4.没落令嬢、仮妃となる
第四王子に与えられている瑠璃の宮殿、その一室で、エルザはここ数日間で集めた第四王子の情報を黙々と書き留めていた。
第四王子・シャルフ(十八歳)。呼び名のとおり、第三王子に次いで四番目に生まれた陛下の息子である。母親は第二妃・リリー・グラナトであり、グラナト辺境伯の一人娘。グラナト辺境伯はシュタイン王国の名門貴族であり、その血筋は申し分ない。
ただし、シャルフ自身に功績はなし。王子となれば、時に戦争に身を投じることもあるが、第一王子、第五王子が武勲を立てているのに対し、シャルフにその記録はない。
また、幼少期には家庭教師から
ということで、情報を総合すると、シャルフは血筋・側近に非常に恵まれているものの、本人は全く何の才にも恵まれなかったとんだぼんくらである。
……なんて結論まで書くわけにはいかず、エルザは客観的な情報だけをじろじろと眺めた。第二王子は血筋に難あり、第三王子は身体に難あり、となれば第四王子が次の王に相応しかったはずだというのに。陛下も第四王子がここまでの無能だと分かってさぞがっかりしたことだろう。
「本当に……まさしく天は二物を与えずといわんばかりね」
げんなりと呟きながら羊皮紙を睨みつけているエルザの隣で、クローネは頬に手を添えたまま首を傾げた。
羊皮紙の情報はエルザが自身で集めてきたものだ。契約とはいえ、第四王子妃でありながら草木をかきわけ情報を得る姿は、クローネに言わせれば正直なところみすぼらしいというか庶民的というか。
「エルザ様、そこまでなされなくても、シャルフ殿下に直接おうかがいすればいいのではないですか?」
だがエルザはクローネの指摘には耳を貸さず、それどころかキッと
「何言ってるの、クローネ。殿下に頼ったってなーんの有益な情報も出てこないわ。第四王子のぼんくらっぷりが噂どおりどころか噂より酷いのはこの数日でよく分かったでしょ!」
そう、シャルフは間違いなく噂にたがわぬぼんくらだった。
まず昼まで起きてこない。他の王子達は朝から家庭教師のもとで政治だの歴史だのの王としての資質を磨くのに忙しいというのに、シャルフは昼までぐーすか寝ている。
次に、昼まで寝ている理由が夜中の賭博にある。エルザがクビになった酒場に出入りしていること自体身分不相応に過ぎておかしいとは思っていたが、その酒場に来るような平民と夜な夜な賭博に興じているというのである。なんなら衛兵ともそうして遊んでいるらしい。そして平民や門番のように王族の顔を見たことのない者達からは「どっかの商家のボンボン」と認識されていると(ちゃっかり髪は隠して出掛けている)。王子にあるまじき品の無さだ。
そして、なんと婚約者(本物)は小国の村に住んでいる平民も平民の娘らしい。王子たるもの、それなりの貴族の令嬢を妃にするべきではないか──とはエルザは思ってはいないが、馴れ初めにはずっこけた。外遊中に一目惚れした遊女だそうだ。つまりシャルフがただの遊び人であるという話だ。
ただ同時に、エルザが身代わりに選ばれた理由には納得がいった。本物の婚約者がそんな身分であるのは周知の事実なので、下手に貴族令嬢然とした礼儀作法を身に着けていると怪しく、むしろエルザ程度が適任だったらしい。
エルザは行儀悪く頬杖をついて「大体」とシャルフの愚痴を続ける。
「あの殿下、昼間にふらっと気まぐれに来ては
「あら、私は羨ましいですけれど」
「なにがどう!」
「だってシャルフ殿下、今まで出会った中で間違いなく一番お顔の良い方ですよ?」
「……で?」
とんでもない温度差があったが、クローネはめげずに「で、じゃありません!」と食らいつく。
「あんなにお顔の良い男性に迫られるなんて、今までの暮らしでは到底有り得なかったことですよ! ぼんくらといえどあの美貌! そして王子という身分! 最高の相手じゃありませんか!」
「クローネ、私が契約妃だってことを忘れてない?」
「忘れてはおりません。ただこの時を楽しんでも天罰が下ることはないでしょうというお話です」
「……天罰ね」
エルザはなんともいえない表情で肩を竦めた。
「そもそも、私がシャルフ殿下の話に乗っかったのはお姉様の汚名を雪ぐためよ。シャルフ殿下に
「どうせシャルフ殿下の相手をしているときは何もできないんですから。その間はお楽しみになればいいのにってお話してるんですよ」
「そういう器用な真似ができたらもっといいところで働いてたわよ」
ふんっ、と行儀悪く鼻をならしたエルザだった、が。
「こんにちは、エルザ」
突然聞こえた声に、ギョッとしてペンを落としそうになった。クローネは素早く部屋の隅に下がり、エルザは慌ててペンを片付けながら「あら殿下」と笑みも一緒に取り繕う。
「お目覚めですか?」
「ああ、昨晩も遅かったから。勝ち過ぎると帰してもらえなくてよくないね」
陽光に輝く金髪には寝癖、悩まし気な顔はただの寝不足。それなのに無駄に綺麗な顔には殺意を抱くところだった。
「おやめになってはいかがですか? 外は寒いでしょうし、夜更かしはお体に障りますよ」
言外に、いやわりと直球で「賭博はやめて寝ろ」と告げる主人に、クローネは白い目を向けた。しかし、ぼんくらと名高いシャルフは優しい笑みだけを返す。
「私の体を心配してくれているんだね。優しい妻がいて私は幸せだよ」
イラッ……とエルザの額に青筋が浮かんだ。ぼんくらなのは勝手だが、嫌味が通じないのは腹立たしいものがある。とはいえ、こういうぼんくらなので不敬を許されているわけだが。
「どうしたんだ、エルザ。顔色が優れないね」
美しい碧眼は憂いを含み、(契約上の)愛する妃の頬に手を添えてそっと顔を覗き込む。ぼんくらぼんくらと苛立ちながらも、男に免疫のないエルザはそれだけで顔を真っ赤にしながらゾゾゾッと背筋を震わせた。ぼんくら王子のくせに顔だけはやたらめったら良すぎるのだ。
「で、殿下……」
「殿下だなんてよそよそしい。夫になるのだから、シャルフと呼んでくれて構わないと昨日話しただろう?」
「ではシャルフ様、その、昼間から私の部屋に出入りするというのは、いかがなものでしょう? 他の王子は勉学に励んでおりますのに、こんなことをしているとあらぬ噂が立ってしまうのでは」
「あらぬ噂とは? 第四王子はどこの馬の骨とも知れぬ娘に骨抜きだと?」
シャルフの手はエルザの手をとり、そっと口づける。途端、エルザは「ヒイッ」と悲鳴を上げながら手を引っこ抜いた。
「ちょっと! やめなさいよそうやって女性の肌に断りも躊躇いもなく触れるのは!」
「肌?」
「肌よ! 手の甲はまごうことなき肌!」
ぺちぺちと手の甲を叩いてみせると、きょとんとしていたシャルフはどこかわざとらしく微笑んだ。
「肌とはドレスの下を言うものだよ。そういうことを知らない君も可愛いよ、私のエル」
「ぶんっ殴るわよこのぼんくら王子……!」
「落ち着いてください、エルザ様」
拳を握りしめるエルザの両肩に手を置き、クローネはその怒りを宥めようとする。でもぼんくら王子は「怒る君も可愛いよ」なんて言ってのけるのでクローネの努力など焼石に水だ。
「それより、宮での生活には慣れたかな。可愛い君に不自由はさせたくないのに、慎ましやかな君はろくに侍女もつけないのだから」
「可愛い私とか慎ましやかな私とか、形容をつけないと私を呼べない呪いにでもかけられてるの? いいお祓い場所を紹介するわよ」
「とりあえず紅茶でも淹れようか。贔屓にしている商家が東方から仕入れた紅茶をもらってね、最近のお気に入りなんだ」
エルザの嫌味は無視し、シャルフは侍女を呼んで紅茶を淹れさせる。首を刎ねられてもおかしくない暴言をいくら吐いてもこの有様、
そうイライラしながら、しかしエルザも仕方なく椅子に座る。金貨三百枚という破格の報酬は苛立ちに対する慰謝料を含んでいるのかもしれない。
侍女が下がった後、シャルフに勧められるとおり、エルザはカップに口をつけた。確かに香りが高くておいしい。東方の職人は細かい仕事が得意だと聞くから、茶葉を育てるのも上手いのかもしれない。こういうところがこの仕事のいいところである。
「それで、生活に慣れたのかなという話だけれど、実際どうかな。不自由していることがあれば言ってくれて構わないよ、報酬から天引きするようなことはしないから」
「私を守銭奴だと思ってるの? 天引きしないならそこの窓を修理してほしいわ、隙間風に困ってるの」
ふんぞり返るエルザの背後で、クローネは「守銭奴じゃありませんか……」と小さく呟く。というか貧乏暮らしにはいい加減慣れていたはずなのに、ひとたび贅沢を知った人というのは我儘なものだ。いや、エルザに関していえばかつてのクリスタル家での豊かな暮らしを思い出してしまったのかもしれない。
「そうか。一応君を迎える前に一通り確認はしておいたのだけれど、人をやって確認しよう。他には?」
「……退屈なんですけど、書庫ってどこにあるんでしょう?」
「ああ、インマーグリュンの離宮――アンムート宮殿の南側にあるよ、
「私は貴方と違って昼間にごろ寝なんてしません。そして夜はゆっくり休ませていただきたいので一人にしてください」
「それは残念。私も夜は忙しくてね」
賭博か酒場に行くのにか? そう言ってやりたいところをなんとか堪えた。
「あと、これは少し事務的な話なのだけれど、
「翡翠の宮殿……というと、シュヴァッヘ第三王子のですか」
血筋もよければ生まれた順番も悪くないけど病弱な王子のことだ。エルザも、シャルフの妃として宮殿に入った際の式典でその姿は見ていた。隣に座る第四妃が少し大柄なのもあるかもしれないが、座っていても分かるひょろりとした体でいかにも病弱そうだった。実際、式典中に体調を崩して宮に戻ったらしい。
「何かあったんですか? お体の具合が一層悪くなったとか」
「そのとおり。最近ますます体調が芳しくなくてね、主治医も半分お手上げだ」
「でもそれと私が近づかないようにとはどういう……?」
別に疫病を運ぶわけじゃないのだが、もしかして下賤な身の者がうろつくと病が進行するとでも思われているのだろうか。怪訝な顔をするエルザに対し、シャルフは「ああ、君がそう案ずることじゃないんだが……」と珍しく言葉を濁し、声の音量も落とす。
「第四妃は熱心なアダマス教徒でね。兄上の治療と称して正教会から修道士を呼び寄せ、祈祷をさせているんだ。お陰で翡翠の宮殿周辺が異様な雰囲気に包まれているから、まあ近付かないほうが妙なことに巻き込まれずに済むという話だよ」
「な、なるほど……」
ぼんくら王子にしては珍しくまともな助言をくれた。エルザが少し動揺したのに気付いてか気付かずか、シャルフは「一応私もアダマス教徒ということになっているし、そう頭ごなしに悪いとは言えないんだが……」と困った顔で椅子の背にもたれる。
「ここ数年のアダマス教――特に正教会は少し過激だね。なんでも、アウレウス教の残党を匿っていたとかで西方の小民族の村を焼野原にしたそうだよ」
「っ……焼野原、ですか」
ベルシュタイン家が王家に弓引いたと言われる戦争こそ、アダマス教とアウレウス教の対立に端を発するものだ。ベルシュタイン家はアウレウス教の始祖の加護を受けており、だからこそ “魔女狩り”でアウレウス教は異端として駆逐された。その結果、現在表立ってアウレウス教を信仰する者などいない。
「やり過ぎじゃないかって声もあったみたいだけど、有耶無耶に終わったね。陛下も最近正教会との結びつきが強いし、特に私達王族は“祝福”も受けているし。教会に強く出ることができない側面はあるよね」
王族が受けている“祝福”。それは、アダマス教の始祖が国を治めるために与えた能力だと言われる。
その“祝福”の内容は様々で必ずしも大っぴらにされているものではないが、大体は戦を通じて明らかになる。例えば現国王の“祝福”は“光陰の創成者”――光かと見まごうほどの速さで槍を扱う。かつてローザ地方を治める際、その祝福を前に反逆軍は手も足も出なかったのだとか。
このぼんくら王子も“祝福”を受けているのだろうか。エルザは本題そっちのけでじろじろとシャルフを見つめた。“祝福”を付与されない王族もいるし、“祝福”の有無それ自体は王位との関係ではあまり強く評価されない。しいていうなら“祝福”ゆえに多くの武勲を立てることができ、それが王位を継ぐ評価へと繋がるとはいえる。
「ああ、私も“祝福”は受けているよ」
「え? でも貴方、何の戦績もないじゃない」
訝しんでいると、シャルフは「そこはまあ向き不向きというものだよ」と飄々と答える。
「言ってしまえば、戦闘では守りに徹しているんだ」
「祝福までぼんくらなんですか?」
とんだ暴言に、クローネは遂にエルザの肩を小突いた。
「そうかな? 将たる王が倒れないのは重要なことだよ」
「でもそれ前に出ないんですよね?」
「私は名乗りを上げて突っ込んでいく戦に意味を見出せなくてね。後ろでのんびり戦局を眺めさせてもらっているよ」
なるほど、シャルフにろくな功績がない理由が分かった。戦なんて、軍を率いる将が前に出て名乗りを上げ次々と敵軍を
「話が逸れてしまったけれど、そういうわけだから翡翠の宮殿にはあまり近寄らないほうがいいと思うよ。百害あって一利なしだからね」
「……ご忠告ありがとうございます」
「兄上の病状のせいで第四妃も神経質になっているみたいだし。私の可愛い姫がいびられては堪らないからね」
「お気遣い痛み入りますけど、私はその歯の浮くような台詞のほうが堪りません」
「じゃあ毎夜囁いて耐性をつける必要があるね」
「寝言代わりの呪詛と判断して人を呼びますよ。やめてください」
そんな噛みあっているのか噛みあっていないのか分からない遣り取りの最中、部屋の扉が軽くノックされる。シャルフが「どうぞ」と返事をすると、そろりと侍女のロミーが顔を覗かせた。
「失礼いたします、シャルフ殿下、エルザ様。シャルフ殿下、陛下がお呼びです」
「陛下が? 珍しいこともあるんだね」
のんびりまったり紅茶を堪能する姿勢になっていたシャルフは、台詞のとおり驚いた顔をする。
「分かった、すぐに向かうよ。ありがとう」
「い、いえ……お邪魔いたしまして、申し訳ございません……」
シャルフに微笑まれて頬を染めたロミーからちらと視線を向けられ、エルザは一瞬小首を傾げたが、すぐに理解した。シャルフはエルザにベタ惚れだということになっているので、2人の時間を邪魔して申し訳ないと思っているのだろう。
「私はまッたく構いませんよ。殿下、陛下がお呼びなのですから急いで支度をなさってください」
「ああ、そうだね。ごめんね愛しい姫、王命でさえなければ、君との時間なんて誰にも邪魔させやしないのに」
立ち上がり、再びエルザの手を取り口づける。甘ったるい台詞を手から注ぎ込まれるようで例によってエルザは背筋を震わせたが、事情を知らないロミーの前でその横面を叩くわけにもいかない。我慢はしたものの、耐えきれなかった手がぴくぴくと痙攣した。ついでに頬も。
「殿下ったら、こうしているうちに刻一刻と時間が過ぎてしまいますよ。陛下がわざわざお呼び立てするということはお急ぎなのでしょう」
「ああ、名残惜しいがそうしよう。支度をするので、君は下がって構わないよ」
「は、はい、失礼いたします」
砂を吐きたくなるような寸劇を目の前で見せられ、ロミーはさらに頬を染めながら出て行った。途端にエルザは手を引き抜こうとするが、逆に腰から抱き寄せられる。
「な、なにするの! 変態!」
「変態だなんて酷いね、夫なのに」
「契約上のね! いいから放しなさいよ!」
ぐぐぐと胸を押しやるが、シャルフはびくともしない。いくらろくに戦績のないぼんくら王子とはいえ、さすがに男女の力の差はある。
「いくら契約上とはいえ、これ見よがしに他の者の前でばかり仲の良い夫婦を演じるのは君に失礼かと思ってね。たまには裏でもそれらしいことをしようか?」
シャルフの手がそっとエルザの頬を撫で、そのまま口づけでもするかのように唇が近づく。クローネは「はっ!」と顔を覆い隠して見るまいとしたが、顔を真っ赤にしたエルザが乱暴にその顔を押し返した。
「気遣いの方向が間違ってんのよ! 他人に見られるところでかゆくなるような台詞を吐くのをやめなさい!」
「かゆいのか? 医者を手配しておこうか、安心してくれ、私の伯父上が腕のいい医者だ」
「そういう話をしてんじゃないのよこのぼんくら王子! いいからとっとと陛下のところに行きなさい!」
エルザが投げつけた上着を羽織りながら、シャルフは「しかし、陛下か……」と少し首を傾げた。
「……さっきも珍しいって言ってたわね。どうしたの、仲でも悪いの」
「いや、そういうわけじゃないんだけどね。本当に珍しいなというだけだよ」
誤魔化された……? エルザは眉を顰めたけれど、シャルフは何も続けず「じゃあ行ってくるね、また落ち着いてお茶をしよう」と微笑みだけ残して出て行った。
「……仲が悪いんじゃなければ何なのかしら」
「ご病気というわけでもございませんよね。エルザ様が宮殿に入った日、陛下もいらっしゃいましたし」
そうね、と頷きながらエルザはその日を思い出す。影になっていてよく見えなかったが、少なくとも式典に出てはいた。ただ、エルザのお披露目は春の式典のときまで見送りとなった。第四王子の王子妃なのに妙だとは思ったが……。
「まあ、私には関係のないことだわ。書庫の場所も教えてもらったわけだし、去年の夏の記録でも漁りましょう」
「エルザ様、言い方が盗賊です。それにしても、やっぱりシャルフ殿下はお美しいですねえ」
どこか少女のようなうっとりとした横顔で、クローネは扉を見つめる。
「あのお顔に日々口説かれるなんて、やっぱり私は羨ましいです。エルザ様、役得ですよ」
「そんなわけないわよ。……あっ、これじんましんよ! あのぼんくら王子、やっぱり呪いをかけてに来てるんじゃないの?」
「そう悪態を吐くものではありませんよ、エルザ様。ちなみにそれは虫刺されですのでじんましんは出ておりません」
しかし……。エルザは、シャルフに抱き寄せられたときのことを思い出す。いくら男女差があるとはいえ、エルザの手を掴んだままあんなに軽々とそして自然に腰を抱き寄せることができるものだろうか。戦績もろくにないし、現に本人も戦は後方で見学しているなんて笑っているし、到底軍人としても優秀とは思えないのに……。
「……多分女遊びには慣れてるのね。ヤなヤツだわ」
頭に浮かんだ締まりのない顔が途端に余裕の笑みに思え、口付けられた手の甲をごしごしと手近な布で擦った。
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