第4話 希少アイテムの使い道

念入りに、熟考して考えた結果、やはりこれしかないと結論付ける。

よしっ。

俺はまずフラスコに入ったオーロラソースっぽい見た目の薬を持つ。


……ただこれ、栓を抜かずにとっておけば数千万円の価値があるやつなんだよな。


手がかすかに震える。

もったいねぇ、という思いもある。

でも、まず現状を生き抜くためには仕方ない選択だ。

俺はこれを……飲む!

栓を抜いた。


「いくぞっ」


俺はフラスコの中身を一気にあおる。

うぇっ! 独特な舌触り!

続けてココナッツミルクに薄くドクターペッパーの風味を付けたような、そんな香りが鼻孔を突いた。

正直キッツい。

ごくん。

しかし何とか全て飲み下した。


「はぁっ、はぁっ……死闘だった……」


俺はすぐさまスキルボードを開いた。

今度は自分のだ。


テイム(適正1種)●

├同時テイム数増Lv5●

└指示Lv4●

[+追加スキルを選択してください]


「おおっ!」


俺が元々持っていた【テイム】系統のスキルとは別に欄が追加されている!

やはり俺が記憶していた通り、スキルを追加できる薬だったようだ。


……さて、それじゃあさっそく、どうすればいいいんだ? あっ、[+追加スキルを選択してください]の文字をタッチできるみたいだ。


追加スキル選択

[▶職種を選択してください]

[▶スキルを選択してください]

[+追加決定]


スキルボードには詳細な画面が開いた。

3つのボタンが存在していた。

上の[▶職種を選択してください]の方をタッチすると、別の画面が左からスライドインして表示される。


職種を選択

1. アルケミスト

2. 剣士

3. 召喚士

(後略)


なるほど。

この職種選択でスキルを絞り込むわけか。

そうすることで次の[▶スキルを選択してください]でその職種のスキルだけが表示されるって流れね。

それで全部選択し終わったら[+追加決定]ボタンを押せばいいと、そういうわけだ。


俺はあらかじめ決めていた通りに、それらを選択していった。


追加スキル選択

選択職種:ヒーラー

選択スキル:回復

[+追加決定]


「よし、押すぞ……!」


俺はちょっとドキドキしながら[+追加決定]ボタンを押した。


──ピロン!


スキルボードが点滅し、再表示された。


テイム(適正1種)●

├同時テイム数増Lv5●

└指示Lv4●

回復Lv1

├回復Lv2 - 回復Lv3...

└全体回復Lv1 - 全体回復Lv2...


「お、おぉ……!」


俺のスキルボードに、ちゃんと回復スキルが加わっている。

普通じゃあり得ない光景だ。

回復スキルを持ってるテイマーなんて古今東西見渡してもきっと俺くらいのもんだろうよ。


ただこのままでは使えない。

スキルの習得にはポイント割り振りが必要なのだ。


そして俺の保有スキルポイント、実はこれがまだ4ポイントだけ残っていた。

さっそく回復に割り振った。


テイム(適正1種)●

├同時テイム数増Lv5●

└指示Lv4●

回復Lv2●

├回復Lv3 - 回復Lv4...

└全体回復Lv1 - 全体回復Lv2...


「スキル、【回復】」


使ってみると、たちまち緑色の淡い光が俺のことを包み込む。

体の痛みが徐々に引いていき、出血も完全に止まった。


「……ふぅ。これで何とか動けるな……」


いちおう【ステータス】確認してみるか。


「ステータス、オープン」


一条奏多

HP 89/121

MP 23/31


これまた親の顔より見たお馴染みのヤツだな、これは。

【ステータスボード】だ。

身分証明として使えるし、自分の生命線であるHPやMPについての確認もできる。


HPは最大値ではないものの、ちゃんと回復しているようだ。

たぶんさっきまでは20とか10とか下回ってたと思うし。

ひとまずの危機は脱した……かな。


あと回復スキルの消費MPは8なのか。

さっきまで俺はMPを全然使ってなかったはずだから、間違いない。

テイムは特殊技能系スキルだからMP消費0だし。


……まあ、テイム済みのミミックに指示を強制したい場合は使う。ただ可哀想なのであまり使ってない。普通に友好関係築けばよくね? と思ってるしな。


「さて、それじゃあ行きますか」


俺は超希少アイテムの布──そうだな、仮に【マジッククロス】とでも命名しておこう。そのマジッククロスでこれまた希少鉱物であること間違いない輝かしいその鉱石を包み込む。

鉱石の姿は消えた。

俺はその状態の布を丁寧に折りたたんで後ろポケットへと仕舞った。

そして片手にきっと希少武器であろう黒い剣を持ち、隠し扉へと向かった。


……命はなんとか繋いだし、次は当面生き抜くための情報収集だよな。


食糧もなければ水も無い。

加えて俺はまだここが地下何階層目なのか、そしてどれくらい強力なモンスターがいるのかすらも分かってない。

このまま隠しエリアに籠ってばかりもいられないというワケだ。


「慎重に、慎重にだぞ……」


隠し扉へと慎重に手を当てて、押す。

押す。

めちゃくちゃ力を込めて押す。


「はぁっ、はぁっ、」


ビクともしない。

いったいどうなってるのか……と考えて、


「まっ、まさか!」


この隠し扉、内側に引く式では……!?

考えてみればそうだ。

普通隠し扉っていうのは外側から見つけるもの。

俺みたいに部屋の中にミミックを使ってワープしてくる想定なんてあるはずもない。


「嘘だろ、出れないじゃん」


扉には取手もなければくぼみもない。

部屋の内側から開けるのが不可能な仕組みだった。


……勘弁してほしい。ここから出られなきゃ、後はミミック経由で地下5階層に戻って異階層のモンスターたちの中をくぐり抜けて地上を目指すしか無くなるんだが。


「それは最終手段だからな……よし」


俺は剣を構える。

隠し扉に向かって。


……きっとこの剣は希少武器。なら丈夫なハズだ、多分。


隠し扉に傷をつけて、内側に引けるようなくぼみを作れたらならそれで充分だ。

とはいえ、この綺麗な刀身が欠けでもしたらショック間違いなし。

最初はちょっと軽めにやってみよう。

扉の中間くらいに狙いを定めて……


「おりゃ」


チュチュチュインっ!

甲高い変な音が鳴り響いた。

それと同時、


目の前の隠し扉が3つに斬られていた。


「……は?」


思わず目を疑う。

1回試しに振っただけなんですけど?

なんで石の壁が、しかも3つに?


「おりゃ」


試しに今度は縦に振ってみる。

チュチュチュインっ!

やはり甲高い音が鳴り響く。

直後、ゴロゴロゴロ、と。

石製の隠し扉はマス目状に9つに切断されて地面を転がった。


「……! ……ッ!!!」


こ、声にならん。

これ【魔剣】だったのかよっ!?


魔剣──それは使用回数に制限がある代わり、強力な魔法の込められた攻撃を放てる剣。

売った場合の値段はピンキリだが、確か最低でも数百万。高ければその値段は軽く億を超えるという……


「ど、どうなってんだこの隠しエリアはよ……」


あまりにも希少なアイテムが集まり過ぎている。

まるで何か意図的な操作が加わったんじゃないか、と疑わしくなるくらいに。

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