epA.氷柱を覗く

# Ⅷ zero gravity

▶︎無重力

______


♦︎only talking_



「はぁ」


「なにしてんの?」


「俺がイケメンすぎてため息ついてたところ」


「心配して話かけたボクが馬鹿だったみたいだ」

「それで、本当は?」


「…え」


「ほ、ん、ね。自惚れのため、わざわざ人目のつかないところに行かないでしょ」


「……もし…、もし叩かれてる人間をみたら…天城はどうする」


「天城ね。ボクはもちろん止めるよ」


「それが自業自得でも?」


「うん。それが教師として最善の行動だから」


「教師として、か。じゃあ俺は怪物として、何をしたらいいの」

「…何か喋ってよ」


「君は怪物じゃない」


「でも人間でもない」


「そうかもしれない。なんか哲学みたいになってきた、ボクそうゆう学科やってないからなぁー」


「…あましろ」


「先生」


「人間怖い」


「先生も怖い」


「なんで?」


「みんなそうだからだよ」

「恐怖が無い奴はいない。みんな経験してるからこそ、共感できるんだ」


「ちょっと先生っぽくなった」


「ボクは常に先生だよ?!」

「…あははっ!勇気、努力、知恵。」


「急にどうしたの、怖いよ」


「生きる上で大切なこと。あとほんの少しの同情。」

「君はもうほとんど揃ってるみたいだけど、どうしてそんな顔をするの?」


「俺よりももっと優しくて、強くて、賢い人間がいた」


「そりょあそうでしょ。だいたい君は人間じゃないから、君より長けている人はいくらでもいるさ」

「人間の真似をしても、原点に帰れば君は…」


「…そうだよね」


「“残念な人間よりも優sっ…優しい君の方がボクは好きだな”」


「いま噛んだよね」


「うるさい!ほら、早く教室もどるよ」


「ありがと、夜桜。」


「えっ、ボクそんな名前じゃないんだけど」


「えっ、僕いまなんて___..」


「もしかして夜桜ってあの…」

「名字が意外と珍しくていまでもわりと鮮明に覚えてる」


「先生知ってるの?!」


「…今日はもう帰っていいよ」

「担任とかにはボクが伝えておく」


「…ありが、とう?」


「その…。あんま気にするなって言うのもあれだけど、忘れることも一つの賢い選択だと思うよ」

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