第13話 マネージャーの考え
☆(犬養智子?)サイド☆
私は部屋の中にマネージャーを入れた。
マネージャーの名前は義光香織(よしみつかおり)という。
ちょっと厳しめのマネージャーである。
だがその実力は確かで.....会社を立て直したという噂がある。
それは嘘か本当か分からないが。
私は彼女は苦手だ。
「時に.....この場所に来て目的は達成したのかしら?」
「.....そうですね。まだ達成して無いです」
「そうなの。まあそれにしても.....人を探すのに出て行くって言った時は楓と一緒に本当に驚いたわ」
「.....そうですか」
「そうよ」
そしてマネージャーは部屋を見渡す。
一般的な女子の部屋。
特に着飾られてない様な感じの整っている部屋を見渡し終えてから私を再度見てくる。
「そうね。それなりに真面目にやっているんじゃないかしら」とマネージャーは言葉を発する。
私はホッとした。
何故かといえば.....私が出て行くのに条件があった。
それは幾つかの条件なのだがそのうちの1つが部屋の整理だった。
「.....ただ」
「.....ただ?」
「貴方は色恋にどうも染まっている様ね」
お茶を噴き出した。
それから咳き込んだ。
色恋って!?何それ!!!!?
私は愕然としながらマネージャーを見る。
マネージャーは「楓から聞いたわよ。横の男性とイチャイチャしているって」と厳しめの目を向けてくる。
「言い付けは守っています。色恋じゃないです。あくまで彼へ食事を分けているだけです」
「あら。そうなの?でも楓の言っている事は別よ。.....貴方が飲み込まれるって言っているわ。また悪の方に」
「.....悪い方にはもう飲み込まれません。私は私で努力しています」
「.....そうかしら?.....だったら良いけど」
何とか誤魔化せた気がする。
私は汗を拭いながらホッとしつつ「かえちゃんめ」と思ってしまった。
余計な事を言わないでほしい。
彼はそんな人間じゃない。
私が目指すのは私を痴漢から救ってくれた恩人だけだ。
「彼を助けすぎているのは申し訳有りません。でも.....そんな気は無いです」
「そう。.....それなら良いんだけど。色恋をし過ぎて見失ったら駄目よ。色々と。私も貴方を.....」
「.....知ってます。貴方が.....マネージャーが私を救ってくれた恩人だって事は」
「なら良いのだけど。.....私は貴方も含め。.....夕凪も家族と思っているわ」
「そうですね。知ってます」
「.....だから失いたくはないわ」
そう言いながらマネージャーはお茶を飲む。
粗茶になってしまったかもしれないが。
だけど美味しく入れたつもりのお茶をだ。
そしてマネージャーはニコッとした。
「でも貴方も大人になったわね」
「.....?.....それはどういう意味ですか?」
「貴方は全てにおいて.....いや。貴方の意思を感じたのは初めてよ。今回が」
「.....!」
「貴方はいつまでも誰かの影の下に居るのかって思っていた。だけど違った。貴方は貴方なりに成長している。その事が嬉しくてね。何よりも」
「.....マネージャー.....」
「私は.....こんな事を言ったら駄目だけど。実は契約会社の意思とは反して私自身は貴方を応援しているわ。貴方の意思全てが実る様な事をね」とマネージャーは言う。
それから「貴方に厳しめに当たっているのも愛情と理解してほしい。お願いね」とマネージャーは滅多に笑みを浮かべないが次々に笑みを浮かべる。
私は衝撃を受けた。
「.....何で.....」
「最初に言った通りよ。私は貴方を娘と思っているわ。私自身もまだまだ三十路ちゃんだけどね」
「.....」
「.....貴方の家庭事情を知っているからこそ。私は貴方にこれだけ厳しめに当たった。.....それは今も昔も変わらない」
「.....マネージャーは計算していたんですか。全て」
「計算じゃないわ。.....これは飴と鞭。だけど飴が多すぎるだけね」
そう言いながらマネージャーは「今日来た目的は貴方の部屋、様子、状態を見に来たのよ。母親身分としての抜き打ちチェック。だけどその心配も要らないわね」とまた笑みを浮かべた。
私は唇を噛む。
それから涙を浮かべる。
「何でそこまでしてくれるんですか」
「.....そうね。ああその前に私の生い立ちを話して無かったわね」
「.....?」
「私はね。.....馬鹿だったのよ。.....不良だったの。家庭も崩壊していたし」
「.....え?」
そんな生真面目そうに見えるのに?
私は衝撃を受けた。
そしてマネージャーを見る。
マネージャーは書類を見ながらメガネを外した。
それからマネージャーが髪の毛を上げると右額に大きな傷痕が有った。
「.....それって.....」
「金属バットで相手に殴られた」
「.....!!!!!」
「.....これは決して消せない傷よ。.....だけどこの傷を見て思うわ。.....私の使命をね」
「.....」
それからマネージャーは「家もどす黒かったし家族が欲しかったのよ」と苦笑する。
そして「私は.....貴方達を一流のアイドルに仕上げられた事が今までで最高の誇りね。そして貴方達という家族に出会えて私は幸せよ」と笑顔になった。
私は「.....」と思いながら涙を浮かべる。
また泣いた。
「貴方がどう行動しようが私は見守るだけよ。だけどこれだけは約束ね。.....あまり常識外れの事はしない様に。これはお願いというよりかは約束ね」
「.....分かりました」
「楓もきっと同じよ。思いはね」
「.....はい。そう思いたいです」
涙が止まらなかった。
そしてマネージャーがハグしてくれた。
私はこの時。
マネージャーと仲間達に出会えた事を最高の誇りに感じた。
それから私はマネージャーを母親の様に思えた。
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