第15話 逃避行

☆(鬼門楓)サイド☆


マネージャーが居ない。

そしてゆうとまっちゃんも居ない。

私は一人で自宅の自室でゲームを弄っていた。

だけどそれも飽きたのでほっぽりだした。

それから私はベッドに深く沈み込む。


何故こんな気持ちになるのだろう。

そして何故私は怒りっぽいのだろうか。

だけど私はただ私はまっちゃんの事が心配なだけだ。

まっちゃんが急に人を探しに行くってなった時は。

衝撃で頭が埋め尽くされた。


「.....」


私もまっちゃんの為と思ってこのマンションを借りた。

まっちゃんの家から2キロほど離れたマンション。

だけど私はまだアイドルを辞めた訳じゃないし活動を休止した訳じゃない。

だからこの家は仮の家だ。

通勤の為の。


「.....」


矢口は本当に良い奴なのだろうか。

私はまっちゃんの過去を知っている。

だからずっとまっちゃんの前に立って擁護した。

イジメっ子から守る様な強い女子。

そんな感じだ。


だからこそ知っている。

矢口は.....正体は不明だが良い奴では無いかと。

だけどどうしても反発してしまう。

何故かといえば。

矢口も裏切るんじゃないかって。


「馬鹿だな。私も大概」


そんな事を呟きながら私は起き上がる。

それから飲み物を飲みに行こうとした時だった。

妹の鬼門梓(きもんあずさ)が「お姉ちゃん」と声を掛けてきた。

高校1年生であるが。


「うん?どうした。梓」

「お茶淹れてあげようか?」

「あ。じゃあお願いできる?」

「うん」


梓も短髪である。

だけど私と違って可愛らしいアクセサリーを着けている。

私もそうなった方が良いのだろうか。

そんな事を思うけど。

まあ今可愛い恰好ばかりしているから。


「お姉ちゃん。悩み事?」

「.....まあね。.....彼の事でね」

「そうなんだ。矢口さん?」

「そうだな。矢口基介だ」

「きっと大丈夫と思うけどね。私は」

「.....そうだな」


矢口基介という人間に出会ってから世界が変わろうとしている。

私は彼からは違った魅力を感じるが。

頭の中が否定している。

見るのと考えが違う。

いつからだっけか。

私がこんなゲスになったのは。


「お姉ちゃん。矢口さんなら聞いた限りでは大丈夫だって思う。.....確かに他の奴らは外道だったけど。矢口さんからは違った魅力を感じる」

「守るべきものがあると大変だ」

「全部お金、容姿、経歴とか目当てだったもんね」

「.....矢口はそういうの興味無いって言ってるしな」


「不思議な人だね」と梓はリビングのドアを開けてから台所に向かった。

それから鼻歌混じりにお茶を淹れ始める。

因みにだがこのマンションは梓に貸している。

それは梓がこの辺りの高校に通っているからだ。

進学ついでに貸した。


「お金に興味ないとか逆に不気味だけどな」

「私は魅力を感じるよ。そういう人」

「そうか?私はけったいだなって思うぞ」

「そうなの?」

「ああ。だってお金に全く興味無いんだぜ?そんなの.....逆に何か目論んでいるとしか思えない.....」

「お姉ちゃん」

「.....何だ?」


「お姉ちゃんは過敏になり過ぎているんじゃないかって思う。.....過敏になり過ぎて信じる事を忘れている気がするよ」と梓が言ってくる。

心配げにだ。

私は考え込みながら「だけど」と言う。

すると梓は「大丈夫。きっと上手くいくよ。これからはね。これだけ運が悪かったんだから」とニコッとした。


「お茶飲んでから.....矢口さんにまた会いに行ったら?」

「.....」

「それが良いと思う」

「様子見って事か」

「そうだね」


抜き打ちみたいで嫌なんだが。

思いながらもまあそれも良いかもなと思いつつ。

そのままお茶を飲んだ。

それから私は支度して下に降りる。

その時に.....私は絡まれた。


☆(矢口基介)サイド☆


放課後になってからビルの前を通り過ぎた時にカメラを持った変な男性達に絡まれている女子を見つけた。

用事があると言って2人とは別れた後だ。

俺は「?」を浮かべて見ると.....見た事のある女子だった。


「鬼門?」


俺はそんな事を呟きながら「何だお前ら」と言っている鬼門を見る。

パパラッチにでも遭っているのか?と思ったが。

どうも違う様である。

カメラを片手に鬼門に触ろうとしている。

通行人に見えない様にしているし気持ち悪い。


「.....」


正直あんな態度を取ってきた鬼門を助ける義理は無いけど。

だけど困っている女子を見捨てる程、俺は落ちぶれちゃいない。

俺は飛び出してから「おい」と3人に声を掛ける。

すると「あ?」とカメラを持った奴らは俺に向いて反応する。


「え?」

「その子は俺の知り合いだ。.....手を出すな」

「何だお前?鬼門さんと知り合いか?」

「そうだな。まあ.....色々あってな。.....っていうかそれは良いとして鬼門が嫌がっている」

「あー。そういうの良いの。これだから一般人は。俺達は記者だから」


そして手を再度伸ばそうとしたので俺は堪らず鬼門の手を握った。

それから思いきり逃走する様に駆け出して行く。

「待てコラ!」という声を振り切ってだ。

鬼門は俺を見ながら唖然としつつ「や、矢口?」と反応してくる。


俺は「良いから。一先ずは俺の家まで逃げるぞ」と言いながら前の人込みに紛れながら駆け出して行く。

そうしてから俺は鬼門を家に招いた。

というか強制的に家に入れた。

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