第十八話 プールデート
夏休み早々、ユニズニーランドジャパンに行き、もう夏休みを大満喫して、これだけでも満足できるくらいではあったが、僕は夏休みにどうしても、古賀さんと行きたい場所があった。
それは、プールだ!
僕はスポーツの中で卓球と水泳だけは自信がある。それ以外は壊滅的だけど...
プールに行けば、古賀さんに泳ぎをみせ、この夏のヒーローになれる。
それに夏といえばやはりプールで、恋人とプールに行くことに普通に憧れがある。
とにかく!プールに行きたかった!!
古賀さんにRISEを送ったところ、快い返事を得た。
僕は近くだがそこそこ大きい屋内市民プールへ古賀さんと行くことになった!
「渡くんから誘うなんて珍しいね」
「うん。どうしてもプールに行きたくて」
「プール好きなの?」
「まぁ、ちょっとは泳げるから好きかな」
「じゃ、ウチ、泳ぎ教わっていい?」
「ぜひぜひ」
本格的なプールのコースで、古賀さんに泳ぎを教えることになった。
僕達は着替え室で、別れ、そして数十分後、再会した。
「どう?この水着」
古賀さんの水着は、フリルビキニであり、可愛らしさの中に少しエロさもある超絶妙に最強な水着姿だった。
「めっちゃ似合ってる。感動です」
「ふっ、よろしい。じゃあ、行こっか」
と言って、僕達は、本格的な泳ぎができる、25メートルコースのあるプールへ移動した。
「えっと、まずはクロールの泳ぎ方だけど」
「こう?」
「おお、上手い上手い!」
「やった!」
古賀さんはやはり運動神経の良さからか、元々基礎は出来上がっている感じだった。
多分、コツを教えたら僕よりも早くなると思われる。
とはいえ、問題点もある。息継ぎをする時に、体が沈んでしまうことだ。
「まぁ、問題はバランスと息継ぎかなーやっぱり」
と常套句のように僕は宣った。
「ほうほう」
「息継ぎする時になるべく力抜いてみて、そしたらバランス良くなるから」
「なるほど!先生!」
「じゃあ、25メートル泳いでみようか」
「おっけい!」
「おおっ!」
古賀さんの呑み込みの速さに僕は思わず声を上げてしまう。
さっきまで息継ぎのところで、体が沈みかけていたのに、それを克服し、沈まずに、バランスよく、滑らかで綺麗なフォームの泳ぎができていた。
「プハァ!ど、どう?出来てた?」
「す、すごい!バッチリだよ!」
「やったー渡くんの教え方がうまいおかげだよ」
「いやいや、古賀さんの呑み込みが速いだけだよ!」
僕達は互いに褒めちぎりあって笑顔だった。
「さぁここからは遊ぶぞぉ!」
泳ぎをマスターした古賀さんは遊ぶ気マンマンだった。
本格的なコースから僕達は、ウォータースライダーに並ぶことにした。夏休みだからか結構、順番待ちだった。
「渡くん、泳ぎ上手いのは昔習ってたからなの?」
「うん、小学生の頃から」
「あーなるほどねぇ~他に習い事は?」
「特にしてないかな。父が卓球上手かったからよく一緒にやってたくらい」
「なるほど、卓球も上手いんだ」
「まあ、人並みには。古賀さんは?」
「ウチはね、女の子だけど強くならなきゃってことで、柔道とか空手とか子供の頃からやってて、小学校高学年くらいになると、そろばんとか書道とかピアノとか色々」
「す、すごいね色々やってる」
「色々やりすぎて、どれも齧る程度なんだけどね」
そう会話しているうちに、ウォータースライダーの順番が来た。
僕は、ウォータースライダー用の、二人用の浮き輪に足をかけて座った。その後、古賀さんも乗り込む。僕の肩口に古賀さんの白くて綺麗で長い足がきて、ドキッとした。僕が先頭で、古賀さんが後ろだった。
「うわああああ楽しぃぃぃぃぃぃ」
僕は叫ぶ。
「いぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」
そして古賀さんも叫んだ。
ぐるぐるとうねるウォータースライダーは、水飛沫を上げながら、心地よいスピードで落ちていき、気持ちよくて、最高に楽しかった。
フィニッシュは、ザバンと入水。それも爽快感抜群だった。
「渡くん、ジェットコースターは、ダメなのにウォータースライダーはいけるんだね」
「うん。ウォータースライダーとジェットコースターはなんか全く別物かな」
「次、流れプールいく?」
「いいね!」
流れるプールで、僕と古賀さんはビート板を持ちながら浮いていた。
「はー流されるのって気分いいね」
「そうだね~なんか心が落ち着くっていうか」
この流れるプールは途中でコースが二手に分かれる。野外に出るコースと屋内のコースだ。
そこにちょうど差し掛かった時、僕らは二手に別れてしまう。
「渡くーん!」
「古賀さん!」
ただでさえ人が多いので、僕達はその人混みの波に飲み込まれ、分断されてしまったのだ。
しかし、僕は流れるプールに逆らって、人の間をすり抜けながら、流される古賀さんの手を取った。
「ファイト!」
「いっぱーつ!」
何とか古賀さんも踏ん張って、こっちの流れに行けた。
僕の方のコースは、野外コースだった。
「ふぅ、危なかった」
「ごめんごめん、人混みに巻き込まれて流されちゃった。危うくはぐれるとこだったね」
「はぐれなくてよかったよ...はぁはぁ」
「渡くん、流石だね。流れるプールに逆らいながら、泳ぐ姿はかっこよかったよ」
ちょっと冗談ぽく言う古賀さんは可愛かった。
◇
流れるプールでゆらゆら浮いた後、僕達は波のプールに来ていた。
ザバンと波がうってはひき、、うってはひきを繰り返す。その波を見ていると、何か感慨に浸る気分になる。
「なんかエモいねーこの音と言い、この波といい、本当に海にいるみたい」
「バカンス気分を味わえるよね。温水だからこの波を受けても気持ちいいし」
「だねー」
僕達は、隣り合いながら、波をただ一身に受けていた。
僕はふと、彼女を見た。彼女の横顔は遠くを見つめていた。おそらく波を見つめているのだろう。その表情は、なんとも言い難い。昔を懐かしむような儚い目でありながら、抱き締めたくなるような愛おしい目をしていた。
改めて、隣に古賀 諒花という容姿端麗、才色兼備の最強ギャルが、僕の隣に、しかも彼女としていることが信じられない。
「どしたの?」
「い、いや?別に」
古賀さんは僕の視線に気づいたようでこっちを見てきて、目線があって恥ずかしかった。
付き合ってもう、3ヶ月も経つ。それなのに、僕はまだこんなにも未熟で、まだまだで、怯えていて、何も踏み出せていない。ただ、嫌われるのを恐れていた。
価値観が同じで、同じことを同じように見ていると思ってたけど、今の彼女の遠くを見すえた眼差しを見ていると、違う世界に生きている人のように感じてしまう。
そんな距離を僕は感じてしまう。
今彼女は、隣にいて、いつでも触れられる位置にいる。そして、僕には彼氏として触れる権利がある。それにも関わらず、僕は触れられず、そして自分勝手に距離を感じる。ネガティブ思考になる。
あの時前向きになると決めたんじゃなかったのか。
何を怖がることがあるんだ。
彼女は、古賀 諒花は、僕の彼女じゃないか。
僕は、心の中で自分自身を激励した。
ザバンと、大きな波がうった。
後ろ向きな思いが、前向きになり、前向きな思いは、決意になり、そして行動となる。
僕は、手と手がふれあいそうな位置にある彼女の手を取った。
思い切って、取った手を握る。
彼女は、何も言わずただ手を握り返してきた。
そして、僕たちはただただ波を見つめながら、波にうたれていた。
勇気を出して、良かったと思った。
◇
「渡くん!最後に水球やろう!」
古賀さんは唐突にそう言った。
「え?水泳!?いいけどやった事ないなー」
「よーし、じゃあ水球ゾーン行こう」
両サイドにゴールがある水球ゾーンは3つのコートに分かれていた。手前の人が少ないコートでやることにした。
「おりゃぁ!」
古賀さんが先ずボールを投げてくる。そのボールは球威マシマシ、球速増量、回転多めで、力ず良すぎて、ゴールに吸い込まれた。
「うわぁ!球つよ!さすが古賀さん!」
と僕が言った時、彼女は返答しなかった。いや、返答が出来なかったのである。
「ぶくぶくぶく」
「うわ!古賀さん!沈みかけてる!」
浮き方を知らなかったのか、古賀さんは沈みかけていた。
急いで泳いで救助した。セーフ。危なかった。水球ゾーンは基本的に足がつかないから、まずそれを注意すべきだった。
「ごめん、僕が注意すべきだった」
「いや、渡くんは悪くないよ...ウチのミス。油断した」
その後、僕は浮き方を実践した。
今思えば、助けた時に肌と肌が密着してたな。まぁその時は必死だったから気づかなかったけど、普通なら赤面モノのシーンだった。
浮き方を覚えた古賀さんに敵は無く、案の定、僕は水球でボコボコにされた。
「今日、渡くんばっかりいいとこ見せてたからウチも見せないとと思ってね!やったぜっ!」
結局、最後に美味しいところは全て持っていく古賀さんで、僕は最後はやっぱりカッコつけれなかった。でも、古賀さんがとても楽しそうでよかった。
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