第10話 追跡

☆(犬養智子?)サイド☆


何を話していたのだろう。

バレンタインチョコの事を話していたなんて嘘って分かる。

だからとても気になる。

私は思いながらゆうちゃんが帰った後に矢口さんを見る。

だけど矢口さんは「いや。何も話してない。ただの世間話だな」と苦笑して誤魔化した。


当然だがそれも嘘って分かる。

私は気になる中だったが追及はせずにそのまま居た。

そのお陰で聞く機会が無く隣の部屋に帰る時刻になった。

私は顔を上げる。


「矢口さん。今日はありがとうございました。あの子の.....ゆうちゃんの相手をしてくれて」

「彼女は面白い子だな」

「彼女は私にとってはとても大切な子です」

「.....そうか。.....なあ」

「?.....はい?」

「.....いや。何でもない」


矢口さんはそう言いながら目線を横に向ける。

何か聞きたそうな顔だったが.....私は聞き返さなかった。

その顔からは正直.....多分だけど私の家族構成とか聞きたかったんだろうなって思ったから。

私の家族。

あの屑どもを知っても意味がないので私は何も言わない。


「.....じゃあまた」

「はい。矢口さん」


それから私は矢口さんと別れてからそのまま鼻歌交じりに横の部屋に戻る。

ほわほわと頭の中に浮かぶ。

「次は何を作ってあげようかな」と呟きながら私は埃の積もった教科書を見る。

そして眉を顰めた。

正直を言ってしまえば私も学校に行きたいのだが。

だけど。


「.....もうこんなの頭が追い付かないだろうなぁ」


そんな事を呟きながら私は埃を払う。

そして息を吹きかけてから数学の教科書を見た。

あの頃は.....がむしゃらに頑張っていた。

目標も無くて、だ。


だけど私はアイドルが好きでそっち方向に頑張った結果。

親に捨てられ親にたかられた。

これで良かったのかと思う事があったりする。


「.....だけど私はアイドルの道を選んだから」


その様に呟きながら私は教科書を置いた。

それから私は歌を口ずさみ。

そして明日.....彼に作ってあげる料理の事を考える。

うん?何でこんなに嬉しいのだ?私は?



翌日になった。

そして隣の部屋からごそごそと朝早くから音がする。

つまり学校に行くのだろう。

私の準備もばっちりだ。

何を準備したかって?それは。


「おはよう。矢口さん」

「え?あ、ああ。おはよう」

「はい。お弁当です」

「.....へ!?」


矢口さんは相当に驚愕する。

私はニコニコしながらそのお弁当を渡した。

それから柔和に彼を見る。

彼は「ありがとう」と言いながら通学鞄に仕舞う。

私はその姿に「気を付けて」と見送る。


「ありがとう。真紀」

「.....気にする事は無いよ。これぐらいしかないからね。出来る事が」

「.....うん。だけど嬉しいよ」


そして矢口さんはそのまま学校に登校した。

私はその背中がなくなるまで見送ってから拳を握ってから「よし」と固く決意する。

それから私はルンルンな感じで私の部屋に帰る。

そうしてから一階から出て来た矢口さんの背中を見ながら柔和に.....な.....。

ふむ。あの女子は誰でしょう?


「.....」


何か矢口さんを待つ様に無茶苦茶可愛い女子が居る。

そして矢口さんに声を掛けている。

私は「.....!?」と思いながら食い入るように見つめる。


やがて2人は歩き出した。

しかも並んで歩き出したのだが.....。

マ、間、魔.....マジ誰?!


「え?だ、誰.....?」


おさ、おさななじみ?まさか。

そんな馬鹿な。

でもそれであってもあんなに馴れ馴れしくないと思う。

まるであれでは恋.....人。

私は「ほぁ!」と声を発してからぬいぐるみを叩いた。


「や、矢口さんに.....あ、あんな可愛らしい友人か幼馴染!?まさか.....話してなかったよね?!」


私は「こうしちゃいられない」と時計を見て思いながらそのまま変装して駆け出して階段を(ずだだだだ!!!!!)と駆け下りた。

最早エレベーターなんか待ってられない。


時間が無い。

これは追跡しなければ。

あの女子は誰なのだろう。

判別しなければ!


☆(矢口基介)サイド☆


横に居るこの褐色肌の女子は俺の数少ない友人。

友人の小池音心(こいけおんしん)。

ボーイッシュなスタイルに髪の毛を短髪にしての褐色肌。


何というかカシスとかレモンの愛しい香りがいつもする。

滅茶苦茶可愛いらしい女子だ。

部活動生なので身長も高い。

そして笑顔が絶えない。


「基介!何だか女子の香りがする!私に黙って浮気とは?」

「気のせいだろ。お前は鼻が良すぎる。しかも浮気じゃねぇしないって」

「そうかなぁ?っていうか鼻が良すぎるかな?」

「そうだな。犬みたいかな」

「そう?わんわんみたい?」

「そうだな」


そんな会話をしていると凍てつく視線を感じた。

俺はゾッとしながら道路の鏡標識を見る。

そこに.....何故か真紀が.....写っていた。

マジに何!?


「お?基介どした?」

「.....い、いや。何でもない」

「怖い顔をして。背後に何かある?」

「無いぞ。早く学校に行こう」


待て待て何だ一体。

思いながら俺は冷や汗を感じながら歩き出す。

そして歩き出すとその影も付いて来る。

何かを追っている様な感じで黒いオーラを出している。


「.....」


俺は必死に真紀を撒こうとするが駄目だ。

アイツ結構しがみつく様に付いて来る。

このままでは音心にも怪しまれる。

どうしたのだアイツは一体!?

変装して追跡とか何が起こっている!?

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