第7話☆勧誘
放課後、格技室にぶら下がったサンドバッグを何度も蹴りつける。
このまま諦めるつもりはない。
「いいえ」
私の勧誘に対する彼女の返事だ。
いいえって…
同級生との会話で使う人、初めて見た。
英語のNoを訳すときくらいしか書くこともない。
突拍子もないことを言った自覚はあるけど、その返事に逆にこっちが戸惑っちゃった。
大塚さんの3文字の返事で会話が終了した後も彼女はじっと私を見ていた。
まずは普通の会話からしないとって思って、50m走速かったねとか、立ち幅跳びもすごく跳んでたねとか話を振った。
何かスポーツやってるの?って聞くと、
「中学まではちょっと、武道とか、やってたの」
とようやく文章になった返事をもらえた。
そう言った時の彼女は一瞬声が明るくなったように聞こえたけど、すぐに元の様子に戻った。
絶賛部員募集中であること、私が経験者だから基本的なことは教えられること、練習場所は結構自由に使えることは伝えた。
格闘技に興味がないはずがない。と思う。ていうかそう願いたいだけかも。
でもその場で承諾ってわけにもいかないだろうし今日のところは引き下がるしかなかった。
「武道経験者かー。あーいいなー!入ってくれないかなー!」
キックの練習を終えて畳に仰向けになる。でも気持ちが落ち着かない。
大塚さんがやっていたのは日本拳法っていう武道らしい。
自分がやっているのもマイナースポーツだけど、正直初めて聞いた。
授業終わりに動画で観てみると思った以上に激しい。パンチ、キック、投げ飛ばして関節技、何でもありに見えた。
プロレスは拳での攻撃は反則だけど、その他のスキルはそのまま活かせるはずだ。
体力測定を少し見ただけだけど元々の身体能力も高い。
きっといい選手になるだろう。
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