第8話 花言葉1「優しさ」
(えぇ、なんでいきなりそんな大笑いを?!)
私は何か笑えるようなことを言ったのだろうかと、ほんの数十秒前の自分の言葉を反芻した。
(可笑しいかな? 可笑しなことを何かいった? 私)
戸惑いながらも未だに笑い声をあげている彼をジッと見つめた。
(……なんだか随分と印象が違うなぁ)
最初、店長室で会った時に感じた威圧的な息苦しい感じは今、此処にはなかった。
「は……はははっ……はぁ……あぁ、久しぶりに笑いました。面白い人ですね、あなたは」
「そう、ですか? 自分では分からないですけど」
「あぁ……とても新鮮です」
「?」
小さく呟いた彼の言葉は私の耳ではよく訊き取れなかった。
やがて車が停まり促されるように降りた其処には見たこともないようなお屋敷がそびえ建っていた。
「こ、此処は……」
「僕の家です」
「?!」
確かに家に行くとは言っていたけれどまさかこんな鹿鳴館みたいな建物だとは思わなかった。そう、その建物は教科書に載っているような昔の洋館みたいな佇まいをしていた。
あわわと戸惑っている私の背中に温もりが灯った。
「っ!」
「さぁ、どうぞ」
私の背中に掌を添え、中に入るようにとゆっくり歩き出した。
(な……何何何、何なの、この展開は!!)
ここ一時間足らずで起きている出来事が現実ではないような気がしてならない。
(一体どうしてこんなことに……)
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「ただいま」
(へ? ご、ご主人……様?!)
開かれた玄関ドアからひとりの女性が現れ、私たちの前で深々と頭を下げ挨拶した。
「お早いお戻りでございますね」
「あぁ、少し事情が変わってね」
「そうでございましたか」
彼と話をしている女性がチラッと私に視線を這わせた。
「彼女は僕のお客様です。丁重におもてなししてください」
「かしこまりました」
彼女は頷きながらまた丁寧にお辞儀をした。
(この人は……メイドさん? なのかな)
格好といい喋り方といい、その女性は何処からどう見てもメイド喫茶にいそうな感じの若い女性だった。
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