4、正射必中? え…でも先輩、意味が分かりませんけど?

『正射必中』 

 それは正しい弓の引き方をすれば、狙った先に的があり、自然と的を射抜く事が出来る。


 言葉の意味は、砕くとこんな感じでしょうかね。

 周りにこんな事をいう人、いますか?

 私は思います、正しいは一つじゃない、と。

 これだと「正しい=一個しかないぜ!」といっているように解釈しちゃいがちなんですよ。

 あ、もしかして私だけ?


「おいおい、何言ってんだ?」

「本当に弓道家なのか?」

「え、そうなの?」


 まぁね、数多くの弓道家から苦言が飛び交うような事を書く理由ですがね、ちゃんとありますよ。

 では、仮に正しいが一つとした場合、逆に問いますよ。


 正射必中って、いったい何メートル先にある的に対して言ってるの?

 近的競技の28メートルですか?

 遠的競技の60メートルですか?


 もしそれぞれの飛距離に対し、弓の引き方が変わると定義するならば、〝正しい〟は統一されてないんじゃない?

 というか、正しいってどんな動作ですの?


 あ、実際のところ、現代の弓道において、近的と遠的はちょっと引き方が違うんですね。なぜなら遠的は会のあとに「腰をきるから」、要はカタパルトみたいに角度をつける動作のこと。

 だから、私はとても曖昧な言葉だと思っています。


 もし、読んで字のごとく近的競技の引き方で、遠的競技の距離にある的を射抜こうと思うならば、戦国時代に使われていた「強弓」じゃないと無理だと思う、理屈的に。

 *強弓、めっちゃ反発力のある和弓のこと。


 要するに。

『正射必中』ってのは一つの動作の事を言っているのではない。

 という事が言いたいんですね、はい。 

 それにね、仮にパーフェクトな弓の引き方があるなら、多くの弓道部員達は頭を悩まし日々を稽古しないでしょう。

 明確な答えがないからこそ、悩むわけですよ。

 私はそう考えてます。とか言って、昔は正射必中ってどんな射なのだろうか?

 と考えていた時期が私にもあったような気がします。たぶん。

 どちらにせよ、もう過去形ですけど。


 問→正射必中という言葉に惑わされます。

 解→自分が納得する射なら、それでいいと変換しましょうね。


 ほい。


 なんでかね、この言葉をポエムのように言いちらしていた先輩がいた事を思い出しましてね。もしかしたら悩んでいる人がいるかも、って事で書こうと思ったんですね。


 そもそも、一般的にこの言葉を使う場面としては、的中のためにも、守る事は守って、弓を引こうぜって事でよく登場していたかなと。

 ……違うかな?

 まぁ、それこそ学校によっては違う考え方もあるでしょうし、高校時代は他校の弓道家と話しをする中で、あーでもない、こーでもないと言ってましたわ。


 具体的な弓の引き方に関しては未知なる部分が多く、人によっては解釈も違う。極端に言えば精神論に近いものを感じる中で、正しくないから中たらない、といった解釈は、ちょっと違いまっせって事です。


 弓道は物理学だと考える私としては、これをすれば的に中る方法が理論上あるのだろうと考えていますが、矢が飛ぶ仮定では様々な要因が複合したひとつの結果である事には違いないので、これが〝正しい〟なんて引き方はないと思うんですよね。

 そうそう、「的中マシーン」といった言葉を聞いた事、思ったことある人は、なんとなーく私の言っている事が伝わるかな?

 あの人の射は奇抜だけど、絶対外さないよね、みたいな?


 それこそ、骨格や体格の違いを比較すれば、人によって弓の引き方は様々であると思いますし、使う道具の状態によっても、個体値を理由に変化するものだと思うんですよ。特にゆがけにある溝の形ですね、これは人により弦枕の擦り減り方が違いますからね。

 屁理屈になるかもしれませんが、道具の個体値ってのはそういうモノだと思ってます。

 

 いかに上手い人でも、道具が変わればちょっと違うなって思いますからね。

 それでも中てる人は中てますが。


 ただし、的中に繋がる動作として模範解答はありますよ。それはいくつか違うエッセイにも記してますから、興味があればお読み頂ければ私の考え方が分かると思います。


 まぁね、超上手い人なんかが、これが正しいぜ! とか言っているのを聞くと、説得力があるようにも思えますが、男子と女子とでは筋力量が違う中で、それは無理っしょ、と思うような事もしばしば。

 あ、経験上どす。


 何か一つを基準に考えるのではなく、人それぞれの良いところや、出来ない事を理解したうえで、ベストは何かを考えれば、射形も十人十色とな。


【まとめ】

 弓を引くのは自分、すなわち1動作1動作の良し悪しを研究し、中てる技術に近づけていく稽古をする、それを積み重ねた結果、的を射抜く技術が身につく、それが自分だけの「射」になる。

 

 ということですね。

「つまり結果論じゃね?」とも言われそうですが、結果だけを考えれば弓道は物理学なので、良い技術は一つじゃないって事。

 我流を貫けば良いのですよ。

 自分が納得することを正しいと思えば、それが自信となりますからね。

 それこそ、的中を度外視で見た目のみを追求する、それが正しいのだ! と思うのなら、それでいいと思います。


 だって、そっちのが楽しく弓を引けると思えませんか?


 蛇足。

 *安全対策だけ徹底してください。


 もしね、正射必中を試したいなら、真っ暗にして的を狙い、矢を射ってみてください。

 それでバスバス的を射抜けれるなら、それが正射必中ってやつですわ!

 

 

 

 

 

 




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