第5話 鬼門楓(きもんかえで)と荒木夕凪(あらきゆうなぎ)
☆(矢口基介)サイド☆
正直言って俺は物欲が無い。
物欲って何だろう的な感じで物欲が無いのだ。
だから一人暮らしの資金も貯まっている。
困ったものだと思う。
そんな時だった。
彼女が.....真紀が俺に「一緒に出掛けませんか」と誘ってくれたのは。
それが何よりも嬉しかった気がする。
今回はパーッとやれたらなと思うが.....。
「ごちそうさまでした」
「はい。.....ありがとうございます」
「.....?.....何がだ?」
「全部食べましたね。これって真紀的にはポイント高いです」
「.....お前は某有名アニメの妹か?」
「あはは。正確には姉ですけどね」と答える真紀。
俺は「?」を浮かべながら「お前には妹か誰かが居るのか?」と聞いてみる。
すると真紀は「そもそも私がアイドルになったのって妹です。病弱な妹が居たから.....」とまた暗くなる。
「.....真紀。何があったんだ」
「家族は丁度妹を中心に回っていました。.....そして妹は太陽だったんです。妹が天才だったから期待されていました。そして私は.....期待されなかった。だから今に至っています」
「.....難しいな。.....だけど何となく分かったけど」
「そうですね。.....私も何を言ってんだか」
「「アイドルっていう仕事は軽い仕事だろ?」って親によく言われます」と真紀は深刻な眼差しをする。
「私は認められない存在ですから」ともだ。
俺はその姿を見ながら眉を顰めた。
「.....だからアイドルになったんです。見返す為に」
「そういう事か。お前は偉いな」
「.....アイドルは素晴らしいって言いたかった。だからアイドルになった。そしたらまた苦痛が待っていたんです」
「苦痛.....ってのは要はストーカーとか金とかそういうのか」
「親からはたかられる日々。.....そしてストーカーに嫌がらせ.....もう滅茶苦茶です。そんな時に貴方に出会った。貴方は不思議な人ですね。何でも喋ってしまう」
俺は目を動かしながら外を見る。
すると満月になっていた。
それを同じ様に真紀が見る。
そして「綺麗ですね」とニコッとした。
「.....真紀には友人は居ないのか」
「居ます。残り2人の存在です。アイドル」
「彼女らとは仲が良いのか。.....確か鬼門と荒木だったか」
「.....鬼門楓(きもんかえで)ちゃんと荒木夕凪(あらきゆうなぎ)ちゃんです。一応家族の様に慕ってくれますよ」
「.....そいつ等は今、何処に居るんだ?」
「私の代わりにまだアイドルをしています」と答える真紀。
それから俺を見てくる。
「彼女らには会わない方が良いですよ。人気ですから」と言う真紀。
そして俺に苦笑した。
「彼女らも心配しています。私を」
「良い奴らじゃないか」
「.....そうですね。.....それ故に.....ちょっと厄介です」
「厄介ってのはどういう意味で?」
「厄介ってのはつまり.....心配が過剰なんです」
「心配が過剰ってのはつまり私を心配しているから途中から馴れ馴れしい人はみんな敵として認識しています」と答えた。
俺はその言葉に「成程な」と言葉を発する。
それから「会わない方が良いな。俺とか特に」と答える。
「そうですね。尖っていますから」と真紀は言った。
「でもいつか矢口さんは紹介したいですね」
「.....止めとけ。そういうお節介は要らない」
「お節介ですか?これは違いますよ」
「俺から見たらお節介だ。.....気を付けた方が良い」
「.....そうですね。.....分かりました」
そして部屋をまた片す。
すると隣の部屋のインターフォンが鳴った。
隣の部屋ってのはつまり真紀の部屋だ。
「うん?」と思いながら居ると真紀が表に出て行った。
「宅配でも来たか」
そんな事を呟きながら居ると声が聞こえた。
その声は透き通る様な川の流れの様な声.....であり。
俺がテレビでよく聞いた様な声だった。
これは確か.....?!
思いながら俺ははたきを置いてからそのまま玄関に向かうとそこに。
「.....や、矢口さん.....」
「貴方誰ですか?」
そこに厳つい目をしているサングラスを身に着けている少女。
服装はへそ出しのワイルドな服装であり目が大きく。
ボブヘアーの金髪の女の子が立っていた。
だが品がある。
しかしこの子は.....確か。
鬼門楓!
「.....な、何でこの場所を知っているの!?楓!」
「マネージャーから聞いた。.....心配になって来てみたら男の子の部屋に連れ込まれているなんて.....大丈夫?」
「大丈夫。この人は.....」
「大丈夫じゃ無いよ。まっちゃん。.....こういう男は信頼できない」
そう言いながら厳しい目をする鬼門。
俺はその言葉に(それはそうだな)と思いながら鬼門を見る。
あくまで俺がおかしいと思う。
だって1人暮らしの女子を連れ込んでいるのだから。
それも自室にだ。
「.....」
「.....」
俺は鬼門を見つめる。
それから.....暫く敵対する感じで立っていた。
そして鬼門は「ねえ。貴方。.....この子に何もしないで」と言ってきた。
「近付かないで」とも。
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