第十七話 夏のテーマパーク


夏休みになった。夏休みの宿題は少しはあれど、とりあえず遊びたい!だって、今年の夏は初めて、恋人がいる夏なのだから!夏の風物詩を恋人と体験できるのだ!

例えば、プール、夏祭り、流しそうめん!まぁ流しそうめんは別に恋人じゃなくてもいいか。


とりあえず遊びたい!


と思った時に、ちょうど古賀さんからRISEが来た。


『抽選で、ユニズニーランドジャパンのペアチケット当たったから行かない?』


『ほ、本当に!?』


夏っぽくは無いけどいいかもしれない。


『今、夏のパレードやってるんだよ!』


いや、夏っぽい!!いい!!!行こう!


僕は速攻、行く!とRISEした。



「きたあああああああああユニズニーランドジャパン!!」


古賀さんは大声でそう言った。


「き、きたー」


「渡くん!手始めに、人気アトラクションランキングから順に乗ってこう!」


古賀さんの一言で、一番人気のアトラクション、人気映画を題材にしたものに乗った。


「うわぁー!これ迫力やば!」


「立体的だなぁこれ」


このアトラクションは、6人組くらいで車に乗って4Dアクションを体験しつつ、手に持ったレーザー銃で、映像の的を撃っていくアトラクションだ。


「わー熱い!きゃー冷たい!ぎゃー落ちるー!」


4Dということもあって、匂いや寒さ暑さなどいろいろ体験出来る仕組みになっており、その様な仕様に毎回古賀さんは大きなリアクションを取っていた。


「は~楽しかったね!」


古賀さんは大満足そうだった


「結構迫力あったねよね~面白かった」


その後も人気順にアトラクションに乗っていく中、夏パレードの時間になりパレードを見ることになった。


「よし、準備バンタン!」


古賀さんは、限定Tシャツと水鉄砲を片手にそう言った。


夏パレードとは、ユニズニーランドジャパンのキャストさんも水鉄砲を持ち、お客さんと水を掛け合うなんとも夏らしいイベントだ。


「うわっ冷た!」


早速、キャストさんに僕は水をかけられる。


「渡くん!仕返しだ行けー!」


「よ、よーし!」


僕も水鉄砲で、キャストさんに水をかけた。


こうしてるとなんだか、子供の頃を思い出す。水鉄砲なんて使うのいつぶりだろう。懐かしい気持ちになって子供の頃に戻った気分を味わえた。


古賀さんを見ると、限定Tシャツが、濡れて、模様が浮きでていた。濡れると絵柄が変わる仕組みになっている限定のTシャツである。


「きゃー冷たっ!」


古賀さんが水をかけられて、笑顔でそう叫ぶ。


その姿に少しドキッとする。


髪が濡れ、額から水が滴り落ちる彼女は、誰が見てもときめくような姿だった。なんと言っても、子供のような全力の笑顔が、可愛かったし、チラリと見える腰や少し濡れた首筋は色っぽさを感じた。


「なーに見てるの?楽しんでる?」


「うわぁっ!」


「ハハッ!その反応面白っ!」


「た、楽しんでるよ!」


僕は見惚れてたなんて、恥ずかしくて言えないのでそう答えた。



「え~っと、次は、うげっ、お化け屋敷アトラクション~!?」


次のランキングには、お化け屋敷アトラクション、〈ホラーペンション〉が書いてあった。


「ど、どうする?やめる?」


「うーーーん、、まぁ、渡くんが一緒だし!いいや!行こう!」

文化祭でのお化け屋敷であの対応だったからだろうか。古賀さんはそう言ってくれた。


この〈ホラーペンション〉は、自分の足で歩きながら、ペンション内を4人一組で進んでいくアトラクションであり、僕達の他に、もう一組のペアルックカップルと一緒に行くことになった。ペアルックのカップルが先頭で、僕達が着いていく形となった。


「潤ちゃん怖いよぉ~...助けてぇ~ん」


「景ちゃん大丈夫だよぉ~僕がついてるからねぇ」


という前の二人の会話からかなりの熱々カップルということが伺える。


「かなりアツアツだねぇ...前の二人!」


と前のカップルに聞こえないように古賀さんが耳元で呟いた。


「まぁ、、ペアルックしてるくらいだしね。吊り橋効果覿面だろうね、、、」


どんどんと進んでいくと、色々な仕掛けからお化けのキャストさんが驚かしに来て、流石に文化祭の生徒達とは演技のレベルが違くて、僕でも少しビビるくらいだった。そんな時に前のカップルはどちらとも悲鳴を上げていたが、僕は上げず、古賀さんは、結構大きな悲鳴をあげて僕の腕にくっつく意外な最強に可愛い一面を見せた。


「こ、怖い、、よく、驚かないね...」


ぐっと、僕の腕にしがみついて縮こまりながら、そういう古賀さん。いつもの頼りがいのある感じとギャップがあって、小さくか弱い守ってあげたくなるような存在になっているような感じだ。それが本当に可愛い。


「ま、まぁキャストだし、、あれ?なんか足音しない?」


「え?」


振り返ると、キャストのお化けが僕たちを走って追いかけてきた。


それに気づいた前のペアルックカップルの両者が大声を上げる。


「ぎゃああああああああああ」


ペアルックカップルの彼氏の方は、彼女を置いて、一目散に逃げていった。


「きゃあああああ、ぎゃふっ!」


彼女の方は、彼氏に置いてかれまいと続こうとしたが躓いて倒れてしまった。


そして、僕らはと言うと


「ぎゃああああああああ」


「うわあああああああああ」


古賀さんに僕は、手を引っ張られ、振り回されながら、一緒に走っていた。


普通引っ張る役が僕だよな、、、と思いつつ、初めて古賀さんと手を繋いだ事が嬉しかった。古賀さんの手は冷たいけど、少し汗ばんでいて仄かに温もりがある柔らかい手だった。


「はぁ、、はぁ、、酷い目にあった」


「ふっ、、ふぅ、でも古賀さんに置いてかれなくてよかった...(あの彼女みたいに)」


「そんな、渡くんを置いてくわけないじゃん。ウチの彼氏なんだから絶対!」


と彼女は真剣な眼差しで僕を見つめてそう言った。


やっぱり、男女立場が逆なんだよなぁ、、と思いつつも、僕を想うその言葉に僕の心はわし掴みにされて暖かくなった。



「えっとぉ最後のランキングは、ジェットコースターか!」


「げっ」


「何その反応、渡くん、もしかしてジェットコースター苦手なの?」


「う、うん、、大の苦手」


「えぇー!?」


僕はお化け屋敷系の恐怖はいけるのだが、高いところから落ちて、心臓を持ってかれるような感覚の恐怖は大の苦手だった。


「そんな、もったいなあい。爽快感あっておもろいのになぁ?」


と、少し煽るかのように可愛く言う古賀さん。


僕は、あの時のことを思い出した。古賀さんみたいに前向きになりたい。あの時、僕はそう思ったじゃないか。


「僕、挑戦してみるよ!ジェットコースター!」


その珍しく、語気の強い言葉に、古賀さんは、少し目を見開いた。


「よし!渡くん!その意気だ!じゃあ行こう!!!」


そして、ジェットコースターに並び、順番が来た。


僕達はジェットコースターに乗り込む。


安全バーが下ろされ、ジェットコースターがゆっくりと動き出した。


ジェットコースターが上昇していくのに比例して僕の鼓動が早くなっていく。


そして唐突に古賀さんが呟いた。


「あ、ちなみに言っとくけど、日本の中でここのジェットコースターが一番怖いって噂がある」


「ちょ、ちょっと待って、古賀さん!そ、それ今言われたら、心の準備が、が」


「だから楽しもーっ」


「ぎゃああああああああああああああ」


多分、生きてるなかで僕が一番大声を上げた瞬間だった。



「今日は楽しかったね」


ユニズニーランドジャパンで遊び尽くし、帰り際に、古賀さんは笑顔でそう言った。


「うん!楽しかった!」


僕もそれに頷いた。


最高に楽しかったし、苦手なジェットコースターにも挑戦できた。古賀さんと一緒だから出来たことだ。夏らしいフェスもあって、最高の夏休み気分も味わえた一日だった。

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