epB.宇宙を舞う星々

# Ⅹ slow life

▶ゆっくりとした生活

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ピコピコ



寮のテレビ画面でゲームを夢中にやる、瑠璃色の耳が揺れる




ピコピコ




『  GAME OVER  』


大きな画面に黒掛かった背景と白色の文字で表示されたそれは、ゲームをする者への挑発を意味するのだ




「…あ゙。また負けた…」


少年はまるで小さな子供が拗ねる時のように、丸く澄んだ瞳を細めた



「あれ、柊雨先輩ってゲームするんだ」

たまたま居合わせた人間が後ろから声をかけた



「ん〜?その声は透亜かな?」

先程までの機嫌の悪いような、悔しいような声色とは違って優しい口調で柊雨は言った



「せいかーい」と透亜は早歩きで柊雨のもとへ駆け寄る


「…なんのゲーム?」




「かもんぬどうぶつの森ってやつだよ」




「それって穏やかほんわかのんびり系のシリーズだったよね。負けることってある?」

「とゆうか新作?かもんぬってダサ…」

透亜は目の前のテレビ画面に嫌そうな表情を見せた




「実は昨日出たばっかりなんだよね。すごいハマっちゃって…」

昨日も今日も既に3時間はプレイしてしまっているという事実は隠しておこう…



「ちょっと貸してくれますか」



「いいよ!はい。」



ピコピコ











テレレーッ




『  CLEAR  』



「え、まじでクリアとかあるんだ」


適当にボタンを押していたらクリアしてしまった


画面には花火が上がり、エンドロールが流れている



柊雨は手をカウンターに載せ、身を乗り出す



「う、、そ、、、嘘!?俺を置いて先にクリアしちゃうの!?」



「えぇ、、、。まぁ、才能かな!」

透亜はキラッとダイヤが輝くような笑顔を見せた



「…うぐ」


柊雨は特別ゲームが上手い訳ではなかったからか透亜の才能は本物なのだろう、と肯定するしかなかった







寮内が盛り上がっているとき、小さく扉をノックする音が聞こえた


先程までの騒がしさはにわかに落ち着き、いつもの寮の雰囲気に戻る


扉を開くとそこにね2人の人間が待っていた



「あ、どうも。透亜さん、今いますか?」


「柊雨先輩だ!こんにちは!!」



「透亜ならすぐ後ろの部屋に…」

振り返ろうとすると、後ろから人間がひょこっと体を出し客人を見た


客人が誰なのかを理解すると、すぐに柊雨の前へ出てきた



「音猫?それに、つきみも…?」



「わ!透亜のゲー友?うちの透亜がお世話になってます」

まるで母のように、音猫たちを前にペコペコ浅く挨拶をする



少し恥ずかしくなって、透亜はむすっとした


「やめてよ親みたい」



「突然なんですけど、お宅の透亜さん借りますね」



「あ、それってもしかして秘密会議みたいな!?」




柊雨は知っていた。放課後に少しずつ人を集めて会議をする1年生たちの様子を


そして、それが誰かに見つからないようにしていることも



「えええっ!?そそそんなことななななないですよ絶対に!…他の1年生も集めて秘密の話をしてるなんて、、絶対にないです!」



明らかに動揺するつきみに一同はにこりとする




「つきみ…」

これはつきみを連れていても連れていなくても、いつかバレることだった。そう頭に言い聞かせた




「あはっ!最近1年生たちが集まってこっそり会議してるから、なんか面白くって見ちゃうんだよね」


制服が少し着崩れた制服で口元を手で覆った

その様子は、かわいい女の子がする仕草であって、イケメンの柊雨がすると、その効果は倍増するのだろう



続けて少年はつきみに顔を寄せる


「やるならもっと上手くこなさないと、すぐばれちゃうよ〜。サプライズ計画のこと」


人差し指を唇に添え、妖艶に微笑む柊雨を誰もがこう思っただろう



めちゃくちゃあざとい。



「っ…」


言葉が詰まる



「俺も聞いちゃ行けない内容なの?それって…」


幸いにも、柊雨はそのサプライズ計画の対象ターゲットではなかった


「えっと、柊雨先輩には…優しく見守ってほしいかも…」


「これは自分たちでやるって決めたんです」



柊雨は少し…いや、かなり予測がついていた


そして、ここは後輩の背中を持つべきだとわかった



「ふふ、応援してるよ」



扉をくぐり後輩たちはどこかへ向かって行った







少年は誰にも聞こえないように小さくつぶやいた


「    いってらっしゃい   」

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【Side story】煌く星の隂【代理学園】 水瀬 @minase_syu02

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