第34話 俺、スザクの頑張りを横目に、浜辺で宝探しに没頭する。

 浜辺で芸術を鑑賞している俺たちのもとに、突如として軽快な大音声だいおんじょうが響いて来る。


「いよいよ始まりました『渚瑳なぎさのボートレース』。実況は、去年に引き続き、わたくしサトウが担当いたします。さぁ、今回の参加者は全部で8名! 飛び入り参加のスザク選手を除けば、全員が漁業のスペシャリストになります。そんな中、はたして不慣れなスザク選手が、どのような活躍を見せてくれるのか、この点にも目が離せません。第1競技は漁獲量コンテスト! その名前のとおり、獲得した魚介類の量で勝敗が決まります。釣り・素潜り・もりと、魚を捕らえる方法は問いませんが、網を使うことだけは禁止です。次の競技が控えていますからね! 既定のサイズよりも小さな海産物、こちらも評価の対象にはなりませんので、くれぐれもご注意ください。それでは、みなさま大きな拍手で、選手たちを迎えてあげてください。まもなく、ゲームスタートです!」


 流暢りゅうちょうな実況。

 淀みなく、分かりやすい解説が流れて来る。男のいる地点から離れているのに、平然と俺たちのもとにまで声が届くのは、専用の魔動具か魔法を使っているためだろう。


 ……意外とハイテクなんだな、この世界。


「多くの選手が釣りを選択していく中、スザク選手だけは素潜りで挑むようです。ここの海はかなり深いので心配になりますが、大丈夫なのでしょうか?」


 延々と続く実況に釣られ、俺も海岸のほうに近づこうとしたのだが、ドロシーの言葉がそれを制止させていた。


「これだけ状況の説明が詳しいと、見に行く必要もないですね。もう少し周りを見てみませんか?」

「まぁ、うん……いいよ」


 応援が必要ないとはいえ、競技に参加させた俺が、本人の頑張りを見ないというのは、どうかとも思ったのだが、そんなことを気にするような繊細な女でもないだろうと、俺はドロシーの提案にうなずいた。


 前に向きなおった俺が歩きだそうとした瞬間、そこに1人の子供がぶつかって来る。

 倒れこむ子供。

 よろけはしたものの、俺はどうにか立ったままだ。


「大丈夫ですか?」

「あぁ、うん。俺はなんとも」

「ご主人様なわけないじゃないですか」


 ……ですよねー。

 しゃがんだドロシーが、心配そうな表情で子供を起きあがらせる。

 まあまあの勢いで転んだので、俺は泣くかと思ったのだが、その予感に反して、子供は気丈にふるまっていた。腰に片手をあて、ドロシーのことを見上げると、俺たちの顔に向かってびしっと指をさす。


「お兄ちゃんたち、手伝ってくれ! 報酬は好きなだけ払う」


 呆れたようにため息をついたドロシーが、ちらりと俺に視線を送る。


「……まるで誰かさんを見ているようですね」

「ちょっと、俺のほうがもう少しばかり、恰好よかったはずでしょうが!」


 無論、俺の反論を無視して、ドロシーが子供に向きなおる。


「報酬って、いったいどうしたんですか?」

「宝を探しているんだ!」


 子供の返事を聞くにつき、ほら見ろと言いたげに、ドロシーが俺のことを睨んだが、対する俺はそれどころじゃなかった。


 ……宝だと? そんな馬鹿な。

 たしかに、この子供の言うとおり、渚瑳なぎさの町には俺が狙っている財宝が存在する。しかし、それは遥か向こうの海の中。忘島ぼうとうよりもさらに先だ。⦅海底神殿⦆と呼ばれるダンジョンに、とんでもないほどの宝が眠っている。間違ってもこの浜辺ではないし、ましてや、こんな子供が望むにしてはでかすぎる相手だ。


 ……俺でさえ、今はやめておこうと思っているのに。

 スザクがいれば恐れることもないだろうが、それでも時間は取られる。急いでいるわけではないものの、女の役に立つことでもないので、モチベーションが上がらなかったのだ。金はまだまだ余っているしね。


 そういうわけで、いったいどういうことなのかと詳しい情報を求めれば、子供はドロシーに対して、地図を開いて見せていた。


 見れば、町の浜辺を模した場所に、いくつかの赤い印がついてある。

 どうやら、これは祭りの期間中、子供たちが退屈しないようにと企画された、レクリエーションのようだった。


「……そういうことね」


 ドロシーと顔を見合わせ、俺はほっと安堵する。


「えぇと、こういったものには、大人が手を貸しちゃいけないと思いますので、残念ですけど、私たちは協力できま――」


 良識ある大人として、断ろうとしているドロシーに割りこみ、俺は子供の依頼を全力で受け入れていた。


「任せろ! お前、名前はなんだ?」

「ネイサン!」


 自分の腕を伸ばし、俺はネイサンの手を握った。

 ドロシーが俺のことを白い目で見て来ているが、そんなことは気にしない。


「ドロシー、こういうのは早い者勝ちだぞ? たとえ、報酬が少なかったとしても、ほかの人に譲るのはご法度だ。決して、ちょっと面白そうだとか思ったわけじゃない! ……よし、ネイサン。必ず、俺たちでこの宝を見つけるぞ!」


 すごい温度差を感じるドロシーから逃げるように、俺はネイサンと共に駆けだしていく。

 子供のためのレクリエーションにしては、ずいぶんと地図は手がこんでいて、俺が見ても立派だと思えるものだった。今日、浜辺に展示されているアートと、内容が関連させられてあるのだ。恐らくは、この遊びを通して、子供たちに、芸術などにも関心を持ってもらおうという、教育的な一面があるのだろう。


 だが、あいにくと俺とネイサンは反骨心が多め。そんな指導者の狙いなど、知ったことじゃない。……素直に、馬鹿といっても構わんぞ。


「クソっ……思ったよりもムズいな」

「だろう、お兄ちゃん? 俺も苦戦しているんだ」


 子供の宝探しとあなどっていたが、謎解きは本格的だ。

 特に厄介だったのは、絵画『海』のように、時間の経過によって、原型をとどめなくなる作品群についても、宝の在り処ありかを示すヒントとして、地図に盛りこまれている点だろう。これでは、謎解きにかかる時間が増えれば増えるほど、問題の難易度が上がってしまう。


「まもなく、第1競技が終了となります。選手のみなさんは、それぞれ所定の場所で、重量の計測を始めてください」


 響いて来る実況を無視して、俺はネイサンの広げている地図の1か所に、自分の人差し指を向ける。


「方針を変更しよう。しゃくだが、分かっている部分から削っていったほうがいい。少なくとも、この『C地点』は⦅風の回廊⦆の付近で、間違いあるまい。八の字型のコースなんて、ここのほかにないだろうからな」


 宝の埋められているとされる場所は、全部で15。

 明らかに、ほかよりも隠蔽されている地点が何個かあるので、宝はその中のどれかにあるのだろうが、正攻法では、とてもじゃないが太刀打ちできない。


「分かった、そうしよう」


 うなずく、ネイサン。

 しらみ潰しのやり方はスマートじゃないが、外れのところにも、何かしらヒントが隠されているのかもしれない。そこに期待してみる。


 俺たちは急いで向かった。

 海岸の辺りを捜索していれば、海藻を模した魔物と鉢合わせる。


「わっ!」


 驚いて、俺とネイサンはひっくり返ったが、シーウィードのランクはD-。本来は転倒するほどの相手じゃない。俺たちだけでも、十分に対処できるランク帯の魔物だった。


 もっとも、いくら相手が海藻に扮しているからといっても、食用にならないのはほかの魔物と同じだ。これは俺に、世界攻略指南ザ・ゴールデンブックがあるからこその情報のはずだが、ワールドの住民たちも、経験的に魔物が食えないことを知っているようで、ネイサンがうなずきながら俺に同意していた。


「あぁ、邪雰じゃふんのためだな」


 ……そうそう邪雰じゃふんね。ん、邪雰じゃふん? あれ、瘴気じゃないの?

 気のせいか、俺はスケルトンライダーの長に会ったときも、瘴気という言葉を、どや顔で使ったような覚えがあるのだが、あとでよくよく世界攻略指南ザ・ゴールデンブックを見返してみると、ネイサンの言うとおりで、瘴気という説明が間違っていることが判明した。瘴気は魔物の規模を表す表現で、均分転移イクオリティーの文脈でしか使われない言葉だ。魔物が発している嫌な感じのことは、邪雰じゃふんという別の言葉で表されるらしい。早い話が、魔物が食用にならないのは邪雰じゃふんのためで、瘴気じゃない。どう違うのかは、目が痛くなるほど世界攻略指南ザ・ゴールデンブックを読んでみても、俺の頭では理解できなかった。自分のスキルも、満足に使いこなせない俺である!


「圧倒的な漁獲量を見せたスザク選手! しかし、その手につかんだ魚はことごとく、無残に砕け散っています。残念、これではポイントにはなりません! これにて全選手の計量が終わりました。現在の順位は次のとおりです。1位、オーズリー選手。2位、ローレンス選手。そして、3位がニューマーク選手です。引き続き、みなさん頑張ってください。第2競技は網投げです! こちらの指定した地点に、いかに早く、そしていかに正確に網を投げることができるのか。それを競っていただきます。網のサイズは、それぞれ小・中・大・特大・極大と5種類! 小サイズが重さにして6kgで、サイズが1つ上がるごとに重量が2倍になります。極大にいたっては、なんと96kg! 成人男性をも超える重さになります。大きな網を選べば、そのぶんだけ得られるポイントも増えていきますが、ミスをしやすくなることは言うまでもないでしょう。さぁ、漁師の意地に替えても、みっともないパフォーマンスはできないはずです。慎重にポイントを稼ぐのか、それとも豪快に挑むのか。剛力のスザク選手が、どのサイズを選ぶのかにも注目です!」


 町から離れたこんな場所にまで実況が届くのかと、俺が不審がって辺りを見回せば、ポールのような支柱に、大型の魔動具がついているのが目に入った。


 スピーカーのようなものだろう。

 ただし、道具がここまで大型で、おまけに有線ならば、ほかの用途には供せない。せいぜいが町の防犯だろうが、それもドラ=グラの常駐している渚瑳なぎさの町に、どれほど有用なのかは不明だった。


 ……本当に祭りのために、色んな人間が準備をしていたんだな。

 俺は感慨にふけっていて、気落ちしたネイサンが作業を止めていることに、少しの間、気がついていなかった。


 自分の腕を見つめたまま、意気消沈しているネイサンに向かって、ゆっくりと俺は口を開く。かける言葉に悩んでしまって、俺が声を発するまでには、それなりの時間が必要だった。


「……そんなに宝が欲しいのか?」


 こういう言い方はあれだが、いくら地図が難解とはいえ、どのみち子供用のレクリエーションであることに、変わりはない。しむほどの高価な物が、景品になっているとは考えにくかったのだ。


「惚れた女が欲しがっているんだ。これで応えられなきゃ、俺の気持ちがうそになっちまう……」


 清々しいほどの男気に俺は感動していた。とても、俺よりも年下の男が言うものとは思えない。

 女のためにすべてを捧げるという点に、モテない男としてのシンパシーを感じた俺は、さらに踏みこんでネイサンに尋ねる。


「どうしてもか?」

「もちろんだ」

「それは、どんな方法を使ってでもという意味でいいな?」

「……あぁ! だが、盗みはなしだ。ヴィオラが知ったら、きっと悲しむ。だが、それ以外のやり方なら、お兄ちゃんの秘密、俺がきちんと墓場まで持っていく」


「よろしい!」


 同じ男としての覚悟を認めた俺は、世界攻略指南ザ・ゴールデンブックの使用を決意。

 ネイサンから、このイベントを企画した人間の名前を聞くと、町に戻って該当人物の捜索を開始していた。


「ネイサン。秘密は守ってくれよな」

「あぁ、無論だ。男ネイサン、二言はねぇぜ」


 ……さてはお前、人生2回目だな?

 ほどなくして、ネイサンが1人の男を指さす。


「お兄ちゃん、あの人だよ。あの人が、ハミルトンだ」

「でかしたぞ、ネイサン!」


 俺はネイサンの頭をわしゃわしゃといじってから、ハミルトンに対して、世界攻略指南ザ・ゴールデンブックを発動させていた。


 男のプロフィールをつぶさに見ていけば、宝を埋めた場所がどこなのか理解できた。

 浜辺の一角、大型の美術作品の真下だ。

 俺よりもでかい立体作品。こんなものを子供が移動するのは不可能だし、大人でさえ、崩さずに運ぶのは難しいかもしれない。第一、作者に移動の許可なんて取れないだろう。何よりも、まるで宝を掘らせる気のない配置に、さすがに俺も、自分の腹が立つのを止められなかった。レクリエーションを完全に馬鹿にしている。


 じゃあ、ハミルトンはどうやって宝を埋めたのかなんて、馬鹿正直に不思議がってやる必要はない。あらかじめ準備しておき、あとは指定した位置に、芸術家に作品を置いてもらうだけだ。もちろん、俺は理解できなくてすげぇ訝しんだので、これは世界攻略指南ザ・ゴールデンブックに、種明かしをしてもらった結果だ。


「あの下にあるのか? 無理じゃねぇか」


 がっくりと、ネイサンがその場にくずおれる。


「心配するな。策はある」


 そっちがそのつもりなら、こちらとしても容赦はしない。

 あいにくと、この巨大模型を、なんの苦もなく運べるスザクの手は借りられないが、幸いにして、見た限りでは、作品の素材として使われている物が1種類だけだ。詳細を確認せずとも、大食衣嚢グラットンポケットのスキルで対応できる。


 俺はドロシーを探し出すと、事情を話して彼女に頼みこんでいた。


「なるほど、分かりました。そういうことなら、力を貸しましょう」


 言っているそばから、取り外しがしやすそうな部位を持って、ドロシーがポケットにしまう。瞬く間に、大地を見おろす金魚の模型は、ドロシーの亜空間へと消失した。


「ちょうどいいので、展示物がなくなったって、作者の方に伝えて来ますね。これで管理の人も懲りることでしょう。そのあと、ぶっ飛ばして来ますね」


「……うん?」


 俺の聞き間違いじゃなければ、なぜか2つの制裁があったように思う。やりすぎな気がしたが、ネイサンのほうが優先だ。管理者のハミルトンには、自業自得だと、甘んじて受け入れてもらうよりほかにない。


 障害物のなくなった地面を、ネイサンと2人で掘り返せば、ややあってから、俺たちは、手のひらサイズの頑丈な木箱を見つけていた。


「うぉおおお、ついに!」


 天高く木箱を持ちあげたネイサンが、喜びに震えている。

 恐るおそる蓋を開けていくネイサンの隣で、俺が期待しながら見つめていれば、中から出て来たのは、とても子供の景品として似つかわしくない、いかにも高級そうな指輪であった。


 ……まさかの本物か?

 だから、本気で隠したとでもいうのだろうか。何か色々と間違っているような思いに駆られたが、いずれにしろ、この指輪を俺たちがゲットしたことに違いはない。


「やったな、ネイサン」

「感謝するぜ、お兄ちゃん! 手伝ってもらったのに、こんなことを言って悪いんだが、ここからは俺1人にして欲しい」


 元々、ネイサンは惚れた女のために宝を探していたのだ。意中の相手を呼んで、指輪を渡す腹づもりなのだろう。


 事情を察した俺は鷹揚にうなずく。


「男の問題だ。深くは尋ねまい。うまくやれよな」


 がしりと固い握手をわしてから、俺はネイサンのそばを離れる。ほかに行くところもなかったので、タナカが腰かけている付近で、ネイサンの勇姿を見守ることにしていた。


『どうでしたか、僕の芸術は?』


 周囲の人間にはそうと分からないよう、小声でタナカが俺に話しかけて来る。


「やっぱりお前が作ったのか、あれは」

『えぇ。せっかくなので、僕も祭りをお手伝いしたくて。ここでずっと座っているのも、少々退屈なものですから』


「まぁ、悪くなかったと思うぞ。あれだけの腕なら、もっとほかの作品も仕上げられるんじゃないか?」


 彫刻の中身がスケルトンライダーだっただけに、本当は一部の観光客が引いていたのだが、それはわざわざ指摘しなくてもいいだろう。骸骨になったはずなのに、タナカは手先がずいぶんと器用だった。


 タナカと話している間に、ネイサンへと近づく少女がある。

 あれがヴィオラだろう。

 確かに、ネイサンが惚れるのも納得のいく美少女だったが、幼すぎるので俺としては対象外だ。いくら年下といっても、あそこまで年齢が低いと、妹の候補にもなりえない。


 堂々としたしぐさで、ネイサンが蓋の開いた木箱を、ヴィオラに向けて差し出す。


「え? わたしにくれるの?」


 一瞬、ヴィオラはきょとんと目を丸くしていたのだが、すぐに事情を察すると笑顔を見せていた。


「もちろんだ! だから、俺と結婚してくれ!」

「それは無理」


 即答。

 ひざから崩れるネイサン。

 ヴィオラの反応はにべもないものだが、俺は薄々そんなことだろうと思っていた。俺がシンパシーを感じるくらいなのだから、ネイサンもこっち側の人間だろう。しかし、だからといって腐ることはない。女を嫌いになるのなんて、もってのほかだ。そんなことをしたって、いつかは男に生まれて来たことを、呪うようになるだけだ。


 ヴィオラは指輪を手に取って、嬉しそうにはしゃいでいる。その姿を見られただけで、心の底から満足だという境地には、俺もまだ立てていないが、ヴィオラを喜ばることができたのだから、ネイサンの頑張りも無駄じゃなかったはずだ。


 遠くのほうで、ヴィオラの持つ指輪を認めたハミルトンが、狂ったように大声で叫ぶ。彼女が自慢げにはめている物が、宝探しの景品であることに気がついたのだ。


「馬鹿な! それは大人でも見つからない場所に、隠してあったはずだぞ!」

「……」


 やはりかと、ため息をつくのを禁じえない。

 作者に告げ口をしに行っていたドロシーが、そこにちょうどいいタイミングで到着していて、問答無用で、ハミルトンを明後日のほうに吹き飛ばしていた。


 自業自得ではあったものの、ハミルトンの災難はまだ続く。

 ハミルトンが飛んでいった方向は、家族のいる近くだったようで、伸びきった亭主を目撃した奥方が、全力でハミルトンを殴りつけたのだ。


「あんた! なにサボっているのよ! このクソ忙しいときに!」


 躊躇のない連続パンチ。

 さすがに運動性能こそ奥方は一般人だったが、自分の旦那にするものとは思えない徹底ぶりに、他人事ながら俺も軽い寒気を感じた。


 ……たぶん、40回くらいは平気で殴っていたぞ?

 もうこの一件は大丈夫だろうと思った俺は、いい加減、スザクの活躍を見学したくなったので、浜辺のほうに歩いていく。


 だが、少し時機が悪かった。


「なんということでしょう! いったいどんな運動神経をしているというのか。スザク選手、最も重量のある極大の網を、いとも簡単に、3つとも指定の位置にピンポイントで、投擲とうてきしてしまいました。あまりの怪力っぷりに、場内も少しざわついております。この結果、順位が変動しました! 最下位だったスザク選手が、一気に3位にまで浮上。いまだかつて、これほどの逆転劇が、網投げ競技で起こったでしょうか!? 類を見ない怒涛の戦いに、わたくしサトウも驚きを隠せません! いよいよお待ちかねの第3競技ボートレースは、お昼休憩を挟んですぐです!」

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