二章
第8話:大人と子供
ならず者たちの砦を攻略した翌日。
俺たちは、砦があった場所から北に行った山脈の
そこでイリスが用意してくれた仮設住宅のベッドの上で、俺たちは「ぶっ倒れて」いた。
「・・・やり過ぎた...。」
「・・・もう、動けない...。」
俺とイリスは、ベッドの上で「生まれたままの姿」の状態でそう呟いた。
思い起こすと昨日、ならず者たちを「処分」して移動していると、突然イリスが俺の手を引っ張って走り出した。
それから走ること半日、俺たちが今居る北の山脈の麓にたどり着くと、イリスはいつもより慌てた感じで仮設住宅を造り上げると、俺を家に引っ張り込んだ。
家に入ったと同時に、イリスは急いで扉の鍵を掛けたかと思ったら、いきなり抱き着いてキスをしてきた。
「旦那様...、もう限界...♡」
そう耳元で
今思うと、どうやら初めての「対人戦闘」をしたことによる気持ちの
で、いつも以上に「励んだ」結果が今の状態である。
「・・・話で聞いたことはあったけど、本当に『腰が抜ける』ことがあるのね...。」
そんなことをイリスが呟くと、俺も、
「・・・『搾り取られる』というのを、初めて体験した...。」
と言ったら、イリスは先ほどまでの自身の行いを思い出したようで、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。うん、やっぱり可愛いな、
ちなみに、「太陽神の加護」で疲れないはずなのに、何故こんな状態になっているかというと、どうやら「心地よい疲労」に対しては加護が働かないようだ。まあ、加護を授ける「当人」が「そういう状態」を「疲労」と考えていないからだと思う。
「・・・今日はこのまま『ダラダラ』しようか。」
「さんせぇ~い...。」
そう言うと、俺たちはベッドの中で乳繰り合いながら一日を過ごした。
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明くる日、調子が戻った俺たちは、行動を開始した。
「ところで、ここどこなの?」
俺が仮設住宅を「元の状態」に戻しているイリスに尋ねると、彼女は困ったような顔をしてこう答えた。
「う~ん、北の山脈の麓ってことは分かるんだけど、具体的にどこって言われると...、う~ん?」
分かんないのね。
「まあ、『あの時』のイリスはそんな余裕なかったから、仕方ないか。」
と、俺が言うとイリスは一昨日の事を思い出したようで、エルフ特有の尖った耳を先端まで真っ赤にして、言葉にならない声を出しながら俺の胸をポカポカと叩いた。あーもうっ、なんて可愛いんだ
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「・・・・・・・・」
イリスが目を閉じて意識を上空に飛ばして、この辺りの状況を確認している。
「・・・お待たせ。」
イリスが目を開けて、俺に向かってそう言った。
「で、どんな感じ?」
俺がそう聞くと、イリスは今確認したものを話してくれた。
それによると、ここは大森林の北東に当たる北の山脈の麓で、東の山裾には集落があり、平地は荒野が広がっていて、集落が点在しているそうだ。
「なるほどね。ちなみに、その集落の種族は分かる?」
俺の質問に、イリスは「うーん」と考えて、
「そこまで見えなかったわね。ただ、この前のエルフたちからの情報だと、この辺りには『ドワーフ』と『ハーフリング』が住んでいるらしいわ。」
「・・・えーっと、『ドワーフ』は何となく分かるけど、『ハーフリング』って何?」
俺が昔見たアニメでは、「エルフ」と一緒に「ドワーフ」が出てきていたので、種族としては知っているけど、「ハーフリング」は初耳だ。
「『ハーフリング』って、大人でも子供みたいな体格をしているのよ。その体格のおかげで、『斥候』とかそういう『隠密系』が得意みたいね。」
「へー。」
「あと、『
成程ね~。「ハーフリング」という種族は、その特性で人族からの迫害を事前に察知して回避しているんだろうな。
「多分、山裾に暮らしているのが『ドワーフ』で、平地に住んでいるのが『ハーフリング』だと思うわ。」
「ふーん。それで、どっちの集落に行こうか?『どっちにも行かない』もありだけど。」
俺は、イリスの情報をもとに、これからの行き先を提案した。
「そうねぇ~、『どっちにも行かない』が一番いいんだけど、まだこの世界の情報が必要だから、どっちかに行かないといけないわね。」
「それじゃあ、どっちにする?」
「う~ん、私が
とイリスが答えた。
へぇ~、「エルフ」と「ドワーフ」って仲悪いんだ~。だったら、「ハーフリング」の集落一択だな。今の天照様は「ハイエルフ」の姿をしているから。
そんな訳で、俺たちはここからさらに東にある「ハーフリング」の集落に向けて歩き出した。今回は腕を組んではいないが、手は繋いでいる。勿論「恋人繋ぎ」で。
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荒野を歩くこと半日、遠目でハーフリングの集落と思われる建物を確認できる場所まで来たところで、イリスがふと立ち止まった。
「どうしたの?」
俺がそう聞くと、イリスは周りを確認しながら、こう言った。
「・・・どうやら、『監視』されているみたいね。」
監視、か。さっきイリスが言っていた「ハーフリングは『斥候』が得意」と言っていたから、近づいてくる俺たちを警戒して偵察しているんだろう。
しかし、流石は天照様。俺はそんな気配を全く感じなかったからな。
「『敵意』は感じないけど、『警戒』はしているみたいね。」
俺が感心していると、イリスが俺に向かってそう言ってきた。
「それって、俺が『人族』だからかな?」
そう聞くと、イリスは周りを見ながら、こう答えた。
「それもあるかもしれないけど、
「だから、『警戒』というより『困惑』している感じかしら。」
そうか、普通だったら「
すると、イリスが「何もない場所」に向かって語りかけた。
「アンタ達も気付いているかもしれないけど、私はアンタ達の気配を察知しているわ。」
「警戒しなくてもいいわよ?私達はアンタ達に敵対するつもりはないから。見て、丸腰でしょ?」
「私の隣にいるのは夫。私達は夫婦で世界を巡る旅をしているの。夫は『人族』だけど『キトナムフロボン』の連中と違って『人族が一番偉い』という
「まあ、そんなことを言ってもにわかには信じられないと思うから、姿を見せてくれとは言わないので、せめて話位はさせてくれないかしら?」
そう言って、イリスは頭を下げた。俺もそれに倣って頭を下げる。
すると、「何もない場所」から声が聞こえた。
「・・・本当に、我々に危害を加えないのか?」
「ええ。『
「・・・そっちの『人族』もか?」
そう聞いてきたので、俺は、
「勿論だ。もし俺が危害を加えるような素振りを『少しでも』見せたら、遠慮なく殺してくれ。」
そう答えた。俺の言ったことにイリスが「ぴくっ」と反応したが、変わらず頭を下げている。
・・・暫く静寂が続いた後、ふと「人の気配」がしたので頭をあげると、そこには2人の「子供」が立っていた。
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