第22話 マネージャーからの頼み

☆(矢口基介)サイド☆


アイツを.....真紀を。

見送ってから俺は悶えていた。

俺が痴漢から救ったやつだと告白してしまった。

これで良いのだろうか?

何か恥ずかしくて仕方が無い。


そう思っているとインターフォンが何故かこの時刻から鳴る。

もう既に時間が遅いのだが。

(誰だ?)と思いながら俺はドアを覗く。

そこに.....女性が立っていた。

スーツ姿の。


「.....???」


開けなければ良かったが開けてしまった。

そしてスーツ姿の女性が.....ヒールで高くなっている女性が見下ろしてくる。

それから「初めまして。私、芸能事務所の義光と申します。以後お見知りおきを」と話してくる.....えぇ!!!!?

ってかまさか!?


「.....もしかしてトゥインクルスターの.....?」

「その通りです。マネージャーです」

「.....は、初めまして.....というかその。マネージャーが何のご用事で?」

「.....学校の件でお願いしたく失礼します。.....私は真紀を学校に通わせてあげたいのです。ご協力をお願いしたく」

「.....!」


俺は「!」と思いながら部屋を見渡す。

それから「もし良かったら入りませんか。お茶でも淹れます」と告げる。

すると「有難う御座います。しかしお気遣い無用ですよ。有難う御座います」とマネージャーさんは言ってくる。


「時に.....貴方は真紀、夕凪、楓から相当な信頼を寄せられている様ですね」

「.....い、いや。それはまぐれですけど」

「特にビックリしたのは楓ですね。楓が.....あんなに心を開くのは珍しいです」

「.....はあ.....」

「.....そこで1つお願いがあって来ました」


マネージャーさんは「私の代わりに彼女たちのカウンセラーになってもらえませんか」と話してくる。

俺は唖然としながら「は!?」となる。

「それはお給料も出ます。そして貴方は信頼されている様ですので。お給料も倍で弾みます」とマネージャーさんは言ってくる。


「ただ会話をするだけで構いません。如何でしょうか」

「.....しかしそれで給料を貰うのは忍びないです」

「.....では?」

「彼女達に無条件で接します。.....それで良いですか」

「.....しかし.....」

「こんなもので給料を貰うのは良くないです。働いてないのに」


マネージャーさんは顎に手を添える。

それからフッと笑みを浮かべた。

そして「どうやら貴方は私が見込んでいた男よりも更に良き感じですね」と言ってくる。

俺は「?」を浮かべた。


「.....3人共.....特に夕凪と真紀は傷付いていますので」

「.....その様ですね」

「はい。.....なのでこの仕事をプライベートで貴方に頼みたかったので。.....でも想像以上でした。貴方の存在感は」

「.....俺はそんな人間じゃないっすよ」

「いえいえ。.....私からしてみれば素晴らしいです」


「貴方は真紀の敵かと思っていました。だけど今は違う。貴方はとても良い男の子の様ですね」と柔和になるマネージャーさん。

何だか母性があって素敵だなこの人。

だから守ってもらえるのだろう。


「.....俺に出来る事があったら言って下さい」

「頼もしい限りです」

「.....俺は.....そんなに働けない屑ですけど」

「そんな事は御座いません。まるっきり。.....貴方は貴方自身を過小評価していますね?」

「.....大昔に絵のコンテストで優秀賞をとってから色々と絶望したので」

「絵を描かれていたんですね?」

「はい。遠い恥ずべき記憶です」


マネージャーさんはしっかり「ふむ」と言いながらメモを取る。

スケジュール帳にだ。

俺はその姿を見ながらマネージャーさんを見ているとマネージャーさんは手帳を閉じた。

それから笑みをまた浮かべて俺を見てくる。

「貴方はとても良い人ですね。それもきっと優しさ故ですね」と話した。


「マネージャーさんは大変な方だって聞きました。でもそんな事無いですね」

「私が昔不良だったせいですね。暴走族でした」

「.....!.....そうなんですね」

「そうです。.....完璧に社会から排除されるべき存在でした」

「.....そっか.....」


「だけど私はトゥインクルスターという家族を見つけた。これは本当に幸せな事です」と言ってくるマネージャーさん。

俺は「.....ですね」と笑みを浮かべながら話を聞く。

そうだったんだな。

多分孤独だったのだろうこの人も。


「これからも良かったら真紀達を支えてあげて下さい」

「.....はい。.....ありがとうございます。彼女を支えますよ。これからも」

「私は今日は見定めと思って来ました」

「.....」

「でもその心配も要らない様ですね。帰ります」


マネージャーさんはスケジュール帳を律儀に折り畳み胸の内ポケットに仕舞った。

それから律儀に俺に頭を下げてからそのまま「では」と言いながらドアを開けてから頭を90度下げた。

そしてそのままゆっくり去って行った。

俺はその姿を見ながら横の部屋を見つめる。


「.....真紀達の.....カウンセラー.....か」


そんな事を呟きながら俺はそのまま玄関を閉める。

それから俺は壁を見つつ。

そのまま勉強を始めたりした。

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