第15話 花言葉1「優しさ」



気が付けば私にキスをしている兄がいた。


「っふ」


押し付けられた兄の唇の感触に益々頭が真っ白になった。


(キス?! 私、お兄ちゃんにキス、されているの?!)


何度も夢に見た願望が現在進行中で行われていることで脳内パニックを起こしている。言葉を発したくて薄く開けた唇から兄の熱い舌が差し込まれた。


(嘘っ!)


私の口内を兄の舌がいやらしく動き回って蹂躙する。


「ふぅ、んんっ、っ」


兄から与えられる快楽に頭がぐずぐずになって何も考えられなくなる。


しばらくの間なすがままになっているとようやく兄は唇を放してくれた。その時私と兄の間に繋がった透明な糸を目にした瞬間、カァッと体中が熱くなった。


「な……なんでお兄ちゃん、私にキス……」

「されたかったんだろう? 俺に、こういうことを」

「……え」


濡れた口周りをベロッと舌で舐めた兄の表情は先刻までとガラッと変わっていた。


(何…? お兄ちゃん、別人みたい)


「清子、言ったよな。俺とセックスしたいって」

「?! セッ……なんて言ってない!」

「言い方なんてどうでもいい。つまり清子は俺に抱かれたいと思っているんだろう」

「そ……そ、そんな……こと」


兄は私の服に手をかけながら話すのを止めない。


「清子をそんな風にした原因が俺にあるなら俺は責任を取らなければいけない」

「?!」


兄の言葉に何ともいえない哀しい気持ちが湧いた。だけどその気持ちを感じ、考える時間は私にはなかった。


兄は私の着ていた服のボタンを外しそのまま両側に開け放った。


「やっ!」


いきなり肌が外気に晒された冷やかさと、下着姿を兄に見られた恥ずかしさから懸命に抵抗した。


だけど私なんかの抵抗を兄はいとも簡単に交わし、どんどん私の体は素肌を晒して行く。


「止めて、お兄ちゃん!」

「止めていいのか」

「え」

「清子の俺に対する気持ちはその程度だったってことか」

「……何、を」


兄は何を言おうとしているのか。


「俺は清子の気持ちを受け入れる」

「は?」

「清子が俺を好きだと言うのならその気持ちを受け入れる」

「……お兄、ちゃん?」

「俺だって清子のことが好きだ。だけどその好きは今はまだ妹という領域を出ていない」

「……」

「清子の好きと俺の好きは少し違うのかも知れないが、それでも俺は清子の望むものを与えたいと思っている」

「……」


兄が何を言っているのか解らなかった。私を好きだけれどそれは妹としての好きで、私が望んでいる好きとは違っている。


だけど兄は私の気持ちを受け入れようとしている──……


(ということ……なの?)


「清子」

「な……に」

「俺と獣以下の行為が出来るくらい好きか?」

「!」

「俺はいいよ。清子が望むなら一緒に堕ちる処まで堕ちてやる」

「~~~」


そんな風に艶やかに誘惑する兄に逆らえるほど私は強い女ではなかった。




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