第99話 氷の超級ダンジョン

 10月7日、月曜日。今日も授業を受けながら、密かに内職。前ループ、トンボの羽を靴や装備に付与するのではなく、飛翔フライ用のアイテムと割り切って、指輪に付与した。今回は同じ方式で、もう最初からドッグタグのようなシンプルなペンダントトップを作成。誤算は、ルフの羽が大き過ぎて机で内職が出来なかったことだ。仕方がないので、他のものから作成していく。まず火鼠のタリスマン。これで火炎無効、防寒効果もある。更に余った尻尾を爆炎エクスプロージョンの魔道具に付与して、火力を底上げ。結構な破壊兵器になった。


 加速アクセラレイト用のファルコンのタリスマン、風壁ウィンドシールド用の風精シルフのタリスマン、そして飛翔フライ用のルフのタリスマン。これらは、既にある魔道具に付与しようか迷ったけど、MP消費なしで使えるのが強み。タリスマンを作れるだけ作って、数で勝負だ。


 属性の違う魔道具やタリスマン同士を、喧嘩させないで調和させる方法。それは、3周目にウルリカの次女オフェリアさんに教わった。彼女は裁縫という名の、衣類系の防具を作る研究者だ。この技術の肝は闇属性。全てを包んで覆い隠す闇属性の聖句を織り込むことで、相反する性質を同時に持たせることができる。僕は魔力糸を編み込んで、聖句のシンボルの入った紐を作り、ドッグタグ式のチャームをじゃらじゃらと首から提げることにした。


 次に狙うのは、上級の上、超級ダンジョン。一番近いのは、北の山脈のど真ん中、氷の超級ダンジョンだ。水属性は途中から氷属性に進化するが、水の時には火属性に一方的に優位なのに対し、氷になると火属性も弱点になるのが面白い。水属性に対しては風属性も優位なんだけど、やっぱり火属性の火力には及ばない。さあ、爆炎を存分にブッパして来よう。


 万一にもMP切れを起こさないように、週の半ばで一度スライムの核も集めに行って来る。ルフのタリスマンとファルコンのタリスマンを3つずつ作ったところ、馬鹿みたいなスピードで飛べる。余らせていたスキルポイントを斥候術に全振りして、一気にレベルMaxまで上げると、寮を抜け出すのも思いのまま。暗い場所も暗視でバッチリ、解錠もお手のものだ。ついでにカミーユ先輩の部屋に忍び込んで、槍を拝借して軽く付与エンチャントしておいた。今度は風属性の素材だ、変に噂にのぼるようなことはないと信じたい。




 10月12日、土曜日。外泊届を出して、氷の超級ダンジョンへ。北の山脈は広い。国境を接すると言っても、向こう側は極寒の地、亜人種の住む領域だ。そして双方を隔てる数千メートル級の山々、その一番深いところに、ダンジョンがある。


 全属性の中で、最も火力が高いのは火属性。だから、火属性が活躍できるダンジョンは、他のダンジョンに対して攻略が易しいというのが定説だ。だけどここは、来るだけで大変。元の世界だって、世界最高峰に挑んで命を落とす登山家が後を絶たなかった。こちらはこちらで、魔法やスキルがあるとはいえ、到着するまでの難易度は変わらない。ただし、飛んで来られるなら別だけど。


 風壁ウィンドシールドに護られ、加速と飛翔を重ねがけした僕は、割とひとっ飛びでやって来た。火鼠のタリスマンで、防寒もばっちり。特にこれといった装備も買って来なかったが、私服に革靴で十分だ。


 氷の超級も、フロア全体を見渡せるタイプのダンジョン。ここのモンスターは、水属性らしく状態異常を与えて来る上に、宙に浮いていても氷のブレスをバンバン吐いて来る嫌な奴らだ。だけど、優性属性の風壁に護られ、爆炎で一方的に蹂躙する爽快さったらない。毒々しいトカゲ、氷柱つららを飛ばしてくる獰猛な獣、全てを凍てつかせる氷精らをすべからく焼き尽くし、最下層のフロストドラゴンへ。そこで満を持して、ファイアーボールの一番強い奴、不死鳥フェニックスを連打。オラオラ落とせやサファイア!


 ちゅちゅちゅちゅちゅどーん。


 飛翔速度が大幅に上がった僕は、調子に乗って深夜まで周回した。残念だったのは、ちゃんと泊まりの用意をして来なかったこと。火鼠のタリスマンのお陰で寒くないとはいえ、マントすら買っていないので、石造りのベッドで私服のまま寝るしかなかった。しかも、食糧もお粗末。こないだプレオベールに行く前に買ったおやつの残りでしのいだ。これまで散々遠征に行き慣れていて、インベントリの中には常に何かしら食べ物や衣類が入っていたのが、仇となった。まだこのループ、2週間も経ってないんだった。


 しかし、空腹を押してまで粘った甲斐があった。10月13日、日曜日。僕は、念願のレベル100に到達した。




名前 アレクシ・アペール

種族 ヒューマン

称号 アペール商会令息

レベル 100


HP 1,500

MP 3,000

POW 150

INT 300

AGI 150

DEX 300


属性 土


スキル

+体術Lv2

+斥候術LvMax


石礫ストーンバレット

(ランドスケイプ)

(ロックウォール)

(ゴーレム作成)

(剣術)

(槍術)

(弓術)

(身体強化)


E 私服

E タリスマン-

 火鼠のタリスマン+Max

 ルフのタリスマン

 ルフのタリスマン

 ルフのタリスマン

 ファルコンのタリスマン

 ファルコンのタリスマン

 ファルコンのタリスマン

 風精シルフのタリスマン 


E 魔道具・爆炎エクスプロージョン+

E 魔道具・不死鳥

E 魔道具・フォート

 魔道具・転移


ステータスポイント 残り 0

スキルポイント 残り 420




 よし、これで転移が使用可能だ。いつでもここに来られるように座標を計算、杖に登録。すると分かった。転移の登録地点マーカーは、前ループのも残ってる。これはラッキー。僕はウッキウキで寮に戻った。お腹が空いて仕方ない。その日僕は、久しぶりにいっぱいおかわりをした。

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