epC.君色の空模様

# Ⅶ ほしはもどる。

「ゆかりーっ!」

「一緒に‥帰ろっ!」

わっ!と後ろから優香里の肩へ飛びつく


優香里はすこし肩をびくっとさせたが、こちらを振り返らずに荷物をまとめる


「ええっ?!無視!?それはないでしょー」


「ゆかりちゃーん?ゆかーりーさんー?」

優香里の周りをぐるぐるしたり、覗き込んだりして会話を試みるが、全て絶対に目が合わなかった



作戦を変えて、くじらと会話していた瑠奈の方へ駆け寄る

「うわぁ〜瑠奈〜!優香里が無視するよ〜」



「ええっ?優香里ちゃんが!?」

瑠奈は優香里を見ると、普段とは想像のつかない彼女の様子に困惑した表情を浮かべる




わざとらしく嘘泣きでもするか


「うわぁ〜ん!優香里が無視するから、俺のイケメンフェイスが涙で台無しになっちゃうよ〜!しくしく…」




「ど…どうしたの優香里ちゃん?なにか良くないものでも食べたの?」

瑠奈が優香里の背中をさすりながら優しく宥める



「…が……たの。」


「柊雨くんが抜けがけしたの!!!!!」




って!人聞きが悪いなぁ!」

「俺はただ、くじらとひと時の空間を共にすごしただけだよーっ」



「それってもうでしょ!もうっ!抜けがけガチ恋製造機!!異性同性たぶらかし男!!世界遺産顔面兵器!!!」

いつに増して巨大な声で不思議な単語をつらづらと並べる

投げやりに叫ぶ彼女の目には、人間の様々な感情を伺うことが出来る


いつのまにか俺の変なあだ名が増えているのは、全て彼女の仕業であると俺は直ぐに悟った



「ちょっと優香里ちゃん落ち着いて!?くじらちゃんが…」



「優香里ちゃn……優香里さん??」

先程まで会話を傍聴していたくじらが口を開く



「くじらちゃん!!柊雨とデートしてたでしょ!僕を置いて2人でいちゃつかないでって!言ったよねぇ!?!?!」




「別にデートと言っても恋人じゃないし、何もなかったよ。ね、くじら?」



「…う……うん…//そう…ですね///」

くじらは口元に手を当て、目を逸らし、頬を赤らめる



「絶対何かあったときの言い方だったよ!!!???」


「くじら!?まさか俺を裏切るの!?」



「ふふ…本当のことを言ったまで、でしょっ?」

目を狐のように細め、口角を上げる彼女


間違いない…!悪戯をする時の表情かおだ…!



「ねぇ何があったの〜!!!!!教えてくれるまで僕、柊雨くんと口聞かない!!!」



拗ねる生徒会長、泣くイケメン(仮)、弄ぶ一般人(のふりをする人魚)

この場をなんとかするのはもう、瑠奈しかいない!!


「(る な た す け て)」

口パクで瑠奈に助けを求めるが、瑠奈はぼうっとどこかを見つめている


これ…話聞いてないやつだよね?!



「じゃあさ!優香里、今日の帰り…どっかに寄ってこうか」



「ええっ!!!!!!!ほんとに!??!?!?!!?!」



「優香里ちゃん、声が大きいですよ」



「やったやったやったぁあああ!!!!!」

「じゃあ僕もう帰るね!!!柊雨くん行くよ!!」

優香里はすぐに柊雨の腕を掴み、教室の外へ駆け出す


「おわっ!くじらー、るなー、じゃあね〜」


「…えっ!?…またね〜?」「頑張ってね柊雨くん!」




下駄箱までほとんど引きずられたことが、二人にバレないといいな…



✧︎  ✧︎  ✧︎



「んへへっ」

「これで僕とも抜けがけ同盟だねっ!!!!」


さっきまで“抜けがけ”という言葉をあれだけ嫌っていたというのに、誇らしげに太陽のように笑う彼女


「あはっ!優香里は行きたいとこある?」


「ん〜…あ!!!僕、ス○バの新作が飲みたい!!!!!」


「スタ○の新作!いいねそれ〜」



2人で店舗の方へとゆっくり歩いていく



「温かいラテと、冷たいフラペチーノ、どっちにする?」


「うわぁ〜!!迷うね!!どっちも美味しそう!」

暫く熟考し始める優香里


「よし!フラペチーノにする!!」


「じゃあ俺注文してくるから、席の方で待ってて」


「ありがとう!柊雨くん!」

優香里はパタパタと早足で2階席の方へ行く



☆  ☆



「空、曇ってきたなー…」



「おまたせ。これ優香里のね」

彼はミルクとほうじ茶が遊泳する透明なカップを少女の方へそっと置く


「おいしそう〜!!柊雨くんは何にしたの?」


少女は目線を冷たい飲み物から柊雨の方へと切り替える



「ん…飲んでみる〜?」

温かいカップから口を離して優香里のことを見つめる


「え…。…え!!!うん、飲む!!!」


「はいっ、どうぞ」と先程まで自分が口をつけていたはずのカップを渡す


優香里は受け取ると、覚悟を決めて1口。

「美味しい…!!!!」

まろやかなミルクとほんのり苦いお茶の香り。

凍えるような外の空気と真逆なラテの温度に舌が火傷をする


「ふふふ…。ねぇ、優香里のも飲んでいい?」


「もちろん!!飲み過ぎたら耳つねるからね??!」


「やめてよ!俺のふわふわキュートな耳に穴が空いちゃう!」


「えへっ!!」

「それはそうと、やっぱり美味しいものを友達と食べるっていいね!!」


「うん。そうだね、優香里と一緒だからこその美味しさ…ってゆうか楽しさがあるよね」


「あ!!!外雨降ってきちゃったー!!」




「うわぁ…ほんとだ」


「じゃあ、今日は雨が止むまで俺と一緒に話すしかないねっ」

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