7、高校弓道と大学弓道は全然違うと思う根拠(試合と運営システム編)

 弓道の経験者にもよくある誤解として、高校でも大学でも、試合の雰囲気は同じだと思っている方が多いと思うんですよ。

 あ、私は大学弓道をやるまで、違いはまったく知りませんでした。だけど大学でも弓道やってて良かったな〜と思ってます。理由は楽しかったから。


 で、高校で弓道を経験したあと、大学弓道を経験した子からよく聞いていた言葉です。

 高校弓道を経験して、大学弓道を経験すると「高校弓道のほうが良かった!」とぼやく人が多いんですよね。


 部活動見学とかで、「私は上手いけど、この雰囲気なら入部しない」と決めゼリフを放ち、入部しなかった子もいました。一言余計だと思うかもしれませんが、わりとそう思う人は多いんですよ。

 なぜなら高校弓道の雰囲気しか知らないと、大学弓道は騒がしいとか邪道だとか思ってしまうもの。だけどそれは、その人が持つ弓道に対する理念や理想がそう思わせるだけ。


 それぞれの弓道環境を経験した事もないのに毛嫌いするのは、食わず嫌いだな、と思うのが私ですが。だからこそ大学でも弓道やる子ってのは、変人が多いのかもしれません(笑)


 はい。

 

 高校弓道を経験し、大学弓道を経験した人なら、部活の雰囲気、その違いを感じる事があるんですね。

 弓道のスポーツ推薦で大学に行こうとする人も含め、その違いを知っておかないと、こんなはずでは……と、人によっては思うかもしれません。

 いや、これはマジ。


「え、そんなに違うんですか?」

「私は大学でも弓道やろうと思ってるんですけど?」

 

 ふむふむ。

 これはあくまで私の個人的な感想になりますが、一言でいえば大学弓道のほうが「的に中てろや!」って圧力が大きいんですよね、トップ争いになると特に。

 トップを争ってないところでも、そんな雰囲気になる場面もあります。

 ちなみに、それはなぜか?


 極端に例えるならば。

◯高校弓道は武道を極めるための道。

◯大学弓道は的中を極めるための道。


 ま、ちょ〜偏見ですけど、だいたいそんな感じ。

 なので、ここでは高校弓道と大学弓道の違いを、アレコレ記そうと思います。もちろん個人的な感想で。

 

 問→高校と大学で、弓道部の何が違うんですか?

 解→全国の頂点を決める大会を主催する、運営組織が違う。


 確かに28メートル先の的に矢を射る事は同じですが、試合形式もわりと違うし、運営する組織(親分)も違います。

「……え?」

 ただ、私も完全には理解してないので(複雑だから)分かる範囲でその違いをつづります。なので細かい部分は無視しますね。


───この回では、高校と大学の弓道部において、試合に関する違いを知ることをテーマにします───


 それではいってみましょう。

 大きく分けて、その違いは2つ。

 まずは一つ目。


□1、高校弓道は公益財団法人、大学弓道では大学生により組織された連盟が、大会の主催者です。


 まぁ要するにですよ。

◯高校弓道→各学校の先生(主に弓道部の顧問)も加盟している組織が、主に試合を運営していく。

◯大学弓道→顧問の先生が部活に関わらないのが基本のため、大学生が集って結成された組織により試合を運営していく。


 細かい部分は省いて、まぁそんな感じだと思ってください。これは高校と大学が成り立つ仕組み、その違いによるもの、これもあります。


 そもそも高校弓道の大会運営に関わる組織は、弓道としての伝統がたくさん詰まったルールの中で大会に出場、そこから競技を通じ、武道としての完成度を競い合います。

 完成度とは、礼儀、品位、技術など。

 砕いて言うと、欲張りなんですよ。


 名誉ある大きな試合としては「弓道インターハイ」ここで優勝すると、「この学校が凄い!」の称号が貰えます。


 弓道の歴史を掘り下げれば、その目的は精神鍛錬ですから、競技中に私語などは基本しません。

 なので『静かな環境の中で、的を射抜くイメージです』


 反面。


 大学弓道での運営に関わる組織は、各大学から役員を集い結成された「学生弓道連盟」の人達がやります(通称学連がくれん)。なので学生が決めたルールの中で、大きな試合はリーグ戦と呼ばれる試合形式「4人✕2チーム」で競うのがメインとなります。

 *女子は8人ではなく、なんでか4人×1チーム。

 *このリーグ戦は、各地方別で分けられています。


 このリーグには強さを表すブロックみたいなものがあり、1部リーグ、2部、3部〜、とあるんですね。

 それぞれのブロックで、1位と最下位を決めたのち、最後に「リーグ入れ替え戦」ってのをやります。


──例を出すと。

「2部リーグの1位」VS「1部リーグの最下位」が戦うとします。

 ①2部の1位が勝てば、その学校は1部リーグに昇格。1部だった大学は2部に降格。

 ②1部が勝つと、現状維持。つまり防衛戦が成功となり降格も昇格もしません。


 さらに。

 各地方の1部リーグの優勝校は、「王座決定戦」と呼ばれる試合の出場権を獲得、すなわちこれが大学弓道での「インターハイ」のような試合です。

 伊勢にある神宮弓道場でやりますから、出場権を獲得するだけでも名誉かなって思いますね。だから「伊勢大会」と呼ばれることもあります。

 この王座決定戦、リーグのブロックは関係なく、各地方別単位で的中数の上位者から選ばれる枠もあります。

 この試合の個人出場を目標に、ひたすら稽古する人もいましたね。


 ですが、この王座決定戦に出場するためのハードルは凄まじく高いので、化け物クラスの射手になるか、1部リーグで奮闘する大学に入る必要があります。

 この試合では二十射皆中なんて当たり前ですし、中てる本数よりも外す本数のほうが少ないですからね。

  

 この王座決定戦で優勝を狙う、超絶強豪校たる大学ならば、必然と「中てろや!」ってなるんですよ。だからね、スポーツ推薦で大学に行こうと考えている人がいましたら、よ〜く考えてくださいね。


 つまるところ、リーグ戦では長時間(ほぼ1日)かけて戦うし、「相手チームよりも的中率を叩き出す必要がある」といった環境で弓を引く事になりますから、競技中に私語をしても、騒いでいても的を射抜く事が求められる。

 負けたくないよねって意味から、そんな感じになるんですよ。

 これが大学弓道の中でも特徴的な雰囲気の1つで、賛否両論が分かれる1つの試合形式です。


 なので『的を射抜けるならば、なんでも良いイメージ』

(のちに説明しますが、リーグ戦は一人20射です)


 こうみると実力社会みたいな感じですが、これは純粋に勝つことを求め、楽しんでいるからこそ、とも言えます。

 もちろん高校弓道の雰囲気を重んじる大学もありますから、大学でも弓道を考えている、もしくは大学から弓道を始めようとする場合、大学単位で雰囲気が変わりますよって事ですね。


 ちなみに弓道のスポーツ推薦で、強豪たる大学に行こうとする方。その進路が、楽しく弓道をやる事に繋がる事を祈っております。

 むしろ大学によって、勝つことよりも好きなように弓道をやれば良いじゃん、みたいな弓道部もありますからね。私が入部した大学の弓道部はこんな感じの雰囲気でした。

 行射中も、色々と騒がしい大学でしたけどね。

 

 まぁでも、だからこそ流派なんて関係ない。自分が思う自由な弓を引ける環境だったからこそ、私は楽しかったんですわ!


 ほい。

 次に2つ目です。


□2、大学弓道では、高校弓道と比べて、試合の形式が豊富です。

「じゃあ具体的にどう違うの?」って事で。


 私が思う主な公式戦として、それぞれ高校弓道、大学弓道で行う試合のみを記していきますね。

 非公式戦みたいな試合もいれると、めっちゃ種類があるので。

 ただし公式戦といえども、地方での弓道人口によって試合形式が違うので、あくまで私の経験した試合を元にします。


◯高校弓道


 1、3人チーム(一般的な試合)

 2、5人チーム(インターハイ戦)


◯大学弓道


 1、5人チーム(忘れたけど、新人戦みたいなやつ)

 2、6人チーム(地方別の大きい試合)

 3、4人✕2チーム=8人チーム(男子リーグ戦)

   4人✕1チーム=4人チーム(女子リーグ戦)

 *リーグの部によっては、女子の場合3人チームとしてリーグ戦を行います。


 チームの人数は違いますが、基本的に一立で4本の矢を持ち、前から順に的を射る試合形式に変わりはないです。

 大学でメインの試合となるリーグ戦では一人20射、そこは特徴的なのですが、それを除くと高校も大学も似たような試合の流れなんですね。


→高校も大学も共通する、一般的な形式とは。

 ①基本的に1人4本の矢を持ち、チームで単位で合計的中数の上位から予選を突破。

 ②そこから絞った上位高による総当たり戦やトーナメント戦を行い、優勝を決める。


 このことから、大学弓道のリーグ戦において、男子の計は合計160射。女子の部では80射を基本とするんですね。しかも同じ◯部リーグ内の学校と、総当たり戦で。

 はい、だから試合シーズンはちょう疲れます。


 *


 くどいようですが、地区別の弓道人口によっては試合形式が異なる場合もあります。

 それは高校弓道であっても、大学弓道であっても、実際に大会を運営する組織の仕組み、その違いによって差があります。


 たとえば高校弓道のインターハイでは沖縄県の選手も普通にいます。

 理由はまぁ、主催者が公益財団法人だし、交通費高いから行きたくないですってのは認められてないんでしょうね。

 でも大学弓道では、「交通費高いです……」みたいな学生事情を大きく反映した仕組みになっていたりします。


 そもそも、大学弓道に関しては、「全日本学生弓道連盟」という親分を筆頭に、それぞれの地方別にある「〇〇学生弓道連盟」が連携することで、大学弓道の大会は機能しているんですね。

 だから地方別単位に支部があり、それぞれが管理、対応しているんだと私は考えています。


 ちなみに加盟校として沖縄県にある大学も存在していましたが、その大会運営の実態に関して私はよく知りません(沖縄県の方、ごめんなさい) 

 なので、逆に学生弓道連盟に加盟していない弓道部(大学)に関しては、リーグ戦とかもありません。

 なんか聞いた話だと、「え、大学弓道って試合ないの?」と誤解している人もいるようですが、そもそも高校弓道も大学弓道も、何かしらに加盟したからこそ、その連盟が主催する試合に出場出来るわけですよ。


 それらを除くと、弓道の試合には「一般の部」、みたいなやつも存在していますから、何の試合かワケワカランってなりやすいんですよね。

 かくいう私も、各県が主催する試合に関してはよくわかっていません!

 理由はありすぎるから。


 そんなこんなで。

 違いをまとめます。


【高校弓道と大学弓道の大きな違いは、頂点を決める大会の運営組織が違う。そのため競技ルールも違うし、弓道を介して求められる、武道としての本質も違う】


 ですが、高校弓道にも大学弓道にも、その時にしか味わえない楽しさがありますからね。

 なので、「どっちがいいの?」と、聞かれたとしても、それは人それぞれなんですよ。環境がどうであれ、弓道が楽しいことには変わりませんからね。

 まぁ、何かしらの参考になればな~と思います。

 

【おまけ】

 もし、大学の弓道部で学生弓道連盟の役員になるかどうか悩んでいる人がいましたら、役員になることをオススメしますよ。ええ、それはもう。

 学連とは、大学弓道でしか味わえない経験と、ドラマが詰まっているんですわ!

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