第7話 ドキドキ

☆(犬養智子?)サイド☆


私は.....何だろう。

本当に何だろうか。

自分の行動が良く分からない。

なぜこんな事をしているのかも。


だけど惹かれるものがある。

それはとか恋じゃないと思う。

この矢口さんは.....他の人とは違う何かがある。

だから私は初めてかえちゃんの言い付けの規則を破った。


「.....お前.....本当に鬼門から怒られるぞ」

「.....私は構わないです。かえちゃんから怒られても私個人の責任ですから」

「.....」

「そういう心配もしてくれるんですね。.....矢口さんはやっぱり他の方とは違いますね」

「当たり前の事をしているだけだ。.....俺はお前が心配だ」

「矢口さん.....」

「マジに元の家に。つまり古巣に帰されるかも分からないぞ。俺に関わっていたら」


そう言いながら矢口さんは俯く。

私はその顔を見ながら「大丈夫です」と言いながらかたずけをする。

そして矢口さんの手を見た。

そして聞いてみる。


「握ってみても良いですか」

「?.....何で?俺の手なんかに触れても.....」

「良いんです。.....私は握ってみたいです」

「.....そこまで言うなら」


手を差し出す矢口さん。

その手を私はゆっくりと握りしめる。

何か電流が駆け抜ける感じがした。

それから私は(ごつごつしている。男の子の手だ)と思ってしまった。

そして私は「矢口さんの手は暖かいですね」と告げる。


「お、おう.....」

「どうしたんですか?」

「.....いや。どうしたって言われたら恥ずかしいんだよ」

「あ.....な、成程」

「正直女子と手を握り合うなんて信じられない。それも国民的アイドルに」

「独特な握手会ですね」

「.....あ、ああ」


私は赤面する。

それからバレないように俯く。

この感情は何だろうか。

暖かいこの感情は。


「.....真紀」

「.....は、はい」

「恥ずかしいから外して良いか。手を」

「.....あ、はい」


そして私は名残惜しい感じで手を離す。

ん?名残惜しい?

どういう事だ?

考えながら私は「?」を浮かべつつ手を握るのを止めた。

それから矢口さんを改めて見る。


「矢口さん」

「.....な、何だ」

「私を助けてくれてありがとう」

「???.....君を俺は助けたか?」

「独りぼっちから助けてくれて有難うという意味です」


私は言いながら矢口さんを見る。

矢口さんは「!」という感じになりながらまた赤面した。

それから「いい加減にしろよ」と呟きながら横を見る。

私はその顔を見ながらニコニコした。


「.....矢口さんに出会えて良かったです」

「恥ずかしいセリフをよくそこまでポンポン言えるな」

「.....あはは。何ででしょうね。これが私の本心だからかな」

「.....いや。本心って」

「私は本心しか言いません。.....それはアイドルだからです」

「.....」


赤くなりすぎて茹でだこの様な矢口さんに笑みを浮かべる。

それから私も少しだけ赤くなった。

この今のここが。

そして今の私が。

何よりも心地良かった。


「.....矢口さん」

「こ、今度は何だ」

「.....私の自画像を描いてくれませんか」

「!」

「.....だ、駄目ですかね?」

「.....俺は絵は描けない」


そして矢口さんは妬む様に手を見る。

その手を私はゆっくり握った。

それから優しく撫でる様にする。

そうしてから私は矢口さんを見る。


「.....大丈夫です。矢口さんなら描いてくれるって思ってます」

「.....その期待には応えれないぞ。多分」

「多分って言ってくれた時点で期待します」

「それは言葉のあやだ。.....今はマジに描けない」

「はい。いつまでも待ちますよ」

「.....いやお前.....嘘だろ」


「私は言いましたよ。私の本心です。これは全て」と力強く矢口さんを見る。

手を撫でてあげた。

矢口さんは「.....」と考えてから「分かった。少し待ってくれ」と答えてくれた。

私はその顔を見ながら「はい!」とニコニコしながらまた笑顔になる。

そして愛おしい様な感じで矢口さんを見た。


「何でいきなりそんな事になったんだ」

「.....私は矢口さんの絵が。手腕が見たいって思ったからです」

「楽しくないよ。俺の手腕なんか見ても」

「そんな筈ありません。私は.....貴方の事は真剣に考えているつもりですから」

「.....」

「.....お願いします」


矢口さんに頭を下げる私。

それから顔を上げて矢口さんを見る。

すると矢口さんは私を見てから「うん。考えてみるよ」と言ってくれた。

私はぱぁっと心まで明るくなる。

ん?何だこの感情は?


「.....お前って本当に不思議だな。真紀」

「.....私はそんなに不思議ですか?」

「.....ああ。今までの出会った女の子達の数倍違う。だから魅力有るんだろう」

「.....」


何故か矢口さんに言われると結構胸が弾む。

一体何故なのか。

こんな気持ちになったのは.....初めてだ。

まさか.....?

いや。

でも有り得ないな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る