第45話☆宮崎沙耶香vs田辺美奈子

今回は沙耶香のセコンドで、対戦相手は神奈川県の2年生、田辺美奈子だ。


田辺美奈子はいい動きだった。中学からの経験者だろう。飛び技、打撃、関節技とバランスよく狙っていくオールラウンダーだ。

何かを警戒しても別の角度から攻められる。戦いにくい相手だなと思った。


でも沙耶香の強さは予想以上だった。最初に手四つで組んだところで沙耶香がパワーの差を見せつけると、田辺美奈子はそこから組むのを避けていたけど、そこに強烈なラリアットが襲いかかった。見ているだけで伝わってくる重い一撃。


そして一度捕まると技のサイクルからなかなか逃げられない。立ち上がったところをロープに振られてスクラップバスターで叩きつけられる。また立ち上がってもすぐさま抱え上げられてボディスラムを食らう。沙耶香のパワー技があっという間に田辺美奈子の戦意を喪失させた。


最後はボディスラムに抱えたところから立てた膝の上に田辺美奈子の背中を落し、そのまま脚と顎を押さえつけて膝の上で反り上げる。シュミット式バックブリーカーだ。

田辺美奈子が沙耶香の膝の上でブリッジするような体勢になった。何とか膝の上から降りようとしていたけど、上から沙耶香に押さえつけられては逃げられず、間もなくしてギブアップした。


目の前で繰り出される一発一発が重く、高山美優の技を彷彿とさせる。もしかしたらパワーだけなら互角かもしれない。しかもシュミット式バックブリーカーなんて中学の頃は使っていなかった。プロの試合でもたまにしか見ない技だけど、沙耶香はしっかり使いこなしていた。


「お疲れ様。圧勝だったね」


試合を終えた沙耶香に声をかけたけど、沙耶香は私の顔をしっかり見て「うん」と応えるとそのまま会場を出ていってしまった。


次の試合、陽菜も倒すから。そう言われた気がした。


私は聖華の同期にはほぼ負けたことが無い。でも今の試合を見ればわかる。私が見ていなかった1年半程の間にかなり練習したのだ。

一筋縄ではいかない。桜の時よりシビアな戦いになるだろう。


今日この会場に来てから感じていなかった張り詰めるような緊張感を全身で感じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る