第113話 帰還

「「「おお!」」」


 僕は森の広場に立っていた。視界が徐々にクリアになると、そこには目を丸くしたオルガ師と数名のギャラリーの皆さん、そして今にも飛び出しそうなリュカ様と、それを抑えるウルリカがいた。


「た、ただいま…」




 彼らによると、僕の姿が一瞬掻き消えたかと思うと、次の瞬間にはすぐに戻って来たらしい。なるほど、僕がイメージしたのは、あの日あの時間のあの場所だ。指定した時間と座標が、界渡りの直後の同じ場所だったんだから仕方ない。行きも帰りも感極まりながら杖を振るった僕、ちょっと恥ずかしい。そして対照的に、恥ずかしげもなく僕に駆け寄り、抱きついてわんわん泣いたリュカ様。心配かけてごめんよ。


 僕は彼らに、何が起こったか説明した。


「ふむ。お主があちらでその筋書きを用意した者だったとはな」


「前世、本当に僕がやったのかは分からないんだ。だけど今回は、僕が書き直して来たよ」


「すごいよアレクシ!まるで神様みたいだ!」


「ふふん。自分で設けた罠に、自分が掛かっておったとはな」


 はい。面目次第もございません。


 後は森人エルフの皆さん総出で歓送迎会というか、どんちゃん騒ぎとなった。僕の界渡りは、オルガ師とウルリカ、そしてほんの一部の人しか知らなかったのに、人族の魔力反応と莫大な魔素の動き、そして人族が里から界を渡ったと知れるや大騒ぎになり、次々に集まった住民にもみくちゃにされ、質問攻めに遭い、そのまま宴会に突入してしまった。僕らは最初、当たり障りなく対処していたが追いつかず、オルガ師にまた再訪する約束をして、転移でおいとました。




「それであのっ、今更なんですけど…」


 そしてやおら訪れた、告白タイム。リュカ様は色々あって寝ちゃったから、告るなら今しかない。急なチャンスだが、何度も脳内で練習して来た。焦るなアレクシ。今が勝負だ。


「僕、ずっと決めてました。ウルリカ、さん。お友達から、お願いします…!」


 僕は小箱をパカリと開く。中には宝石質の魔石が、各1個ずつ。前は5個ずつ用意していたけど、生憎それは間に合わなかった。


「そんな物騒なもん、いくらも要らんわ!この間のエメラルドだけでお腹いっぱいじゃ!」


 ああ、心の準備をしていたとはいえ、フラれちゃったな。まあ、歳の差500じゃ仕方ないかな。彼女らからすると、僕なんかすぐ死んじゃう虫ケラみたいなものなんだろう。


「ああもう、そんな顔をするでない!お主、友にこんな高価なものをやるのかえ?」


「え?」


「お友達、なんじゃろ。よろしくな、アレクシ」


「…うん!」


 僕はこうして、ウルリカと無事友達になった。




 その後、僕らが友達になったことを知ったリュカ様が激怒して、リュカ様とも友達になることに。そして「様」呼びをやめるように、きつく咎められた。


 それから、森人の里から度々催促があり、何度も足を運んでケーキを献上しつつ、森人たちからは毎回質問攻めに遭うことに。一方でリュカ様…リュカは、付与や魔道具作りを学んで楽しそうだ。僕らは学園を揃って卒業後、森人たちに師事し、一緒にいろんな研究を進めることで合意している。


「いっぱいありがとう、アレクシ。楽しいね」


「はい、リュカさ…リュカ」


「ほうほう。お主らは熱い友情で結ばれておるのう」


「だから!そういうのと違うから!」


 ループを終えた僕の人生は、これからだ。




 ———と思っていた。


 王国歴358年10月1日、世界は再び巻き戻った。


「どこがバグってた?!」


 僕はベッドから飛び起きた。あっちで万全な完成版をリリースしたはずなのに、どうしてこうなった。かくなる上は、再び界渡りで戻って、書き直して来なければ。せっかく万感の想いを込めてオフィスを後にしたのに、ゲーム会社ってのは本当にクソッタレだ。


 いや、文句を言っていても仕方ない。とりあえずレベル上げ。そして界を渡り、不具合を調べ上げ、パッチを当てて、今度こそ!


 僕の戦いは、これからだ!




✳︎✳︎✳︎


 皆様、最後まで読んでくださってありがとうございます!


 結局また「これからだ」エンディングで「おめぇよぉ!」「それしかねェんかよ!」ってことなんですけども本当にごめんなさい!。・゚・(ノД`)・゚・。


 アレクシの物語はこれからも続きます。今後も時折、後日談やら番外編やらIFストーリーやらをマイペースで更新できたら、と存じます。おそらくサポーター様限定から、時間を置いて一般公開になると思いますが、もしよろしければ、その時はまたご笑納ください。


 本作は、私の予想を超えてたくさんの方に読んでいただき、温かいご支援をいただいて、ここまで書き切ることが出来ました。今後も皆様に少しでも楽しんでいただけますよう、目一杯楽しんで作品を執筆して参る所存です。


 読んでくださって、心から感謝いたします!


明和里苳

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