第20話 ヒーロー
☆(矢口基介)サイド☆
まさか女子に告白されるとは思わなかった。
だけど俺は考えてしまった。
そもそもこんな俺にそんな価値は.....。
誰かを幸せにできる価値は無いと思う。
考えながら俺は思い出す。
自分の立場を。
「やれやれだな。.....ははは」
そんな感じで苦笑いを浮かべながら輝いてるいるトゥインクルスター達を観る。
暇つぶしにテレビを観ているとトゥインクルスターの特集があっていたから。
さっきの続きとなる。
「あり得ないよな。こんな俺がアイドルと一緒なんて」
その様な事を考えながら俺はテレビをボーッと
眺める。
それから俺は上の空の様な感じで居るとインターフォンが鳴った。
そしてドアをノックする音がする。
「アイツか」
俺は呟きながらドアを開けるとそこに真紀が立っていた。
何かラップがかけられた品物を持っている。
俺は「?」を浮かべながら「それは何だ?」と聞く。
すると真紀は「うん。これ混ぜご飯とか。美味しいから」と答える。
「成程な。ありがとう」
「.....」
「どうした?何か様子がおかしいぞ」
「ね、ねえ」
「?」
「そ、その。告白.....されたんだよね?音心さんに」と言ってくる真紀.....ふぁ!?何で知っているんだ!?
俺はビックリしながら赤面する。
それから真紀をまた見た。
真紀は「そうなんだ。やっぱり」と複雑そうな顔をする。
その顔にますます「?」を浮かべる。
「どうしたんだ?それが」
「.....いや。何でもないよ。ごめん。変な事を聞いてしまって」
「そうか。なら良いけど.....」
「.....」
「.....」
そのまま俺達は黙る。
それから俺は真紀を見てみる。
何故か耳まで赤いのだが。
どうしたのだろう。
考えながら俺は真紀を見る。
何か風邪とかひいたのか?
「私は.....最近、おかしいんだ。実は。何か熱っぽいの。訳が分からないけどね。君を.....見ていると」
「.....!?」
「それに君を見ていると料理も失敗する。全部。何か分からない。だけど何かかあって熱くなるの」
「そ、そうなのか」
俺は胸がドキドキする。
何故か分からない。
だがその感情だけはあり得ないだろう。
そう考えながら俺は真紀を見る。
真紀は俺から視線を外した。
それから赤面する。
「ま、まあひとまずは上がるか?」
「そ、そうだね。確かにね」
それからうちに上がる真紀。
真紀はそのまま台所に向かう。
その時に真紀が俺を見てから台所に向いた気がしたが.....まあ気のせいだろう。
そう思いたい。
「ねえ」
「な、何だ。今度は」
「貴方はあの日。列車に乗ってない?」
その言葉に俺はゾクゾクした。
それから汗をかく。
心臓が高鳴る。
だが俺は答えた。
しっかり「乗ってない」という言葉でだ。
すると「そうなんだね」と真紀は答えながら俺を見る。
「君があの日、救ってくれたなら良かったな。君だったら.....」
俺だったらどうするのか。
考えながら俺は真紀を見る。
真紀は口元に手を添えながら否定する。
「何でも無いや」と言いながらニコッとしつつ。
俺は胸が締めつけられる思いだった。
だけどもう良いんだ。
これで良いんだ。
と思っていた矢先だった。
真紀の電話に電話がかかってきた。
それから真紀が「ゴメン」と電話に出る。
すると直ぐに顰めっ面になったが。
数秒してからかなり驚いた顔になった。
「愛分社.....ね、ねえ。矢口さん。貴方はあの日、私と同じ電車に乗っていたの!?」
俺は「は.....マジかよ?!」と呟きながら青ざめる。
それから俺を見てくる真紀。
その目は期待の眼差しと。
不安な感じの眼差しをしていた。
俺は口をつむぐ。
「ああ。確かにその通りだ」
「じゃ、じゃあ嘘になりますよね?あの日、電車は別のに乗っていたって言ったから」
「そ、そうだな」
「何でそんな嘘を吐くんですか?」
「.....」
愛分社め。
余計な真似をしやがって!
思いながら(これ以上は隠せないか)と考えてから俺は真紀を見る。
意を決して真紀を見た。
「真紀。すまない。俺は嘘を吐いていた。俺はお前を救った。間違いなくあの日、お前を痴漢から救った」
「.....そ、そうなんですね.....」
「今まで言わなかったのは。お前に迷惑がかかるかって思った。ただそれだけだ」
「.....」
泣き始めた真紀。
俺はショックを受けながら真紀を見る。
真紀は俺を見てから「大丈夫。ショックで泣いているんじゃないよ」と俺に笑顔を浮かべる。
「そっか。そうなんだ」とニコニコしながらだ。
「私は貴方という人をずっと探していました。貴方がヒーローで良かった」と満面の笑顔になる。
心臓がドキッとした。
何だろうか。
「もし良かったら私は.....これから貴方を基介さんって呼んで良い?敬語も無しにしたい」
「何でだよ。恥ずかしい」
俺はその言葉に首を振る。
変わらない感じである。
そう思いながら俺は笑みを浮かべた。
だが何というか変わらない感じは一時的に過ぎなかった。
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