第44話 ネームドアイテムのエンチャント
オルドリシュカ師は、大興奮でそれらをエーテル化して行った。もちろん僕も。トンボの羽だけで万単位の在庫を抱えている。1枚1枚は大したことないが、麻袋1つで結構な体積と重さだ。
エーテルを入れるガラス瓶が足りない。エーテルは特別な容器を必要としないが、その代わり何にでも浸透してしまうため、何に入れたってあまり保存が効かない。ガラスなら幾分マシという感じだ。僕らは麻袋1/4ほどを全てエーテル化し、その都度、手元にあった素材に片っ端から
結果、例えばこれらが
・鉄のナイフ
→ 攻撃力3、重量2
・革のブーツ
→ 防御力2、重量1
・マント
→防御力2、重量2
こうなった。
・秋津のナイフ
→ 攻撃力13、重量0、※セットボーナス
・秋津のブーツ
→ 防御力12、重量0、※セットボーナス
・秋津のマント
→防御力12、重量0、※セットボーナス
※セットボーナス
秋津シリーズ3点以上装備で
「「おおお!」」
ネームドシリーズ爆誕に、二人して声を上げてしまった。
トンボの羽100パーセントで作った風属性エーテルは、エーテル内での相互干渉がなかったせいか、通常の風属性混合エーテルよりも浸透が早く、よく馴染み、多く吸収された。元となった素材は何の変哲もない普及品で、またトンボ自体も初級ダンジョンのモンスターだ。しかし、単種の魔物素材でエーテルを生成しただけで、セットボーナスが付くような特殊
僕らは早速、他のアイテムにもトンボエーテルを使って、秋津シリーズを量産した。着ている服、帽子、ベルトやハンカチまで。するとセットボーナスは5個、7個と設定されていて、浮遊がより強力に。最終的に、10個で
僕は師匠と二人でキャッキャウフフしながら、実験成功を喜んだ。良かった、クララックに来て。最初の一週間、僕の後ろでイチャイチャベタベタしていたカバネル先生とカロルさんに、何度殺意を抱いたか分からないが、僕はこのためにここへ呼ばれたのだ。
一方、もう夏休みも終わりに近い。マロールに戻る日が近付いている。僕は晩餐の席で、学園には退学届を出して、クララックに移住したい旨を先生に相談した。
「しかしそうは言っても…」
先生は渋い表情をするが、
「君がクララックに腰を据えてくれるなら、こちらとしては大歓迎だ。クレマン、お前も教職を辞して、カロルと所帯を持つのだろう。手助けしてやったらどうだ」
子爵が助け舟を出してくれた。そして実家には、子爵から書状を出しても良いと。ああ、ここの人は何て良い人たちなんだろう。心の中で、リア充爆ぜろって何度も呪ってごめんなさい。
その後はトントン拍子に事が進んだ。まず僕は、新学期を前に試験を受け、飛び級で学園を卒業させてもらった。これは珍しい措置だが、制度としては認められている。クレマン先生は、あと1年で卒業出来るのに、僕の学歴がふいになることを懸念していたが、これで心おきなくクララックに招待出来ると喜んでくれた。
実家の方は、子爵からの書状により、問答無用でイエスと返答するしかなかった。とはいえ、他領の貴族とのパイプが出来たことに、父は喜んだ。僕が商会に残るよりも利益が出ると判断したのだろう。母は当初
そうして僕は、秋から正式にクララック領の住人となった。僕が帰省している二ヶ月の間に、師匠の工房が元のゴミ屋敷に戻り、膝から崩れ落ちたのは、また別のお話。
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