第2章「貴方のぬくもりをください」


 チャクラを極力温存したい彼女の願いを欺くかのように、この日は、御忍高校内でいろいろな事件が起こった。


 敵対組織のボスと激似のため外国人マフィアに暗殺されそうになった校長の命を救ったり……


 異空間から御忍高校目掛けて落下してきた隕石を落下前に破壊したり……


 いち男子生徒の逆恨みから、女子生徒にモテモテのイケメン数学教師がヅラを外している瞬間を捉えた写真が SNS で拡散されるのを未然に阻止したり……


 次々と勃発するアクシデントの対応に追われ、放課後になる頃には、美影のチャクラ残量は12%にまで低下していた。


「これは久々の緊急事態だな……“アレ”をやるのは気が引けるのだが、四の五の言っている場合ではなくなってしまったな」


 そう言いながら、美影は、男子バスケットボール部の部室に忍び込んだ。元々のチャクラ量が多い上に、チャクラコントロールに長けた美影が、たった一日でこれだけチャクラ量を消耗することは極めて稀なことである。このまままっすぐ帰宅すれば、父が発明した“忍び七つ道具”のひとつ“チャクラ急速充電マシーン”で速攻回復することができるのだが、帰宅途中で、また事件に遭遇した時に“人助け”をすることができなくなる。目の前で助けを求めている人を見捨てることは、美影にとって“死”よりも辛いことなのだ。


 服部家の子孫のくノ一が、このような緊急事態にとるべき手段はたったひとつ、



―― 好意を抱いている殿方の“ぬくもり”を頂戴すること……だ。

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