第41話
夏休みが終わってからはさらに時間の流れが早く感じた。授業、部活、大学の練習と、毎日やることに忙殺されている間にあっという間に秋の気配が近づいている。
朝日丘高校に入学してから半年が過ぎた。正門のところにある木はもう青々とはしていない。通学の自転車は程よく涼しく、学校についてもさほど汗をかかない。
今日は学校での練習日。授業が終わったら格技室に直行し、咲来が来るまでの間はサンドバッグを蹴る。
身体が温まって汗が出始める頃、咲来がやって来た。2人で受け身の練習から基本動作をやってスパーリングをする。
「前田ちゃん、そんなに避けないでよ」
「そうはいかないよ!もう最初の頃みたいに食らわないからっ」
咲来のキックにも以前より正しく対処できるようになってきた。とは言っても咲来もパワーアップしている。うっかり受けてしまうとかなり痛い。ローならまだしも、ミドルやハイをこんな風にもらったら...。私もうかうかしてられない。
学校で練習する時は得意を伸ばすようにしている。大学で美月先輩に苦手を徹底的に指摘されるから、少しは得意技もやりたい。自信を失くさないためにもね。
あとは教わった動きを2人で確認する。私はもっぱら技の対処で、咲来は関節技。咲来のタックルからの逆エビ固めはかなり様になっている。上手く足を取れれば試合でも決められるだろう。
動きの確認の時はある程度受けたりするけど、今のところ逃げれたなと思うポイントもいくつかあった。冷静に相手の動きを見れるようになってきたかもしれない。
「どう?」
「うん、よかったよ。ちゃんと逆エビ固めだなって感じ。でもステップオーバーする時はもう少し相手の腰をちゃんと浮かせた方がやりやすいよ」
今度は私が咲来にかけてみせる。こういうのは教えてもらうだけじゃなくて実際にやられてみると覚えやすい。大学の練習で痛感した。
何度も何度も締めたり関節極めてくるまどかさんのお陰で、やられたことをやり返すだけで前より上手くかけられるようになった気がする。もちろんその後もっと極められるのだけど。痛い思いをした方が身体が覚えるというのもあるのかもしれない。
もう10月だというのに格技室は暑い。こういう建物は熱がこもるんだ。その分冬は寒くないといいけど。
涼しくなったとはいっても練習が終わるとTシャツは汗で濡れている。嫌になるくらい暑かった夏に一生懸命練習した結果は必ず出る。次の試合が楽しみだ。
「前田ちゃん、今週の交流試合楽しみだね」
咲来も同じ気持ちみたいだ。早く試したくてうずうずしている。
「うん。私たちいっぱい練習したもんね。7月とはもう別人だよ」
また高山美優と同じグループにならないかな。彼女の攻撃にどこまで対処できるようになっただろう。いや、相手が誰だろうと関係ない。誰だろうと戦って勝つだけだ。
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