第二話 古賀さんは、最強ギャルで最強可愛い。
ある日の下校時、恐らく金髪ギャルと出会ってから数週間後、玩具屋に立ち寄ると、彼女はいた。
「あ!やっぱり来た。ここなら会えると思ってね」
と言って、金髪ギャルは、座椅子に佇んでいた。
まるで僕に逢いに来たかのような言い草に僕はドキッとした。いやいや、僕みたいな陰キャにわざわざ会いに来るわけない。きっと、何か用があるのだと心の中で言い聞かせる。
「ほらこれ!プラモ!作ってみたんだよね~」
と言って彼女は、僕があげたプレミア品の某ロボットアニメのプラモデルを完成させていた。
「お、、お~、、」
「あれ?反応微妙?作ってみて欲しくなかったんじゃ?」
「いや、全然!」
プレミア品で、最終的に売るために買ったという金に汚い目的を言える訳がなかった。
「てか、そういえば、君に以前何があったか説明してなかったよね」
「あ、うん」
「ウチ、ここらへんの女子校通ってるんだけど、知ってる?」
えーっと、確か、
「あー、知ってる。というか僕の高校ほんと隣」
「あー君、南高校?」
「う、うんそうだけど、、」
「へー頭いいんだ!あーそれで、話の続きなんだけど、ウチ、こんな見た目だけどあの女子高の生徒会長やってんの」
ギャルが生徒会長とは、珍しいなと思った。一時期流行ったギャルが東大を目指すようなもんだろうか。
「それでさ、色んな生徒の問題とかを解決して、例えばウチの高校顔可愛い生徒とか多いからさ、悪い虫とかも寄ってくるわけ。
「実力行使?」
「うん。言って聞く生徒には、説教して、聞かない生徒には、空手と柔道を
「ひぃ」
「まあ冗談だけどね。とにかくウチは生徒会長として全校生徒の味方だから役目を果たしてるんだ」
「でも確かにそれはかっこよくて人気出るかも...」
「ウチのことが好きな生徒がさ、生徒会長様バンザーイみたいな?ファンクラブみたいな感じになってるんだよね。一部の生徒達と少し目が合うだけでなんか騒がれたり、ラブレターなんか貰ったりするようになって、、」
ファンを通り越して、一種の信者みたいになってるな、と思った。
「じゃあ、あの時、隠れていたのは、、」
「うん。彼女たちもウチの熱狂的ファンで、見つかると色々と面倒臭いから隠れてたの」
「ストーカーみたいなものか...」
「そう!ストーカーみたいなもん!だから困ってるんだよね~」
つまりは、生徒会長として女子校の生徒を他校のストーカーから守るために動いたけど、そのせいで、女子校の生徒たちが自分のストーカーになったと。なんかミイラ取りがミイラになったみたいだ。
「まだ、女の子だから許せるんだけどさー下校中ずっと、後付けられるのは流石に困るかなぁって」
「それでここを隠れ場にしてるってこと?」
「そうそう!でももう時期バレそうなんだけどね」
「だからさ~...」
僕はこの流れにドキッとした。
こ、これは、僕の好きな漫画やアニメでよく見た流れだ!
『アタシに言い寄ってくる男が
っていう展開だああああああああああああ!
「...どうしよっかなって!」
あれ?
「まぁ見つかったらまた新しい隠れる場所探すしかないよなぁ~」
あれれ?おかしいな。やはりアニメと現実は違うということか、、、
「話聞いてくれてありがと!」
「う、うん。全然...」
「そういえば、、君何年生?南高なんでしょ?名前も聞いてなかったよね」
「えっと、僕は二年で、名前は
「二年生!同じじゃん!ウチは、
まさかの提案だった。陰キャの僕からしたら連絡先交換という大きな壁をギャルの彼女は、軽い感覚で飛び越える。
「え!?いいの?」
つい、ウキウキでそう答えてしまう。そんな自分がちょっとキモイ。
「うん。いいよ?君がもし、女の子にストーカーされた時はウチを呼んで?すぐ助けに行くからさ!」
ギャルの古賀さんは、したり顔で僕の目を覗き込んでそう冗談を言った。その様は、まさに最強だった。
最強は最強でも、最強に怖いという噂は間違いで、彼女は、古賀 諒花というギャルJKは、最強に頼もしいという印象だ。恐らくだが、彼女怖いというあらぬ噂が広まったのは、その頼もしさを、周りが持ち上げ過ぎたのが原因だろうなと思った。
「中森くんのRISEのアイコンおもしろかわいいね」
「あ、ありがとう」
唐突に褒められて、僕は身体が熱くなった。家族以外の他人にRISEのアイコン、しかも女子に見られることは無かったし、そもそも何のアイコンにしてたかも忘れていて、今確認したら犬のブサカワ変顔画像だった。母親が犬好きだから、そのアイコンにしろって勧めてきたんだっけか。爆死必須のアニメアイコンとかじゃなくてよかった。ありがとう母さん。
「あーそうそう、中森くん、これあげる」
「え?」
彼女が手に持っているビニール袋から取り出したのは、横長の赤い包装紙に入った一枚10円の魚のすり身を加工してみりんなどで味付けをした有名駄菓子だった。
「これ、プラモのお礼!ウチ、マジで大好きなんだよねこの駄菓子。美味しいから食べてみ?」
「あ、ありがとう」
その駄菓子を何枚も渡された。まあ確かにこの駄菓子は子供の頃から知ってるし、甘辛くて美味しい。プラモのお礼としては複雑だけど。
「ここの店いいよね。駄菓子も売ってて。ウチ最初は駄菓子目当てで、この店入ったんだけど、駄菓子食べながら色んな玩具見てたら興味湧いてきちゃってさー」
「あー、、」
なるほど。道理でプラモを渡した時、良い反応を示してたのか。
「買う勇気はなかったから尚更、君に貰ってラッキーだったよ!意外とプラモ作るの楽しかったし」
「器用なの?」
「いや、不器用。でも、試行錯誤する過程?が好きなんだよねーウチ。こう見えても、マメなんだよ?」
い、意外すぎる。最強のエピソードを聞いたせいか、武闘派にしか見えない。
「あ、こら~今、意外すぎるとか思っただろ~?」
と、古賀さんは口を
「い、いや」
口では否定しながらも、僕の顔は引き
「もう、君、最初会った時はクールな印象受けたけど、意外と表情豊かだから思考バレバレだぞ~?」
動揺して俯く僕の顔を、膝を曲げて顔を近づけ、覗き込んでくる。
「う、うう」
古賀さんの、顔をこんな間近に見るのは初めてだったが、ギャルにしては意外と薄化粧だった。しかし、逆に言うと、化粧をしなくても、つけまつ毛のようにまつ毛は長く、目鼻立ちは際立っていることの証明だった。そんな強い顔面に僕はたじろいだ。
「あっ、もうこんな時間!じゃまた!たまたま会えたら、話そうねー!」
嵐のような彼女は、僕の心という畑を
彼女は、ただ単に、最強に頼もしいだけじゃない。なんというか、凄く生意気な感じなのに、男心の急所をくすぐり、そして、それがなんとも最強に、可愛かった。
そして後から気づいたことだが、この時の僕は女子とも、しかも他校のギャルと自然と話せていた。この数年間ずっと女子とまともに話せなかった僕が、だ。彼女は、頼りがいや可愛さだけでなく、コミュニケーション能力も最強なのだろう。実際、話しやすさが桁違いだった。オーラというかカリスマ性というかそういうのもあるのかもしれないなと僕は思った。
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