絵を描くのを辞めた日

第23話 折れた筆

☆(犬養智子?)サイド☆


マネージャーらしき人が基介さんの所に行っていた。

何を話していたのだろうか。

まさかと思うが(近付くな)とか話していたのだろうか?

あの人は正義深いから.....多分そういう事もありえる。

私はそういうつもりで彼に接していた訳じゃ無い。


だからそうだとしたら悲しいな。

思いながら私はマネージャーが出て行ってから聞きに行こうと思ったが.....止めてから翌日になった。

それから朝早くにいつもの通り彼にお弁当を届ける為に玄関から出る。


「おはよう」

「あ。おはようさん。真紀」

「.....そ、その。聞いても良いかな」

「.....?.....何をだ?」

「昨日.....マネージャーと話していたんじゃないのかな」


基介さんは「!」と反応する。

私は(やはりか)と思いながら眉を顰める。

それから基介さんを見上げる。

基介さんは「でもまあそんなに悪い話じゃ無かった」と私に向いてくる。


「.....あくまで真紀が学校に行くか行かないか。それから俺がお前らのカウンセラーを頼まれたんだ」

「カウンセラー?また何で.....?」

「俺が統率に適しているんだと。.....それ以外は良く分からないけどな」

「.....でも確かに適しているかもね。基介さんなら。優しいしね」

「そんな事は無いけどな」


そんな会話をしながら私は基介さんに付いて行く。

それから下まで降りる。

今なら帽子を被っているから気が付かないだろうし。


周りの人達は。

そう思いながら私は基介さんを見る。

基介さんは眉を顰めていた。

ん?


「.....お前.....」


そう言いながら固まる基介さん。

目の前を見ると.....金髪の女子が居た。

それもかなりの美少女である。

帰国子女の様に見える。

ブルーの瞳に.....こちらを険しく見据えている。


「.....久々ね。.....やっちゃん」

「.....何故お前が居るんだ。.....アーリャ.....」


この女子はアーリャというらしい。

私は「???」をうかべながら2人を見る。

するとアーリャは私を見ながら「.....そちらは?」と聞いてくる。

基介さんは「.....この子は.....俺の知り合いだ」と答える。


「.....そう。.....やっちゃん。貴方は誰とも付き合わない方が良いと思う。.....貴方は.....人の人生を狂わせる」

「.....そうだな。だけどそれは元友人のお前もだろ」

「.....」


何だこの女は。

いきなり基介さんにとんでもない事を言ってから。

思いながら私は複雑な顔をしていると背後から「何でここに居るの」と声がした。

見るとそこに.....音心さんが居た。


「.....音心?」

「.....アーリャさん。もうお会いしないって決めたじゃないですか」

「私が会いに来た理由は1つ。.....彼とまた絵を描きたいって思ったから」

「.....そんな自己中心的な身勝手な事は許されません。それにもう彼は絵を描かないって言ってます」

「.....それは貴方が決める事じゃ無いでしょう」

「決めれます。貴方は.....基介さんの筆を止めを刺して折ったんですから」


衝撃的な事実だった。

私はショックを受けながら「え?」という感じで基介さんを見る。

基介さんは「それはまあ過去の話だけどな」と音心さんを見た。

そして苦笑した。


「.....待って下さい。基介さん。何が起こっているんですか?」

「.....俺がアーリャに母親の事で馬鹿にされてアーリャを弄っていたんだ」

「.....な.....!?」

「だけどいつしか俺達は仲良くなったんだ。何故そうなったかというと俺達がお互いに分かち合ったから」

「.....つまりイジメっ子とイジメられっ子って事ですか?」

「そういう事に近いな。.....だけど最後に俺達は2人共に互いの傷で交われず互いの事で大喧嘩した。疎遠になったんだ」

「.....そうだったんですね」


「だから彼は断る権利は半分は無いの」と言うアーリャさん。

私は「しかし.....」と言う。

するとその代わりに音心さんが「いや。あります」と言った。

そして「彼は.....もう重々反省した。だから次は貴方です。断る権利はあります」と話した。


「.....基介は.....もうアーリャさんと傷を比べる必要は無いです」

「.....有難うな。音心。そう言ってくれて」

「.....そう言うだろうって思っていたけど」


アーリャさんは「.....そう。仮にも私と貴方の仮の仲だったしね。.....私は貴方を10億円で買いたい」と話.....10億円!!!!?

私はというか。

基介さん以外はみんな驚愕する。

10億円で買うって!?


「.....私は今、貴方が必要です」

「.....そうなるか。.....だけど有難うなアーリャ。俺は10億でも100億でも君の元には行かない。.....もう絵は描かない」

「.....」

「親父の件もあるしな」


そう言いながら私を見て音心さんを見るアーリャさん。

それから「じゃあ行こうか」と言い出す。

そして歩き出した基介さんと音心さん。

私は驚きながらその姿を見送っていると「何で?」とアーリャさんが話す。


「.....何で?」

「.....お前は知らないと思うが俺は手が震えるんだ。だからもう絵は描けない」

「.....そんなの治療すれば.....」

「それでも描くのは嫌だ」

「.....」


唖然とするアーリャさん。

そして私に手を振ってから歩き出す2人。

私は静かにアーリャさんを見る。

アーリャさんは複雑な面持ちでその場を踵を返して去って行った。

10億円.....か。


「.....彼も大変なんだな」


そんな事を考えながらそのまま3人を見送ってから部屋に戻る。

それから暫く考えていた。

10億円.....大金持ちなんだな。

アーリャさんは。

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