3.領都

 3.領都


 昨日は、よく寝られなかった。

 壁に穴を開ける夢だ。

 嫌な雰囲気の夢なのだけど。


 今日は[祝福の儀]の日だ。

 予定よりも早いけど、宿の料金を考えると早めに終わらせるつもりらしい。


 [祝福の儀]は、領都にある教会で行われるのだけど、その教会の前にはすでに別の村の列ができていた。

 リーフ達は、最後尾の扱いだ。

 で、この教会の中にはこの世界を作られたという女神様の御姿の像があるという。

 そして、一人一人貴族とは順番とかは変わるけど、しっかりと祝福でスキルが一人一つ以上授けられるということを、教会から順番待ちの間に修道女さんが話している。


 さて、段々と列は進んで行くと前の様子が見えてきた。

 泣いている他の人村の子供とか見える。

 

 「貴様! このベラボー家に生まれて、なんだこのスキルは!

 貴様は、追放だ!」


 貴族の子供だろうか?

 父親に蹴られて、石畳に叩きつけられて血が流れていたが、放置されている。

 貴族の父親は、騎士達を連れてどこかに行ってしまった。


 うわ!

 だけど教会の横に並んでいる人が、少女を、 運んで行ってしまった。


 「貴様! 我がベラボー最強のこの私の子供なのに、こんなカススキルしか無いのか!

 貴様は、廃嫡だ!失せろ!」


 ガン!


 今度は、少年だ。

 父親らしき派手な男に、裏拳で立たれて教会の壁に激突して地面に叩きつけられた。

 

 ベラボー家って、え?父親とおもわれる男は別人だった。

 周りで見ていた人達のヒソヒソ話で、少女の方は子爵のベラボー家。少年の方は男爵のベラボー家だ。


村長の息子ガリ

「あ~、確かに両方ともベラボー家と言っていたな。

 貴族様にも、階級ってやつがあるのだよ。

 下から、雑兵爵、騎士爵、男爵、子爵、伯爵、侯爵と辺境伯、そして、公爵。

 で一番上が王様だ。

 家名(名字)が同じって事は親戚とか一族ということだよな。」


 なるほど。

 で、貴族だと[祝福の儀]で、先程この世界で生きていくために、女神様が授けてくださる祝福のスキルが、貴族基準に満たなかったら殺されるのか?

 と、つい口に出ていた。


村長の息子ガリ

「ら、らしいな。つまりだぞ、ハンターでSランクになるはずのオレは、王族が多い公爵様の姫様か、王女様を娶るのは決まっているが、子供が貴族の基準のスキルを授けられなかったから、まさか、婿養子の俺まで追放なのか。」


 え?

 決まっている?


 確か去年村長は、食料難なのに無茶苦茶村から食料を回収させて、戦争中の領主の辺境伯様に食料を送った功績で雑兵になったとか言っていたけど、ソレって雑兵爵という貴族階位のことだよね。


 ハンターのSランクって、どういうランクなのだろう?

 よくわからない僕は、いきなりガクブルしているガリを見ながら、[祝福の儀]の順番を待っていた。


 歓声が上がる。

 門の側にいた、何かの紋章をつけた男が手に持ったハンドベルをしきりに鳴らすと、鎧を来た騎士を連れたお役人風の男が、教会に走って行った。


 どこかの村の子供を挟んで、我が家の騎士にふさわしいとか、誰かと言い争っている。

 どうも、良スキルと呼ばれるものを授かったらしく、騎士にスカウトされているみたいだ。


 あ~、アレが良スキルを授かった奴なのか。

 そして、ついに僕達の番になった。


 村長の息子ガリは、スキル下級剣術

 ガリの従兄弟のゲリは、スキル 盾術

 隣の幼馴染の女の子ボヘは、スキル火魔法

 商店のむすめトトは、スキル回復魔法(弱)を筆頭に2~3のスキルを授かっていた。


 他の奴らもスキル重量軽減とか、スキル大根栽培とか、農業耕作(弱)とかいろいろだったな。


 最後にリーフの番がきた。


教会の司祭様

「よくぞ来たリーフよ。さぁ女神様に今日この日まで、この荒廃した世界で生きて来れた感謝のお祈りをして、この水晶玉に手を置きなさい。」


 手を乗せたら、玉が光り目が眩む!

『…✲∨□△≠#&$?![$%』

 よくわからない言葉?

 目が光で視力がまだ戻らない。


 やっと、視力が戻った時に司祭様は首をかしげていた。

 え?とうした?


司祭様

「うむ、スキル ハッパ。

 聞いたことが無いスキルじゃな。

 スキル辞典でも、該当するスキルはない。

 は行だと、スキル吐く位しかないな。

 ユニークスキルとか言われなかったか?

 まぁいい。

 今日は、これにて終了だ。」


 よくわからないスキルらしい。

 どういうスキルかわからない。


 ガリ達が、向こうの方で何か話し合っていたみたいで、やってきた。

 

村長の息子ガリ

「スカウト人も来なかったということは、良スキルではなかったのか。

 よし、今からハンターギルドに登録をするぞ。

 お前のよくわからないスキルでも、ハンターギルドなら何かわかるかもしれないな。」


 僕は、ハンターにはならずに村に帰ると言うと、ガリ達に囲まれて無理矢理ハンターギルドに引きずり込まれた。

 全く人の話を聞かないガリに疲れた僕は、なんとかして逃げようとしたがだめだった。

 隣の幼馴染の女の子ボヘが言うには、村長が各家に辺境伯軍に食料を送るから、食い扶持を減らすために全員ハンターにさせるようにって、命令していたらしい。


 初耳だけど!


 だけど、ハンターギルドの美人な受付嬢のお姉さんは、その事を知っていたらしい。

 そして、無理矢理ガリ達とハンターパーティーを組まされる事になってしまった。

 ハンターギルドの鑑定玉という魔道具で、[祝福の儀]後のステータスをもう一度鑑定して、間違いが無いか登録内容を確認しての登録となった。


 ハンターギルドの登録試験は、今回は村長の命令と、領主様の食料調達の為の処置としてのハンター登録義務の命令があって、免除らしい。

 義務って…。


 ついでに、ハンターギルドでのステータス鑑定玉で再鑑定してもらったが、やはり僕のスキルは(ハッパ)としか書いてなかった。

 しかも、だった一つだけだった。


受付嬢 メイさんからの説明では、ハンターの個人ランクもパーティーランクも同じで、下の方からG→F→E→D→C→B→A→AA→S→SSとなるらしい。

 一番上はSSランク。

 Aランクから騎士爵扱い。

 AAランクで、男爵扱い。

 Sランクで、子爵扱いらしい。


 AAランクパーティーでは、ドラゴンとの戦闘とかに指名クエスト(依頼)を指定されるという。

 各ランクにクエストが割り振られていて、個人なら同ランククエスト(依頼)。パーティーで一つ上のクエストが受注することができる。


 クエスト(依頼)を失敗すると罰金。

 連続で失敗すると降格。

 だけど、成功を積み重ねたら昇格すると言うことを聞いて、その日は宿に帰ることにした。


 パーティー名はガリズ

村長の息子28男  ガリ ジョブ剣士

 スキル 剣術 身体強化 俊足


 村長の兄の息子33男 ゲリ ジョブ盾使い

 スキル 守備強化 身体強化 重量増大


 村の魔法少女22女 ボヘ  ジョブ魔法使い

 スキル 火魔法 魔力操作 魔力増大(弱)


 村民23女    トト ジョブヒーラー

 スキル 回復魔法(弱) 魔力増大(弱)


 そして、僕リーフ。

 リーフ ジョブ 斥候兼荷物持ち

 スキル ハッパ


 全員レベル1

 生命力とか、魔力値とかのステータスの値は出ていのだが、[祝福の儀]の後のレベル1の時は、全員全ての値は幸運以外10と決まっているのだ。


 その日から、パーティーガリズは活動することになった。

 


 


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