第4話

 本当は分かっていた。

 侵略者の存在は突然だった。そう、それはまるで幻であるかのように、急に僕らの生活に入り込んできたのだ。

 「あなたが、やったんでしょ?」

 「…そう、だけど。」

 歯切れの悪い物言いで、自信がなさそうで、でも、この人の気持ちだって分かる。

 世界は常に不思議に満ち溢れている。

 ある日急に始まることも、ある日急に終わることもあるんだって、知ってる。

 「アタシが、侵略者を、の。」

 「分かってる。」

 「分かってるなら、どうして?もういいじゃない、アタシは散々反省したわ。みんなに迷惑をかけたって、ちゃんと思ってる。でも、もうどうしようもないの。始めは、些細なきっかけだった。作りたかったの、人間を。」

 「だけど、僕は奴らを、受け入れられない。高度な知識を短期間で獲得して、ここにやって来た。あたかも、昔からいる存在であるかのように振舞って。」

 「ふふ、そうなの。あの子たちは、お利口だから、物をすぐ覚えるのよね。だから、イライラしなくていいの。」

 「…それで、僕は侵略者を、止めたいんだ。」

 「…できるわけない。」

 「できるだろう?それは、分かってるんだ。だって…。」

 「言わないで!ババアが泣いてもいいの?」

 「泣けよ!でも、やってくれ。」

 「…分かった。分かったから、あの子たちは、本当はとても弱いってこと、知ってるのね。あの子たちは、人間をエネルギーにしている。ひっそりと、バレないように。」

 「………。」

 「ごめんなさい、もしかして、あなたの大事な人も、記憶ごといなくなってしまったのよね。」

 「…そうかもしれない。でもそれが誰かも分からないんだ。全員の記憶から消えていて、僕には両親がいないから、もしかしたらその両親が、友人が、でも、変な後味だけが残っていて、思い出せないんだ。」

 「そう…。」

 「だから…。」

 「あの子たちは、悪気があるわけじゃないの。多分とても純粋な存在で、そうね、悪いとしたら、アタシなの。」

 「だったら。」

 「うん、分かってる。あの子たちは、ある物質にとても弱いの。それを、みんな知らない。多分、あの子たちの支配下にある限り、思いつくことができない。」

 「じゃあ。」

 「そうね、大丈夫。元の世界に、戻せるわ。きっと、あなたの大切な人も、思い出せるから。」

 「………。」

 

 僕は、泣いていた。

 ずっと知りたかった事実は、過酷だった。

 「君のご両親、侵略者の生贄になってしまったのよね。」

 「ああ、そうらしい。」

 「どうして、こんなことになったのかな。」

 「…分かるわけ、ないだろ。」

 「…そうね。」

 僕らは、結局離れ離れに暮らすことにした。

 そして、人々はみんな、失っていた大事な人に関する記憶を取り戻して、うつろな感覚をいる。

 そう、取り戻したのだ。

 自分が、空っぽだということに気付いたのだ。

 「僕は、もう行くことにした。」

 「私も、お店を続けていくから、お別れね。」

 「ああ、本当に、しばらくは会わないと、思う。」

 「うん、元気になったら、また来てよ。」

 「分かった。」

 

 でも、僕はもう二度と、戻らなかった。

 両親のことを、思い出してしまったから。

 みんな、自分の中に欠けている何かを思い出すことによって、壊れてしまった。

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