第55話 誕生日プレゼント
今日も今日とて、夜中に飛んではダンジョン巡り。一応僕も、ループの元凶が王都にあると踏んで、あちこちそれとなく情報収集をしている。しかし、貴族学園って、貴族の子弟が集まる、いわば要人ばかりの最重要拠点の一つであって、容易に潜り込むことは出来ない。捕まっても嫌だし。というわけで、冒険者ギルドに顔を出したり、商業ギルドに顔を出したりして、それっぽく話を聞いたりしてるんだけど、一向に埒が明かない。冒険者だって、ランクが上がるほど口は固くなるし、かといって下っ端は何も知らない。商人なんか、本当は商品よりも信用と情報の方がずっと大事だ。そういうわけで、内部の事情はてんで掴めなかった。これなら前ループの「塔」の方がよほどマシだ。あの時もっと踏み込んで、学園内部と貴族の情報を集めていればよかった。
そうして無駄足を踏んでは、またダンジョン。せっかく遠征したんだから、目ぼしい素材は集めておきたい。もしかしたら、すごくいい
特に今の僕には、どうしても付与に足るアイテムが必要だ。なんたって、ウルリカの誕生日が迫っている。去年はケーキでお茶を濁したけど、やっぱり仮初といえど婚約者なんだから、ちゃんとしたプレゼントを用意しなければ。僕も男だ。いつまでもヘタレのまま、逃げ回っていてはダメだ。僕の方が年下とはいえ、こういうのは男の方からちゃんとしなきゃ。
長年錬金術の研究を続けるウルリカに、あっと言わせたい。喜んで欲しい。そうなると、レアなアイテムに、ガッツリ付与を盛りたい。ということは、高難易度のダンジョンをアタックして、レアモンスターを討伐しなければ。そして討伐自体はそう難しいことじゃない。僕には魔道具もMax装備も揃ってる。だけど、何を狙うべきなんだろう。ウルリカが装備する武器といえばナイフ?弓?いや、ひとまず防御重視でローブだろうか。しかし、モノは良くても女の子はデザインが大事なのでは。ならば外見を邪魔しないタリスマン?
色々考えた挙句、とりあえず宝石にしておいた。僕も商人の息子だから、そこそこセンスには自信があるんだけど、好みって人それぞれだもんね。宝石って言っても、普通に採掘するんじゃなくて、宝石質の魔石をドロップするドラゴン。これが各地のダンジョンに、ボスとして何種か鎮座している。それを狩って回る。
どの色のどんな石が好みか分からないので、とりあえず全種類、何周か回る。同じ魔石とはいえ、色味と形は毎回微妙に違うものだ。たまにレアドロップなんかも落ちる。これだからダンジョンアタックはやめられない。
しかし、ドラゴンが落とす特殊な魔石には、それぞれ元から優秀な効能が付いている。下手な素材をエンチャントして、それを打ち消して台無しにするわけには行かない。というわけで、こんな時こそ魔石Maxの出番です。
魔石Maxは、過充填してエーテル化したそばから、また魔石Maxとして再結晶してしまう。だけど更に上位の魔石には、ちゃんと吸収される。これは他の素材の付与でも同じだ。ある程度濃縮すると、何段階目かでそれ以上の進化は止まり、エーテルが入って行かなくなるんだけど、上位の素材なら、更に付与進化が続けられるのだ。
もちろん、上位魔石を山ほど狩って、上位魔石同士でMax付与出来たらそれが一番良いんだけど、良い素材ほどMaxに持って行くまで必要個数が増える。何年経っても終わる気がしない。というわけで、大量のスライムの核から作った魔石Maxを、限界まで付与する。
結果、それぞれの魔石が+1まで加工出来た。スライムだとそこが限界みたいだ。だけど、+1に至るまでに
例えば、
・ブレイズドラゴンルビー
→ 火属性、重量0.3、含有MP1,000、火属性付加、火炎無効
これが、
・ブレイズドラゴンルビー+1
→火属性、重量0.3、含有MP1,500,000、火属性付加、火炎無効、攻撃力2倍、
こうなった。あ、効能もちょっと増えてるね。ちなみに物理攻撃力2倍とPOW2倍は、相殺されずに両方ともそのまま。魔法スキルだと効果2倍、物理攻撃は武器+POWの攻撃力2倍に、更にPOW分がもう1回上乗せされる感じだ。それから含有MPも凄まじいけど、およそこの10倍は貯蔵出来る。魔石Maxを1,000個以上付与したけど、もの凄いものが出来てしまった。
ウルリカには内緒で、スライムダンジョンの近くに作った砦の工房で、一人こそこそと作業を繰り返し、ブレイズドラゴンルビー、フロストドラゴンサファイア、ストームドラゴンエメラルド、グランドドラゴントパーズを、とりあえず5個ずつ錬成した。大変だったけど、最低5個あれば、指輪、ネックレス、ピアスなんかが作れるだろう。多分彼女は風属性だし、瞳の色も緑だ。本命は、エメラルドかな。
ウルリカのことで気になっていることが一つ。彼女を鑑定しても、ステータスが見られない。これは種族が違うせいなのか、それとも彼女の方がレベルが高いからなのか。失礼を承知で彼女に聞くと、
「ふふ、内緒じゃ」
とのこと。乙女は秘密がある方が魅力的じゃろ、なんて言ってたけど。今の僕のレベルは、もうすぐ200。ソロで上位ダンジョンを周回して回ってるし、冒険者ギルドでそれとなく周りの冒険者を鑑定しても、僕ほどの冒険者はいない。彼女は一体、どれほどのレベルなんだろうか。
ともかく、誕生日には間に合った。後は子爵邸でケーキを焼いて、当日に備えるのみだ。
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