第14話 貴方なら素顔を

☆(荒木夕凪)サイド☆


私は孤児院。

つまり児童養護施設で育った。

母親に引き渡されて一人寂しく.....家族の愛とかも知らないまま育った。

そんな中だったが私は13歳にしてようやっと家族と思える人達に出会った。


それがきーちゃんとまっちゃん。

そしてアイドルとマネージャーだ。

それから今日。

私は更に.....同じ境遇の子に出会った。


「佐藤さんもとっても大変な時間を過ごしたと思うけど.....今日から分かち合えたらいいね。.....私は強くそう思ってる」から」

「.....音心ちゃん.....」

「正直、児童養護施設出身が何だって話だよね。私達にはかけがえの無い存在が居るんだから」

「.....そう.....」


その様な会話をしながら私は音心ちゃんを見る。

私達は裏庭に出ていた。

そして基介が私達を見る中。

私と音心ちゃんは空を見上げる。

学年が一つ違うがこんなにも意思疎通が出来るのが嬉しい。


「佐藤さんはどこの児童養護施設出身?」

「秋田県」

「.....そうなんだね。私は福岡かな」

「.....そうなんだ」

「うん。.....私は.....北海道から捨てに行かれたみたいだし」

「.....それは分かっているの」

「北海道に母親と父親は居ると思う。だけど.....それも17年前の話だから」


「それ以外は分からないんだ」と言いながら顔を基介に向ける。

基介は「?」を浮かべて音心ちゃんを見ていた。

それから「彼は凄いんだ。私にとって彼は.....親友以上の関係があるよ」と音心ちゃんは胸に手を添えて話す。

私は「.....なるほど」と返事をしながら基介を見る。


「.....それは大げさだぞ。音心」

「またまたぁ。基介くんは恥ずかしがりなんだから」

「恥ずかしがりってお前な」

「.....うん。まあそれは冗談だよ。でも君がとても良い人だってのは知っていてほしいな」

「.....」


基介は目線を横にしながら考える様な感じを見せる。

それから私達に向いてから「俺はそんなに良い人じゃ無いよ」と謙遜する。

私は「それは違う」と否定してから彼を見た。

そして「君はダメ人間だけどそれでも頑張っている」と言葉を発した。


「褒めているのか貶しているのかどっちかな?」

「うーん。褒めているし貶している」

「.....お前な」


そんな言葉を発しながら私の頬を持ってからゆさゆさする基介。

私は「いやーん」と言いながら抵抗する。

すると「全く」と言いながら基介は手を離した。

それから「でも」と話す。


「.....良かった」

「.....?.....何が?」

「分かち合える親友が出来てな。.....俺は.....そうはいかなかったから」

「.....」


基介はハッとしてから音心ちゃんと私を見てから「そろそろ戻るか」と笑顔になる。

私は「?」を浮かべながら基介を見る。

音心ちゃんも何故か複雑な顔をしていた。

私は(何かあるんだろう)と思いながら「わ、話題を変える?」と聞いてみる。

すると2人は「そうだね」と苦笑し合った。


「じゃあ今話題のトゥインクルスターは?」

「.....」

「.....と、トゥインクルスターの話題か.....」

「え?何かマズいかな?」

「マズくはないが.....うん」


私がトゥインクルスターのメンバーだけど。

そう言いたかったけど何も言えない。

うーん。


そう考えながら私は考え込んでいると音心ちゃんが「私実は夕凪ちゃんのファンなんだ!会ったら失神しちゃうかも。会いたいなぁ。妹みたいだもん」と笑顔になって話してきた。

汗をかく基介。


「.....そうなんだな。夢は大きく持つのが大切だな」

「そうでしょ?でもまあこんな夢は叶わないって思っているけどね」

「.....」


私はヒソヒソ声で基介には話す。

「バラしても良いんじゃないか」という感じでだ。

すると基介は悩みながら「危険が伴うなぁ」と言葉を発する。

だけど音心ちゃんならと思うんだけど。


「あ。音楽室を案内してなかった」

「.....あ。それもそうだな」

「じゃあ最後にここに」


そんな言葉を発しながら音心ちゃんが音楽室を開ける。

そしてドアを閉める。

そこは至って普通のベートーヴェンの写真とか貼られている様な音楽室だった。

私は目を輝かせて周りを見る。

音楽が好きだから目がいってしまう。

それに中学ぶりだし。


「あはは。佐藤さんはこういう場所が好きなんだ」

「そう。私はこういう場所が好き」

「何か音楽をやっていたの?」

「.....違う」

「そっか。.....でも良いよね。好きな場所があるって」


そんな事を言いながら周りを見渡す音心ちゃん。

基介も周りを見渡す。

その中で私は「音心ちゃん」と言葉を発した。

そして彼女を見据える。


「何かな?」

「.....私は本名は実は荒木夕凪といいます」

「.....うん.....へ?それって.....へ!!!!?」

「待て!?荒木.....あ」


私は口を塞ぐ基介を制止した。

愕然とする音心ちゃんに私は髪の毛をかき上げて例の仕草をした。

音心ちゃんは「有り得ない」と呟きながら私を見てくる。

そして私は「黙って居てゴメン」と謝る。

「だけど貴方には知ってほしいから。私と貴方の内緒」と言葉を発してからそのまま歌い始めた。


「.....も、基介。これ現実?私は夢見ているの?」

「.....そうだな。すまん。俺は知っていたしこれは現実だ」

「.....ふぁぁ.....」


私はそんな会話を聞きながらしっかりと歌い終えてから頭を下げる。

様子が気になると思っていると音心ちゃんは私を強く抱きしめた。

そして強く拍手をする。


それから「内緒だね?そんな中で有難う。私に素性を見せてくれて」と涙目で笑顔になった。

そしてゆびきりげんまんをしてきた。

「内緒にする。絶対に」と言いながらだ。


「.....ありがとう。音心ちゃん」

「ありがとう。夕凪ちゃん」


バラしてしまったのは果てしない問題だったかも知れないが。

彼女なら信頼出来るって思った。

だからバラしたけどマネージャーに怒られそうだな。

だけど私は。

私は.....これで良かったって思う。

絶対に全てが。


「.....時間が無いぞ」

「.....そうだね。戻ろうか」

「そうだね」


そして私達は教室に戻る事にした。

色々あったけど。

後悔は無い。

そう思える感じだった。

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