閑話:女神の独白5

 ・・・

 やってしまった。前回同じような事をしたのに、全く学習していなかった。しかも前回より酷い。

 これでも天界では最上位神で、情欲などという煩悩に支配されるなどあってはならないのだが...。

 い、言い訳をさせてもらうと、あの「何とか」という研究所?の中にいた人間の気配が大体10人ぐらいだったから、前のように理性が本能に負けるようなことはないと考えていたのだが、あそこにいる「野生動物」や「魔物」達の事がすっかり思考から抜け落ちてしまっていた。

 今思えば、ようやく私達の目的が達成されると思っていたので、その事で頭がいっぱいになってしまっていたのだろう。

 あの建物を消し去った後、暫く記憶がない。気が付いた時にはその...、で旦那様と「励んで」いたのだ。

 我に返った私は、急いで仮設住宅を建てて、中に入った。勿論旦那様も一緒に。

 中に入ってからも、体の火照りが治まらず、結局それから一日中「夫婦の営み」を行ってしまった。

 そのあと一日ぐらい記憶を失っていて、気が付いた時に横にいる旦那様と目が合った。

 流石にこんな節操がない淫乱嫁のことをさげすんでいるだろうと不安だったけど、そんな様子は一切なくいつくしむような目をして私を見ていてくれた。

 それで、私は今後このような節度がない行動をしないように心に固く誓った。

 え、だったらそんな事をしなければいいって?馬鹿じゃないの?私達は「新婚」なのよ?そんなことできるわけないじゃない!しっかり節度を守ってこれからも続けていくわよっ!!

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 私達がこの島で生活し始めて1年ぐらいたったかしら。大陸の方で神力が使われるのを感じた。何とか?って言った下位神の娘の力ではなく、もっと大きな力だったから多分天界の連中がに「対処」したんでしょう。思っていたよりかなり時間がかかったわね。

 そう旦那様に話したら、「いや、今までの事を考えたら1年は早いよ。」と言われた。

 う~ん、これは私達と人間の「時間感覚」の違いという事かな?実質的な寿命がない私達に比べて、人間は精々100年も生きれば長寿みたいだから、生きているという感覚もそれだけ早いのかもしれない。

 まあ、こっちの世界の事だし、いろいろ手続きとかあるんでしょう。分かんないけど。兎に角、これで「ことわり」の歪みは解消できそうね。

 それから少しして、どこから嗅ぎつけたのかこの島に人間が結構頻繁にやって来るようになった。

 目的は、恐らく私達。でなければこんな大海にポツンとある島に来るわけないから。

 大方、私達の力を当てにしてきたんでしょう。先日天界の連中が「対処」したことで【異世界召喚魔方陣】は無くなるわ、召喚した異世界人は居なくなるわ、後は恐らく異世界人から搾取した「過ぎた文明知識や道具」も綺麗さっぱり無くなったんじゃないかしら。私達にとってはどうでもいい事だけどね。

 この島は、新居を建てた時に私が侵入防止の結界を張ったので、人間程度の力では当然入ることはできない。

 多くの連中は諦めて引き上げていったんだけど、稀に強引に入ろうと色々な方法で攻撃してきたやつらがいた。お察しの通り例の教会の連中だけどね。

 尤も、連中の攻撃程度で私が張った結界を破ることなんて出来るわけないじゃない。私が旦那様の為に気合を入れて張った結界なんだから。あの耄碌爺この世界の創造神だってそう簡単には破れないわよ。それでも懲りずにやってきたので、いい加減鬱陶しくなって、纏めて「消滅」してやった。

 流石に前回までの失態を繰り返さないために、一度に消滅させるのを最大10人までにして、残りは時間をずらして対処した。こうすることでなんとか理性を保つことができた。やっぱり「一度」に消滅させる数によるのね。

 とはいえ、程度の差はあれど普段より気持ちが昂るのは一緒なので、その後はいつも以上に旦那様と「励んだ」けどね。

 そんなことを暫く続けていたら、流石に人間達もこの島に来なくなった。良かった良かった。もう来ないでね(にっこり)。

 そう言えば、耄碌爺で思い出したんだけど、ついこの間天界の大神...つまり私と同じ「最上位神」達が遊びに来たことがあったわね。

 この世界の創造神耄碌ジジイをはじめとして、他の世界の大神天界の愉快な仲間達がこぞって「暇だから様子を見に来た」とか抜かしていたわ。

 そんなお偉いさん最上位神たちが簡単に自分の世界現場から離れて大丈夫かと思うかもしれないけど、前にも言ったように私達位最上位神になると実際の仕事は部下たち上位神以下がやってくれるから、結構暇だから大丈夫なのよね。

 そんな訳で、連中は散々飲み食いして騒いで帰って行ったわ。旦那様は連中の相手をさせられて疲労困憊でぐったりしちゃったから、その日は「夫婦の営み」が出来なかったじゃない!まったくもう、二度と来るな!と言いたいけど、まあ、偶にはいいかもね。

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 あれから結構な年月が経った。大体100年くらいかしら?

 私達は今でも新婚気分。私達にとってこの位の年月は昨日位の感覚だからね。因みに旦那様は私の加護があるので、時間の経ち方が私達と同じになる。だから私も旦那様も見た目はほぼ変わっていない。

 私達が住んでいる島は、今まで通り私達夫婦と野生動物たちしかいない。動物たちはいつの間にかここの環境に適応しているようで、前より数が増えているみたい。相変わらず私達の傍には近寄ってこないけど。

 大陸の方だけど、以前私が所用で天界に戻った時に見たら、人間が大きく数を減らしていて少数派になっていた。まあ、今までその数の力に任せて好き放題やってきたんだから、因果応報よね。

 種族間のいざこざはあるみたいだけど、前みたいに一つの種族が幅を利かせることはなく、均衡しているみたい。この世界にとってはこれでいいのかもしれない。

 ・・・さて、今まで新婚生活を満喫してきたけど、そろそろに行こうかな、と思うようになった。

 身体自体はその「機能」があるから出来ると思うけど、どうなのかな?この世界に来てからほぼ欠かさず「夫婦の営み」をしているけど、そう言った兆候は全くなかったから、少し不安だけど、旦那様に話してみたら「そういう気持ちでしていなかったからできなかったかもしれない」と言っていたので、ちょっと意識してしてみようかな?

 ふふっ、何時になるか分からないけど、出来たらいいな。





 私達の子供たち♡

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 余談:

 主人公の体の中で封印中の「キーリオ・ディーモー」君ですが、彼はイリス天照大神の加護を受けていないため、「魂の寿命」が尽きてしまい、その魂は天界に昇ってしまいました。

 そのため、心身ともに「主人公」のものになったのです。

 因みに、この世界では「器」となる肉体と「本体」となる魂それぞれに「寿命」があり、殆どの場合は肉体より魂の方が寿命が短いため、魂の寿命が尽きると肉体も死を迎えます。寿命を迎えた魂は、天界に昇り「魂の部屋」に入ります。

 病気や戦争などにより肉体の方が先に死を迎えた場合、魂は一定期間現世にとどまった後、寿命を迎えた魂と同じく天界の「魂の部屋」に入ります。

 魂が現世に留まっている状態で、器となる肉体が「無傷」の場合に「蘇生魔術」を使うと蘇生することができます。

「魂の部屋」に入った魂は、管理神上位神により生前の行いを審査され、罪の重さによって処遇が決まります。一番重い罪の場合は、その魂がことになる「消滅」となります。

 なお、イリスが使っている「消滅」は、最上位神専用の特異技能ユニークスキルで、その場で肉体ごと魂を「消滅」させることができるのです。

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