例え障害が発生したとしても一時的なことで、いずれ治ると今は信じるしかなかった。


「やれ!」


『畏まりました。ウィッシュを発動させます』


 すると全ての魔物の頭上には一体につき1つ、その強さに応じた様々な大きさの魔法陣が現れた。魔法陣が現れ魔物の頭の上に来ると即時に光の矢が魔物目掛けて降り注いだ。

 見える全ての魔物に光の矢が降り注ぐ様は圧巻としか言えなかった。


 光の矢はドラゴンの体をも容易く貫通し、俺がすっぽり収まるほどの大きな穴を穿った。ドラゴンは断末魔の悲鳴を上げ、開いた穴から煙と血を吹き出しながら崩れ落ちた。他の魔物たちも抗うことができず、次々と爆散したりし、消滅していった。あっという間の出来事で結局魔物は一匹たりとも残らなかった。自分がしたこととは言え、ただただその現実離れした光景に圧倒されながら眺めるしかなかった。


 その瞬間俺は勝利の雄叫びを上げたが、急激に頭が痛くなりブラックアウトした・・・

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