第三十五話 お家デート
今日、僕は久しぶりに緊張していた。なぜならば、僕の家に、初めて諒花が遊びに来るからだ。
家族には、来ることを伝えていなかった。
そもそも、僕に彼女がいることを話してすらいなかったけど、何回も僕なりのオシャレをして出て行っているので、母親には勘づいているかもしれない。
ピンポンとチャイムが鳴った。
「あら、誰?」
インターホンに近づく母親を制止して、僕が出た。
「あー今開けるよ」
「誰なの?」
母親は怪訝な顔でそう聞いた。
「あ、後で言うよ」
僕は慌てて不自然に誤魔化し、玄関へ向かった。
ドアを開いた先に、諒花が居た。
「や、お邪魔していい?」
「う、うん。どうぞ」
「お邪魔します」
「あら!?いらっしゃい!」
「お母さんですか?」
「はい、渡の母です。ごめんなさいね、こんな格好で。この子ったらなんも言わないんだから」
「え、えっと、初めまして。私は、渡くんとお付き合いさせてもらってる古賀 諒花です」
「あら、そんなに畏まらなくていいわよ。ちょっと私準備してくるから、お茶とかはちょっと待っててもらってもいーい?」
「はい。ありがとうございます」
「は、早くお母さんはあっちいって!じゃあ、部屋入ろ」
そう言って僕は、諒花を部屋に案内した。
「へぇー、こんな部屋なんだ」
「こんなへや?」
「男の子って感じの部屋だなって」
「ほら、プラモとかフィギュアとかマンガとかいっぱいあるし」
「あぁそういう事ね。と、とりあえずそこ座って」
「うん」
諒花が僕の部屋にいる。それだけで僕は緊張して固くなっていた。
「あ、あの、ゲームやる?」
「なんのゲーム?」
「FPS...」
「えー、ウチやったことないなぁFPSなんて」
「物は試しにさ」
「渡くんがそういう言うなら、やってみよっかな」
そうやって僕らはFPSゲームを始めた。
まずは練習モードからだ。
「これをこうして、あっ」
「あっごめん」
僕は諒花に、ボタンを実際に押しながら教えていると、コントローラーに指と指が触れ合って、僕らは照れた。
「ほうほう、このボタンがこの動きなんだ」
諒花は順調に操作を覚えていた。
「じゃあ実践行く?」
「行く!」
実際にバトルモードへ行くと、諒花はやはり操作がまだ慣れていないので、やられてばかりいた。
「うわぁー、ダメだー」
「やっぱり初めてだし難しいよね」
「よし、次!」
それでも諒花は諦めなかった。
「お!当たった!」
「おお」
何戦かやって初ダメージをたたき出すと、そのままキルもした。諒花はFPSのセンスもありそうだった。
◇
FPSゲームでかわりばんこでやって、疲れた僕らはゲームを終えた。諒花は、部屋に飾られている写真を見て、アルバムを見たいと言ったので、見せた。
「渡くんの小さい頃、こんなんだったんだ!」
「恥ずかしいなあ見られるの」
「ふふ、後でウチのも見せてあげるからさ」
「なら仕方ないか」
諒花の子供の頃の姿は普通に気になった。
思えば、中学時代の真面目な委員長時代の諒花のイメージすら湧かない。
黒髪時代はどんな雰囲気だったのだろう。
「でも、こうやって見てると、今と見比べても、渡くんそんな変わらないような気がするなあ」
「恥ずかしいなあ比べられるのも」
「渡くんは、昔から渡くんだね」
そう言って諒花は笑った。
「なにそれ」
僕は照れくさくそう言った。
僕は僕なりに昔と結構変わっていたように思ってたけど、まあ人間の本質なんてそうそう変わるものじゃないし、そういうのを諒花は見抜いているのかもしれない。
「これでアルバムは終わりかーもっと見たかったな」
「なんか、すごい懐かしい気持ちになったよ」
「ウチも」
「アルバムも見終わったし暇になったね」
「確かに。暇だし渡くんの部屋くまなく見ていい?」
「え、いいけど」
「許可したね?見られちゃダメなものとか置いてない?大丈夫?」
「え、それって例えば?」
「うーん、Hな本とか」
「お、置いてないよ!!!」
「ほう?じゃあこれはなに?」
諒花が手にしていたのは、18禁美少女ゲーム、通称エロゲというやつだ。
確か、ストーリーが良いということでちょっと前に買ったんだけどプレイせず放置してて存在を忘れていた。
「あ、そ、それは」
「しかも、このパッケージの女の子、ギャルだね。清楚系白ギャル」
「い、いや、たまたまだよ。そ、それにそれはストーリーが神だから買っただけでえ……」
「おけおけ、別にどうとも思ってないよ」
からっと諒花はそう言った。
僕は内心ソワソワだった。
「引き出し開けてみていい?」
「いいけど、なんも面白いもの入ってないよ?」
「そうかなぁ?ウチ結構、友達の家の引き出しとか気になるんだよね」
そう言って諒花は引き出しをガラガラと開けると、
「お、何この紙」
そう言って折りたたまれたノートの切れ端を見つけたらしい。
あ、それはまずい。
「そ、それは!」
「見ちゃダメなやつ、、?」
「う、、うん。って、もう見てるし!」
「ごめん見ちゃった」
諒花はそう謝りつつも、結局その紙の内容をじっくりと見てしまった。
「ふむふむ、えっ...こんなに!?渡くん、、、!」
「な、なに?」
「最高に可愛いね、君」
「うあああああああやめてえええええええ恥ずかしいからああああああ」
それは、諒花とのデートの計画が詳細に書かれていたノートの切れ端だった。計画だけでなく、今の心境や、どういう心持ちでデートに望むべきかや、自分を奮い立たせる言葉を書きなぐっていた。これは恥ずかしすぎる。
「ちょっとお兄ちゃん?うるさいんだけど」
妹の声がして、僕の部屋のドアをコンコンと叩かれた。
「あ、ああごめんごめん」
僕はドア越しに謝った。
「え?妹さん?」
「う、うん」
「会いたいんだけど!」
「えぇ!?ちょっ!」
諒花がその気になった時は止められない。もう僕の部屋のドアは開かれていた。
「わっ!」
妹が突然開かれたドアにびっくりして声を上げる。
「こんにちは、渡くんとお付き合いさせてもらってる古賀 諒花です」
「こ、こんにちは」
「諒花さんでも、諒花ちゃんでもなんでも呼んでいいから仲良くしてね」
「じゃあ、諒花さんで」
「と、とりあえず、二人ともゲームやる?」
「へ?てかお兄ちゃん!彼女さんいるなんて聞いてないよ!」
「まぁ言ってなかったしね」
「えっと、妹さんのお名前は?」
「あ、私は真波です」
「真波ちゃん、せっかくだし一緒ゲームやる?」
「いいんですか?」
「うん。いいよ。ゲームは人数多い方が楽しいし」
「ほら、真波も、ここ座ってやろう」
「う、うん」
そんなこんなで3人でゲームをやる流れになった。
やるゲームは、○太郎電鉄だ。
「CPU誰にする?」
「私は誰でもいいよ」
「ウチは、やっぱりさぐま社長かな。強敵の方が燃えるし」
「おっけい」
こうして、○太郎電鉄のゲームは始まった。
最初はみんな1000万円を持ってスタートする。
最初のゴールに着いたのは僕だった。
しかし、、、
「うわぁ、最悪」
僕はあんまりビンボーはつかなかったのに、僕にビンボーがつくタイミングでばかりキングビンボーやら、ハリケーンビンボーに変身して結果、借金まみれになった。
一方の、諒花は、
「よし!いい感じ!」
着実に強いカードを集め、それを駆使して上手く立ち回っていた。ゴール回数はいちばん少なかったが、それでも借金になることは少なかった。
妹は、お金や物件を上手くやりくりしていた。一番運がよく、目的地にも一番多く着いてプレイングが様になっていた。
結果は、一位真波、二位諒花、三位さぐま、四位僕だった。
「うわぁ、、ツイてなかったな」
「ゲーム上手い印象あった渡くんが。意外すぎる」
「お兄ちゃん毎回、一位とるから今回は運が無さすぎたね」
○太郎電鉄、時には運でどうしようも出来ない状態になり、友情破壊もしかねないらしい。このゲーマーの僕でも敵わない、恐ろしいゲームだった。
ただ、3人でやるゲームは楽しかったし、緊張もいつの間にかさっぱり消えていたので、ゲームの力はやっぱりすごいなと思った。
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