閑話:女神の独白4
・・・まさか、こんなところで「同族」に会うなんて。
私達がこの国の国境線を抜けて一先ず身を隠していた時、検問所で止められている人族の小娘がいた。その娘ががなんと私と「同族」だった。
何故「同族」と分かったかというと、私と同じ「神力」を感じたから。
何時もだったら関わることはしないんだけど、流石に同族となると干渉しないわけにはいかない。
私は旦那様にあの娘を助けてくれるようにお願いした。最初はびっくりしていたけれど、すぐ了解してくれた。
私が警備兵の時間を「止めて」いる間、旦那様は見事あの娘を連れてきてくれた。
ということで、ここに居るのは拙いからさっさとこの場を離れた。
暫く走っていると、身を隠せる
とりあえず何かごちゃごちゃ言っていたあの娘...「ヒトリ」だったっけ?
それにしても、最初に会った時から気になっていたんだけど、この娘の神力が異様に少ない。何をすればこんなに消費するんだろう。
確認してみようと思った私は、旦那様に断りを入れて天界に戻った。
天界に着いて、先ずはこの世界の創造神の所に聞きに行った。結果としては「何にも」情報が得られなかった。何でも、世界を創ったけどその後は部下に丸投げして放ったらかしにしていたみたい。まあ、あの
そんな訳で、私は現在この世界を管理している連中の所に行った。私が現れると、皆びっくりして何故か土下座してきた。
いやいや、別に
私はそう
で、ここの管理神の一人に事情を説明したら、彼女は大慌てで資料を集めてきた。
別にそんなに慌てなくてもいいんだけど、まあ本人が気にしていないんだったらいっか。
それで、話を聞くとどうやら例の教会が無断で「異世界召喚魔方陣」を使っているらしく、それに例の娘の神力が使われていたらしい。
なるほど、だからあんなに神力が減っていたのね。
・・・ん?そもそも何で
その辺を聞いてみると、どうもあの国、というかあの教会が出来る遥か昔に「異世界召喚」を行ったらしく、その時に使った魔方陣を撤去し忘れたようで、それをアイツらが「たまたま」発見して「偶然」発動させたらしい。
それで、味を占めたアイツらは頻繁に異世界召喚を行っていたみたいね。
ただアイツらは魔方陣の発動に「神力」が必要な事は気付いていないらしい。
まあいいわ。それは兎も角、
もし私の世界でそんな事を起こしたら、関係者全員降格処分、責任者は下位神に降格させて再教育、悪質な場合は
残してきた魔方陣は即撤去、召喚された者たちは全員元の世界に強制送還。
そして何か影響が出ていないか緊急調査して、もし不都合がある場合は原因を特定して排除。
その後に私も最高責任者として給金全額返上の上で
それ位重大な事なのにまさか「撤去し忘れ」て、
その辺を尋ねたところ、管理神たちは全員土下座して滝のように冷や汗をかきながらひたすら謝っていた。
・・・はぁ~。全く呆れてものが言えないわ。とりあえずこのことは
とりあえず状況は分かったから、旦那様の元に戻るとしましょう。勿論、その前にあの耄碌爺に報告して、しっかり説教してきた。
旦那様の元に戻ると、ほどなくしてあの娘が目を覚ましたので、私の神力を分けてあげた。
その後、私の存在に気が付いた娘は恐縮していた。「別にそんなに怯えなくてもいいのに」と言ったんだけど、旦那様から「これが普通」と言われたので、そんなもんなのね、と思った。
あと、この娘が旦那様の事を「
それから、この娘があんなところにいた経緯を聞いたところ、何でも「神託」があったらしく、それを不審に思った教会の教皇がこの娘に封書を渡してエルフたちの所に向かわせたそうだ。
私はその「神託」の内容が気になったので、この娘に聞いてみたけど知らされていないみたいだった。
封書に書かれているそうなので、彼女にお願いしてその封書を見せてもらった。
当然封は開いていない。だけど内容は分かった。
うん、確かにおかしい。こんな「具体的な事」を
私はそのことを確認するために、再び天界に戻った。
私はさっきまでいた管理神たちの職場に向かって、「神託」の担当者に確認をした。
彼女たちは私の姿を見ると酷く怯えていたけど、私の知ったことではない。全ては「身から出た
その担当者が履歴を調べているとき、ふと下界の様子が気になったので見てみると、例の教会で「教皇」と言われていた娘が「聖女」と呼ばれた女から袋叩きにされていた。
聞き耳を立ててみると、どうやら「聖女」とかいう女の
それから兵隊たちが止めに入り、「勇者」と呼ばれるものがその場を収めた。
・・・ふぅ~ん、あれが「異世界召喚」された者達ね。とりあえず「聖女」については
そんなことを思っていると、担当者が調査結果を教えてくれた。
どうやら、最新の神託は結構前、具体的には「8年3か月前」だそうだ。
成程、な~んか胡散臭い話になってきたわね。早速戻って旦那様と話をしましょうかね。
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天界で聞いたことを旦那様に話して、とりあえず下位神のこの娘はこの国から出してあげて、エルフたちがいるところに向かわせた。
その後、私達は南に向かって移動した。
今日の目的地に着いて、仮設住宅で旦那様と
しまった、隠匿魔法でこの家を隠すの忘れてた...。
私が落ち込んでいると、旦那様が慰めてくれた。嬉しい。
それから、旦那様がこの国の人間と思われる連中と交渉していると、「この連中を鑑定してくれる?」とお願いされた。
私は隠れているので、直接は無理だけど間接的にはできることを旦那様に伝えたら、「それでいい」と言ってくれたので旦那様の「眼」を通して鑑定をした。
鑑定の結果を踏まえて、私達は連中に「罠」を仕掛けた。
その夜、見事に罠にかかった
正体がバレた奴は最終的に自爆しちゃったけど、旦那様に悪意どころか殺意を向けたことの罰として、綺麗さっぱり「消滅」させてやった。
本当のことを言えば、この程度では私の気持ちが収まらないんだけど、今回は仕方がない。次の機会にこの
コイツの頭の中を覗いてしっかり情報も入手したことだしね。
それにしても残ったこの二人、この国の王女と兵隊みたいだけど、どうやらお互い好き合っているみたいね。
だから、兵隊の男が残って時間を稼ぐといったときには「コイツ馬鹿なの?」と呆れた。
それから二人が言い合っているのを聞いていて、だんだんイライラしてきた私は二人纏めて
この後勝手に決めたことを旦那様に謝ったけど、許してくれた。ありがとう旦那様。
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無事護衛を終えた私達は、
何こいつら、自分たちでなんとかしようと考えずに誰かに頼ってばっかりじゃない。この国の連中ってこんなのばっかりなの?
その事を旦那様に言ったら「そこまで考えが回らない連中」と答えてくれた。なるほど。
その後、何だか旦那様がつらそうな顔をした。どうやら前世の事を思い出していたみたい。
私は旦那様の手を握ると、こちらを向いて安心した顔をしてくれた。
まだまだ旦那様の心の傷は深いみたい。私は旦那様の心の傷が癒えるまでずっと
私にとって旦那様以外の連中なんて、正直どうでもいい。特にこんな他人に依存する「だけ」の者たちなんて、どうなろうと知ったことではない。
とか思っていたら、王女からこいつらの護衛を依頼された。
向かう方角は同じだから、受けてあげてもいいんだけれど、何だか「依存」されそうだから嫌なのよね~。
私が悩んでいると、旦那様が目配せしてきたので、仕方なく受けることにした。
その後、旦那様が私の姿を気にしてくれていると、それを聞いた王女が懐から取り出したのが何の変哲もない「首飾り」。実はこれ、何と人間の姿に擬態できる代物だった。
これがあれば隠れて移動しなくても済む。私と旦那様は報酬をその首飾りにしてくれるようお願いした。別にお金は必要ないし、人間の国の地位なんて邪魔なだけだからいらない。
それにしても、連中はこれで「全て」解決すると思っているみたいだけど、そんな訳ないでしょ。本当、この連中って楽観主義というか頭の中お花畑なのね。
まあ、依頼を達成したら関係なくなるから、どうでもいいけどね。
はぁ~、それにしても昨晩から「夫婦の営み」をしていないから、欲求不満になってきちゃった。さっさと依頼を片付けて元の新婚生活に戻らなきゃ。
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