第8話☆都大会
すっかり暖かくなり、日によっては半袖でもいいくらいだ。
駅に向かうまでの自転車は乗っていて気持ちよかった。
花粉の季節も過ぎて、梅雨までは束の間の過ごしやすい時期だ。
今日は前とは違い、都心の体育館で都大会が行われる。
でもブロック大会と同じでそこまで広いスペースではなく多目的室だった。
ブロック大会から都大会まではほとんど時間がない。
この1ヶ月の間にブロック大会と都大会が続けて行われる。
練習をやり過ぎると疲労や怪我が残ったりするけど、やらないと勝てない。
鍛錬と調整の際どいバランスを取りながら勝ち上がっていかなければならないのだ。
東京はAからDまでの4ブロックに分かれていて、それぞれのベスト4が都大会に進む。
そしてこの都大会のベスト4が次の南関東大会に進む。
Aブロックには強豪私立の紫苑女子大学附属高校がいる。スポーツの推薦入学も盛んで女子プロレス以外も有名な学校だ。
Bブロックにも強豪私立の聖華女子学園。私が中学2年の終わりまで通ってた学校の高等部だ。
この二校の選手は確実に都大会に来る。そして南関東開会への切符をかっさらっていく上位常連校だ。
初戦の相手は紫苑女子大附属の1年坂本美音。中学の頃に何度か戦ったことがある。
寝技で捕まると逃げるのにかなり手こずった。
関節技が得意な選手だったはずだ。タックルも上手かった。
リング中央で捕まらないように注意だ。
今年の1年、私たちの代はやっぱり強いと思った。
普通に考えれば経験値のある3年生が出場者の大半になりそうだけど、トーナメント表を見ると3分の1くらいは1年生だ。
中学に入った頃、今年は豊作だって言われたけど、それは他校も同じだった。
つまり東京はこの学年がたまたま激戦区であり、今がその3年後ということだ。
今日の初戦は第3試合なので出番が早い。
早めにウォーミングアップを済ませて会場の入口に着くと、もう人でいっぱいだった。
天井は少し高めなのに、人の熱気に圧を感じる。
ここで戦えるのはブロック大会を勝ち上がった16人だけだ。都内の女子高生でたった16人。
広めの多目的室の奥の方にリングが設置してある。
ちょうど第1試合が開始するゴングが聞こえた。声援と歓声が空間を埋め尽くす。
都大会の始まりだ。
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