第7話 奇病の罹患者

「お嬢様大変です!クレイガーさんが!」

検品中にイザベラがそう叫びながら出品物保管庫に飛び込んできた。あーやっぱり。


「またあの奇病だそうです!ああ神様!」

イザベラは震えながらそう叫んで円字を切った。


「落ち着いてイザベラ」

シャルロッテは膝を折り、震えながら祈りを捧げているイザベラの肩に手をやった。


「なんという事でしょう」

執事のデルスもそう言った。


「症状はどうなの?」

シャルロッテはイザベラにそう訊いた。


「やはり相当な重症だそうです!ああ!何故私達の親しい人たちばかりが!」

イザベラはそう絶叫した。


つい数か月程前からこの地域全体に謎の奇病が蔓延していた。全く前兆がなくある朝突然、気が付いたらひどく衰弱しているというのだ。家人が居ればまだいいのだが、独り者の場合は誰もそれに気が付かずに衰弱死することもままあるという。


「もう知り合いだけで三人目ですよ!」

イザベラはそう絶叫した。


「ユーレフ様のようにならねばよいのですが」

デルスは痛ましそうにそう言った。


「デルス、ここをお願いしていい?」

シャルロッテはそう言ってエプロンを外した。


「どちらへ?」

デルスはそう問うてきた。


「アラン……リンドバーグ準男爵をお見舞いに」

シャルロッテはそう言って保管庫を後にした。


シャルロッテにはある予感があった。あの女がやっているのは間違いないにしても、それは新しい犠牲者の目星がついた時、それまでの犠牲者は標的から解除されるのではないか?と。根拠はないがそう思うと居ても立っても居られなかった。

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