閑話:女神の独白6

 私達がこの島に辿り着いてから、結構な時間が経った。

 私にとってはそれほど経っていない感じだけど、旦那様が言うには「大体千年ぐらい」という事だった。

 そう言われてみると、大陸の様子とかいろいろ変わっているみたいね。別に興味ないからどうでもいいけど。

 私達のことで言えば、念願の子供が生まれた。

 当然子供を産むなんて初体験なので、どんな感じなのかなと思っていたんだけど、本当に死ぬかと思ったくらいとんでもなかった。

 出産指導が得意な大神と旦那様が応援してくれたおかげで、なんとか無事出産することができた。

 最初の子供は三つ子の女の子。名前は私が決めていいとのことだったので、私の世界の付け方で上から「タキリ田霧姫」「タギツ湍津姫命」「イチキ市杵嶋姫命」とした。

 次の子供は男の子で、これも私が付けた。私の世界でいろいろやんちゃな事をした弟と同じ名前で「スサノオ須佐之男命」。

 出産は物凄く大変な思いをしたけど、自分が産んだ子供を抱くとものすごく愛おしい気持ちが生まれた。これが「母性愛」っていうものかしら?

 旦那様への思いとは違う「いつくしみ」というものらしい。

 子供が生まれたことにより、今の住居だと手狭になってきたので増築した。

 今回旦那様が手伝ってくれると言ってくれたが、早く済ませたかったので、その気持ちだけ頂いて「今回は」断った。

 ありがとう旦那様♡

 子供たちの部屋を作ったり広間を拡張したけど、私達夫婦「だけ」の部屋は「当然」用意している。

 幾ら子供たちが居るとはいえ、私達夫婦「だけ」の時間は大切だからね。ふふっ。

 それと、人数が増えたことにより食糧事情が変わってきた。

 この子たち、エルフやハーフリング並みによく食べる。

 旦那様は「育ち盛りだから仕方ないよ。」と言っていたけど、幾らなんでも食べ過ぎじゃないの?

 そう言ったわけで、今までの量では全く足りなくなったので、農地の拡大と狩猟の頻度を上げた。

 当然、子供たちにも手伝わせた。当たり前でしょ。何でも与えられる「だけ」だと、私が嫌悪する「依存体質」になるからね。

 まあ、教育と鍛錬の意味もあるけどね。


 で、食糧問題がひと段落着いたときに、また問題が発生した。

 私達がこの島に定住することになってから、ちょくちょく遊びにくるようになった大神たち天界の愉快な仲間たちが、いつの間にか家に居座ってしまったのよ。

 総勢10神、これだけいると増築した今の住居でも手狭になってきたので、さらに増築した。

 一応「大神」だから、それなりの部屋を用意してやらないと思って作っていたら、何だか屋敷みたいな規模になってしまった。

 まあ、土地自体に余裕はあったので特に問題にはならなかったけどね。

 それで、一気に10人(神)増えたため、またしても食料が足らなくなってきた。

 なので、さらに農地を拡大して狩猟の頻度も上げた。

 今では、見渡す限り農地が広がっていて、はるか遠くに森があるという感じになっている。

 「当然」、居座った連中大神たちにも手伝わせたわよ。

「働かざるもの食うべからず」よ。連中もその辺は分かっているみたいで、特に文句も言わずにやってくれているわ。

 というより、何だか前より生き生きとしているのよね~。

 今まで退屈な日々を送ってきていたから、その反動で「何かやる」ことが嬉しいんでしょうね。その気持ちはよく分かるわ。


 子供たちは元気に育ってくれているし、大神たちもよく働いてくれている。

 偶に天界から使いが来るんだけど、ここの神力があまりにも濃密なために使者が近づけないみたい。こればかりは仕方ないわね。

 大陸にいる知的生命体を寄せ付けないためでもあるから、なんとかして連絡取るようにして頂戴。

 そういえば、最近三つ子たちがませてきて、耄碌ジジイ創造神に色々おねだりしているみたい。

 あのジジイも「本当の孫の様で、目に入れても痛くないくらい可愛いのぅ~。」と言っていたから、とりあえず放っておきましょ。

 ただ、ちょっと要求が過剰になってきているようなので、纏めて締める必要があるわね(にっこり)。

 あと、長男のスサノオは一端いっぱしの「神」に育てるべく、大神の戦女神に教育してもらっている。

 誰に似たのか、弟そっくりの性格になっちゃったから、死なない程度に厳しくしつけて欲しいとお願いした。

 彼女もなんだかうれしそうな感じで引き受けてくれたから、少しはましな性格になってもらいたいものね。

 私達夫婦はというと、今でも新婚気分。子供たちが育ってきたのと大神たちが居座った所為せいで、「夫婦の営み」がなかなかできなかったんだけど、最近では連中の目を盗んでのが癖になってきちゃった♡

 何だか「背徳感」があって色々捗るのよね~。

 そのおかげで、無事子供を授かった。

 旦那様に「男の子と女の子のどっちがいい」と尋ねたら、「どっちでもいい。元気に生まれてくれるのが一番だ。」と答えてくれた。

 流石は旦那様、また惚れ直しちゃった。


 この世界に降り立って約千年。いろいろな事があったけど今までで一番幸せな神生を送ってきたと感じている。

 その最大の理由はやはり旦那様。いつもは優しく見守ってくれていて、偶に諫めてくれる。

 彼に出会う前は、そんなことは思わなかったし周りも「大神」として対応していたのでそんなことはなかった。

 旦那様が改めて私に感謝の気持ちを表してくれたけど、それは私も同じ。

 これから千年、二千年とこの世界が無くならない限り、私と旦那様は変わらず共に歩んでいく。

 もしそれを阻害しようとするものが現れたら、全力で排除する。たとえそれが同族であっても。

 そんな事を改めて決心したことだし、これからもどんどん家族を増やしていくわよ!


 これからも一緒に頑張っていこうね、だ・ん・な・さ・ま♡

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る