第16話 敵対する会社

☆(矢口基介)サイド☆


何をしているんだ俺は?

そんな事を考えながら俺は頭を抱える。

それから考え込んでいた。

目の前には鬼門が居る。

鬼門.....の手を引いてから俺の家にパパラッチから逃走する為にそのまま鬼門を引き込んでしまった。


「.....すまん」

「.....何がすまないだ?.....私は助かったよ。お前にそんな何かから逃げる根性があると思わなかった」

「ああ。でもああでもしないとお前は嫌がらせを受けただろうしな」

「.....本当に訳が分からない奴だなお前。私がお前にした事を忘れたのかよ」

「訳が分からないか。それは確かにな」


笑みを浮かべながら俺は鬼門を見る。

鬼門は複雑な顔で俯く。

それから「調子が狂う」と呟いた様に聞こえたが。

気のせいか?


「.....あー。その。お茶でも飲むか」

「.....そうだな。じゃあ貰えるか」

「そうだな。じゃあお茶淹れるから待ってろ」

「.....なあ」

「.....何だ?」

「お前私が嫌いじゃ無いのか?」


「嫌いと言えば嫌いだな。お前は守るべき対象が強すぎる。癖があり過ぎる気がする。だけどあくまでお前は女子だ」と俺は告げる。

それから鬼門を見た。

鬼門は「.....」という感じで俺を見てくる。

そして「お前。絵を描いているとか聞いたが。.....それであんな勇気を持てるもんなのか」と言ってくる。


「.....ああ。真紀から聞いたのか」

「.....そうだな。まっちゃんから聞いた」

「.....俺はもう絵は描けない。だからその代わりに心を鍛えようって思ってな」

「そうか。.....なあ。お前.....」


「お前はもしかしてまっちゃんを救ったのか」と向いてくる。

俺はその言葉に大きく見開いてから「いや」と答える。

その言葉に数秒間考えてから鬼門は黙る。

「そうか」と単純な返事をして、だ。


「.....」

「.....」


そんな感じで空白が空いた。

そして鬼門は「.....今回のお前の行動が格好良かった」と呟く。

それから俺に向いてきた。

そうしてから頭を下げてくる。


「有難う」

「.....俺はパパラッチからお前を逃しただけだ」

「.....だとしても私はお前にお礼を言いたい。感謝してる」

「.....そうか。なら受け取っておくよ」


そんな会話をしているとインターフォンが鳴った。

それからインターフォンを覗いてみるとそこに.....真紀が居た。

俺は「鬼門。真紀が来た。開けて良いか」と言う。

すると「え!?」と鬼門は言葉を発した。


「.....ま、まあ不都合は無いか」


次にそう言ったので俺はドアを開ける。

するとそこに鍋を持った真紀が立っていた。

真紀はニコッとしながら「はい。夕食」と言いながら室内に遠慮も無しに入る。

そして驚愕した。


「え?な、何で.....かえちゃんが!?」

「よお。.....まっちゃん」

「.....」


俺を見ながら一瞬だけ眉を顰めた真紀。

何だコイツ?と思いながら真紀を見ていると真紀は頬を膨らませた。

それから「いつの間に」と俺に向いてくる真紀。

ああ。鬼門が何でこの場所に居るのかって事かな?


「ちょっと色々あってな。.....パパラッチとかから救う為に連れて来た」

「.....え?パパラッチ.....?」

「そうだな。悪徳記者みたいな野郎達から救ったんだ」

「.....またアイツらかな。愛分社」

「愛分社.....ってゴシップ記事とかの記事載せている?」

「そうだな。きっとそうだ」


苦笑する鬼門。

それから複雑な顔をまた浮かべた。

だけどそれはまた別の複雑な顔だった。

俺は「?」を浮かべながら2人を見てみる。

すると「.....ありがとう。矢口さん。救ってくれて」と向いてくる。


「かえちゃんがまた変なストーカーに操られるところだった」

「.....そうだったのか」

「愛分社は嫌っている。マネージャーがもの凄く嫌っている」

「.....そんなに悪質なのか?」

「悪質っていうかやり方が汚い。どんな感じでもやる」

「.....それはゴミだな」


「うん。正直言うとマジにゴミだね」と言ってくる真紀。

それから「かえちゃん。大丈夫だった?」と真紀は鬼門に近付いた。

そして鬼門を抱き締める。

鬼門は「大丈夫だって。そいつが。矢口が救ってくれたから」と笑顔になった。


「.....矢口さんは女ったらしですね」

「オイ失礼だな。偶然に救っただけだぞ」

「ふふ。知ってます。多分矢口さんならそうだろうなって。だから冗談です」

「なら良いんだが」


そして俺は盛大に溜息を吐きながら「でも矢口さんも気を付けて下さい。何だか愛分社は活動が.....汚くなってきてます」と向いてくる。

「そもそも私が矢口さんに近付かなければ良いんですけど」とも言いながらだ。

俺は考える。

それから「まあ大丈夫だ。俺はな」と苦笑した。

そもそも俺は.....。


「俺はゴシップ記事に載る以前の問題が有るしな」

「.....矢口さん.....」

「矢口?」

「.....」


友人を泣かせた俺。

親父にクソ野郎扱いされた俺。

そして描けなくなった絵。

それから絶望した世界。

もう.....希望なんて無いって思っていたのだが。

だけど。


「.....お前らは不思議な奴らだよな。鬼門。そして真紀。.....それから荒木もな」

「.....いきなり何を言ってんだ?」

「そうですよ。矢口さん。あはは」

「.....」


そして俺は2人を見る。

2人は苦笑しながらクスクスと笑っていた。

それから俺もクスッと笑う。

何か俺も訳が分からないな本当に。

そう思いながら。

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