2.初めての野営。

  2.初めての野営


 村から、領都までは歩いて3日間かかる。

 は?近くないか?とか言われそうだけど、ハンターさん達に聞くと王都に比べると、この領は本当に国境線に沿って長細く設定されていて、村から村は歩いて10日かかるけど領都までは、3~4日距離だという。


 引率の為に大まかな地図を見せてもらったけど、なんて地図だよ!

 危険地帯ってはっきりと描かれていた。


 コレは、本当に脱出しないと!


 [地図]



 今日の馬車の休憩所にもなっている広場に到着した。

 すでに、もう夕方だ。昼飯?無いよ!

 収入が豊富な家はあるけど、基本僕の村では昼にご飯を食べるなんて贅沢は無理だ。


 村長の息子ガリ

「おい!初めての野営だ!早くテントを張れ!」

 もう、ハンターになることが決定しているような事を言っているが、ハンターギルドに入るのにも試験があると、引率のハンターさんから聞いたよ。


 ハンターギルドに入れるのかすら、僕は自身の実力的に危ないと思っている。

 それに、ガリの奴は物凄く大事な事を忘れている。

 それは重たいからと、村長から渡されたテントを村に置いてきたのだろう?何を考えているの?!本当にハンターやれるの?


 ガリが、怒鳴っているが自分でテントを置いて来たのに、なぜ持ってきてないのかとキレている。

 村人は、この日の為に作った寝袋で寝るのが普通なのよ。

 ガリの奴、寝袋すら持ってきていない。

 大丈夫か?


 僕は、他の奴らに紛れて寝た。

 

 次の日。

 ぶつくさ言っているガリを避けて、最後尾で歩いていて、ふと前方の森に何かが動いたような気がしたので、後方のハンターに言うとすぐに前方のハンターに知らせた。


 後方のハンターが、何か呪文を唱えている。

 杖と帽子から、魔法使いなのだろう。

 ブワッとする何かを発していた。


 前方に15人!


 後方のハンターが叫ぶと、盗賊が出てきたよ!

 しかも、後方に回ろうとしてきた。

 もっと前方のさきの道の斜面からも盗賊が降りてきて、こちらに走ってきた。


 後方のハンター達が戦闘体制に入った。

 弓を放つハンター。

 ファイヤーボールという火の玉を放つ魔法使い。

 前方でも、すでに戦士と重戦士が斬り合いになっている。

 リーフも近づいてくる盗賊に石を投げて、注意をそらす。

 

 ドーン!

 そこに着弾するファイヤーボール。

 すでに、後方にまわって来ようとした盗賊5人はやられた。


 前方も、盗賊は全滅したようだ。

 追加でやってきた盗賊達もあっさりと、ハンターパーティーのリーダーの戦士に斬られてしまった。


 ふ~。

 生きているな。

 盗賊と出会ったら、逃げろ!

 まぁ逃げ切れるのは3割くらいだと言われていたけど、生きていた。


 なんとなく、ガリの奴が憧れるのはわかったが、こんなに強くなれるかは別問題だよな。

 

 ガリの奴は恐らく興奮しているのだろうなと見たら、頭を抱えて座り込んで震えていた。


 少し予定よりも歩くペースを早めて、領都に急ぐことにしたようだ。

 その間、後方の魔法職のハンターと話していたけど、盗賊に気づくのはひょっとしたら斥候職のスキルを祝福で授けられる兆候かもしれないと言われた。


 ほとんどの斥候職の人は、[祝福の儀]の前から森の動きとかを敏感に察知する傾向があるらしい。


 その日は、途中にあった領軍の砦に連絡して、盗賊が出たので馬車を出してもらってすぐに領都に向かって夕方についた。

 それほど優遇されるのは、ハイランクスキルを[祝福の儀]で授けられる確率がある以上、殺されるとか、売られる訳にはいかないからだ。


 夕方、領都に閉門ギリギリでというよりも、完全に閉まりかけた時に開けてもらって領都に入った。


 まだガリは、震えていたな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る