第21話 普通の女子高生

☆(犬養智子?)サイド☆


私は汗が噴き出ている。

そして赤くなるのが止まらない。

何故かといえば目の前に.....私を痴漢から救ってくれた張本人が居るから。

だから赤くなるのが抑えられない。

どうしたら良いのだろうか。


「.....まあ色々分かったとしても俺達は俺達だ。だから落ち着いていこう」

「そうだね」

「.....俺はそんな気は今は起こらないから」

「貴方は本当に良い人だね」

「俺は.....そんなに良い人じゃないよ」

「.....ねえ。覚えてる?貴方に似顔絵描いてほしいって」

「覚えているけど.....」


そんな事を話しながらお互いにお茶を飲む。

基介さんは顎に手を添える。

そして手を見た。

その手が痙攣を起こした様に震えている。

これ状態が良く良くないって事だろう。


「.....すまない。やはり描けないと思う。拒絶している。身体が」

「.....そっか。.....うん。無理はしないで」

「.....ああ」

「.....その代わりだけど.....さ。.....今度から夕ご飯とかご飯を一緒に食べるのを約束してくれる?」

「な、何でだよ。.....それじゃまるで通い妻.....」


「通い妻.....!?」と唖然として真っ赤になる私。

それからワタワタと反応する。

「そ、そんなのじゃないから!!!!!」という感じで否定する。

すると基介さんは「本当か?」という感じでジト目をした。


「怪しいぞ」

「.....も、もう」

「.....でもどっちにせよそれは嬉しいよ」

「そう?じゃあ.....約束ね」

「.....ああ」


そして私は何とか笑顔になる。

それから私はお茶を飲みながらテレビを観る。

そうして幸せな時間を過ごした。


その中で思った事が正直ある。

正直言って.....愛分社だけは許せない点がある。

私は.....まだ戦わないといけないなとも思っていた。


「.....ああ。そういや。俺の事を知ってどうする気だったんだ?お前は」

「.....私?.....どうって言われても。お礼をとにかく言いたかった。それだけ.....だね」

「.....そ、そうか」

「.....」


それ以外は絶対に無い筈だ。

そうこれは絶対に違う。

こんな私に.....幸せは訪れないのだから。

そう考えながら私は複雑な顔をした。

それからニコッとする。


「.....でも正直言ってこんな感じで判明するとはな」

「そうだね。余計だよね。愛分社」

「.....俺も有名人って事だな。気を付けるか」

「そうだね。重々気を付けた方が良いかもね.....」

「正直俺なんかを取材しても意味無いと思うけどな」

「そうとも限らないと思う」


私は考え込む。

だって.....この人というか。

基介さんは全てを穏やかにしていっている。

それは端的に言えば周りからは邪魔者に近い部分もある。

だからこそ危険はまだあると思う。


「.....無理はしないでね」

「無理はしないさ。.....俺は俺なりにいく」

「.....それだったら良いけどね」


そうだ。

私はだからその分、この感情は持ってはならないと思う。

だから目の前の事に集中したいのに。

だけど邪魔が入る。

それは.....モヤモヤという邪魔がだ。

すると基介さんが向いてきた。


「.....お前も気をつけろよ。真紀」

「そうだね。お互いに.....有名にならない様に付き合おうね」

「.....だな」

「じゃあ.....今日は帰るね」


そして私は立ち上がる。

それから玄関まで移動する。

基介さんを改めて見た。

すると基介さんは「お前はやっぱり本当に学校には行かないのか」と尋ねてきた。

私は目を丸くしたが数秒して首を振る。


「私は今のスタイルが合っているから」

「.....勉強はしたくないのか?」

「憧れるね。やっぱり一般の女子高生って」

「.....そうなんだな」

「うん。だけど無理だからねぇ」


そんな事を言いながら私は玄関を開けた。

そして数秒間また考え込み。

それから振り返る。

「基介さん。気を付けて。本当に」と告げた。

基介さんは「ああ。お前もな」と言ってくれた。


「.....流石に相手も記者だから。犯罪はしないと思うけどね」

「犯罪行為とかそんな事をしたら殴るに決まっているな。.....そうならない様にしたいもんだ」

「そうだね.....」


そう言いながら私は改めてドアを開ける。

それから「じゃあおやすみなさい」と言いながらドアを閉める。

そして私は鼻歌交じりにドアを開けて鍵を掛けた。

明日から.....基介さんと食事。

やった。


「.....正直こんな事になるなんて」


嬉しくて仕方が無い。

だってそうだ。

基介さんという人間が.....私を痴漢から救っていた。


求めていたヒーローだった。

私は枕に頭を突っ込んでから悶える。

ヤバイめっちゃ.....嬉しい。

滅茶苦茶のめっちゃ嬉しいと同時に。

不安が襲ってくる。


「.....愛分社のせいで迷惑をかけないようにしないとな」


そんな事を呟きながら私はかかってきた電話先を見る。

それは愛分社の記者の電話の様だ。

私は即座にブロックした。

それからそのまま着信拒否をする。

二度とかけてほしくないとそう思いながら。

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