五分の遅刻②
当日の朝、私は五分遅刻した。
当時の私からしたら、たったの五分。
だけど彼にとってはたったではなかったらしい。
それが理由で終始彼は不機嫌に見えた。
あからさまに嫌な態度を取られたらこっちだっていい気はしない。
私も野外活動中は終始不機嫌だった。
私は彼が私が遅刻してきたことに腹を立てているのだろうと信じて疑わなかった。
だが、その思い込みはその日のうちに解消させることになる。
帰りの電車は偶然にも彼と一緒の方向だった。
きまずいなぁ、と思いつつ彼とは少し間を開けてホームで電車を待つ。
あと五分で電車が来る。それまでの辛抱だ。そういえば私が遅刻した時間といっしょだ。
などと考えていたら彼の方から話しかけてきた。
「今日はごめん。嫌な態度だったと思う」
ストレートな謝罪。遅刻したことに嫌味でも言われるかと思った自分が恥ずかしい。
「ううん。私の方こそ遅刻してごめん」
私も素直に謝る。実際に遅刻をしたのは私なのだから。
「だとしても1日中引きずるのはちがうと思ったんだ」
「でも原因は私だし」
このままではお互い永遠に謝罪を繰り返してしまいそうだ。
「もうごめんなさいは無しにしよ。私も遅刻しないようにするからさ」
「わかった」
そのあとは電車が来るまで2人でくだらない話をした。今日はどうだっただの。宿題はどのくらい終わっただの。
あたりさわりのない高校生の会話だった。だけど彼との会話はとても楽しかった。
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