第26話:魔物と教会
俺達は、唯一接舷できる場所に船を泊め、気配を消して上陸した。
「どう、近くに不審な気配はある?」
辺りの様子を窺っていたイリスに声を掛けると、
「・・・今の所ないわね。少し遠くに動物の気配がするぐらいかしら。」
と答えた。
「それにしても、ご丁寧に道まで整備されているなんて、間違いなく人がいるね。」
海岸から島の奥へ続く整備された道を見ながら、俺はそんな感想を言った。
「そうね。道に沿って動物除けの柵まであるから、ここに居る人間って余り戦闘能力はないのかもしれないわ。」
俺達はこの島の住民が作ったと思われる道に沿って奥に歩いて行った。
暫く道沿いに歩いて行くと、四角い建物が見えてきて、門の所に警備員が立っていた。
「警備員がいるという事は、何か重要なものがあるってことかな。」
「それか、見られては困るものをやっているかね。」
まあ、そうだろうな。
「それで、これからどうする?」
俺がイリスに聞くと、彼女は悪戯っぽい笑みを見せた。
「そうね、話しが通じる連中とは思わないから、ここは『実力行使』と行きましょう。どっちにしても、ここから『出て行って』もらうことには変わりないから。」
「そうだね。結果が一緒なら手っ取り早い方がいいからね。」
方針が決まったので、俺達はあえて警備員の視界に入る場所に出た。
「!!何者だっ!ここが教会直轄の『魔物開発研究所』だぞ!?部外者は立ち去れ!!」
当然の如く、警備員は持っていた槍をこちらに向けて警告してきた。
「あら、ご丁寧に所属と『何をやっている施設』かを教えてくれるなんて、優しいのかそこまで考えが回らないクルクルパーなのかしら?」
槍先を向けられているイリスが、珍しく警備員たちを
「何だとっ!!」
「おい、お前【エルフ】だな。【亜人】は無条件で【粛清】する決まりだから、そこの男共々『処理』するぞ。」
「へっへっへっ、そうだな。ここのところ暇だったからちょうどいいや。」
そんな下衆の表情をしながらこちらに近付こうとした警備員たちだが、何故か転倒した。
「っ、何で転んだんだ...!!?」
不思議に思った警備員たちが自分の足元を見ると、足が徐々に消えて行っているではないか。
「やっぱりクルクルパーだったのね。何で『わざわざ』見つかるようなことをしたのか考えが及ばなかったみたいだし。まあ、旦那様に敵意を向けた段階で『処分』するのは決定していたから、さっさと『消えなさい』。」
イリスが無表情でそう言っている間に、警備員たちは徐々に消えていき、やがて完全に「消滅」した。
「・・・こいつらの様子から、中の連中の程度も知れているわね。いっそのことこの建物ごと消しちゃおうか?」
イリスが相変わらず無表情で物凄いな事を言っているが、特に反対する理由はないから、俺はイリスを見ながらこう答えた。
「いいんじゃないの?一々相手にするのも面倒くさいから、イリスがいいならそうしたらいいと思うよ。」
すると、イリスは「にっこり」と笑って建物に向かって手を突き出した。
すると、手から眩い光が溢れ出し、建物を包むと一瞬で「消滅」した。
その光景に、流石の俺も呆然とした。分かっていたつもりだったけど想像を軽く超える強さだな。
「はあ...、はあ...、はあぁ...。」
そんな事を考えながら、ふとイリスの方を見ると、胸を押さえて息を荒げている。
「ど、どうしたんですか天照様!?まさか、今の技は最上位神でも負担が大きいとか...?」
俺が慌てて駆け寄ると、イリスは苦しそうな表情でこちらを見た。
・・・あれ、なんでそんな艶っぽい目をして見つめているのかな?あと、呼吸は荒いけど顔が紅潮しているし、足が小刻みに震えてる。
・・・あ、もしかしてもしかすると、もしかするかも。
そう思ったとき、イリスは突然俺に襲い掛かってきてあっという間に着ている服をひん剥かれた。
イリスに押し倒された格好になっている俺に、彼女はつらそうな表情をして、
「・・・ごめんね旦那様。もう無理...♡」
と言って、
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2日後、俺は「仮設住宅」の中で目を覚ました。
イリスが俺に襲い掛かってきて暫くは物凄く【
どうやら、励み過ぎて今まで「気絶」していたようだ。
その間特に襲撃があった形跡はない。恐らくイリスが「無意識」に周りを威圧していたらしいので、近づいてこれなかったみたいだ。
隣では、イリスが物凄く幸せそうな顔をして眠っている。
それにしても、
そんな事を考えていると、ふと視線を感じたのでそちらを見ると、顔を真っ赤にしてもじもじしながら上目遣いで俺を見ているイリスがいた。
あー、相変わらずなんて可愛いんだ、
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「確かあの
「でしょうね。多分ここだけじゃなくて、あちこちに同じようなものがあるんだと思うわ。でなければ、今この世界にいる【魔物】の数が合わないもの。」
俺たちが目覚めた翌日、仮設住宅を元に戻したイリスと元「魔物開発研究所」があった場所でそんな事を話していた。
どうやら、この島に大陸中のいろいろな動物を集めてきて、魔物に適した種族を研究していたみたいだ。イリスがこの島全体の【生体探査】を行った結果、この島の環境には不適合な種族が結構な数居たみたいだから。
だからと言って、他の研究所を「処分」しようとは考えていない。別にそんな事をする義理も責任もないからな。
「で、丁度ここが更地になったから、ここに家を建てようか。」
「そうね、ここって水場もあるし、そこそこ開けているから安住の地にするのにちょうどいいわね。」
そういう事で、一旦仮設住宅に入って大きさや間取り、その他諸々の事を話し合った。
何せ、これから居を構える場所だからな。お互い納得する家にしないと後悔するからな。
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翌日、話し合いの結果決まった家を建てることになった。
別にイリスだけでもできるんだが、「旦那様も手伝って。二人の【愛の巣】なんだから♡」と言って聞かなかったので、俺も「形式上」手伝った。
そんな感じで建てた家は、ほぼ仮設住宅と同じ大きさで、間取りもほぼ同じ。
イリス曰く「結局やること変わらないから、大きさも間取りも同じでいいんじゃない?」という事で、俺も同じ意見だったのでそう決まった。
ただ、仮設住宅との違いは「元に戻さない」ということ。ここに定住するわけだから、わざわざ元に戻す必要なくね?と、そういう事だ。
家を建てた後、暫く新居の様子を確認して、この島に接岸できる唯一の場所を塞いだ。今までのように大陸に行く用事はないし、あったとしても瞬間移動で行けるので問題はない。
それより、この島に人が入ってこないようにすることの方が大事なので、外部からの侵入手段を失くした方がいい。
そう言った理由で、海岸からここまで続いていた道も綺麗さっぱりなくした。
そんな訳で、完全に外界から隔離されたこの島で、漸く念願の新婚生活が始まる。
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