第4話 単なる女の子として

☆(犬養智子?)サイド☆


私は何て大胆な事を言ってしまったのだろうか。

し、知り合いにはなった。

だけどそんな知り合いとはいえあまり素性の知らない男の子の部屋に.....入るなんて事を.....私のファンが知ったらどうなるのだろうか。

もしかしたらその場で気絶するかもしれない。

考えながら私は矢口さんを見る。


「.....や、矢口さん?」

「.....な、何でしょうか」

「あの。その。何かありました?」

「.....いや。荒れた部屋に呼ぶのはちょっとと思ってやっぱり立ち止まってる」

「そうなんですか?私は気にしないって言いましたよ?例えばえ、えっちな本とか無ければ」

「それは無いけど.....でも」


私はじれったいと思ってから勝手にドアノブを握って開ける。

するとそこには脱ぎ散らかされた物や。

コンビニ弁当の空き容器。

使われてない未使用の台所用品。

など典型的な感じの男の子の部屋が広がっていた。


「.....あらぁ」

「な?だから入れたくなかったんだ」

「.....確かにこれは汚いですね。.....先ずはおかたずけからですかね」

「え?い、いや良いよ。そんな事をしなくても」

「でも私が気になります」

「いや。そこまでしてもらう義理は無いぞ」

「あ。じゃあ取引しましょう」


そして髪の毛を解いてから帽子を取ってから素性を見せる。

それから私はニヤッとした。

「今度.....買い物に付き合って下さい」と矢口さんに告げる。

すると矢口さんは「え?そんなもので良いのか?」と反応をする。


「はい。私は矢口さんと買い物したいって思ってました。矢口さんがどういうのに興味が有るのか。それが知りたいです」

「.....そんなもの知っても何の意味も無いぞ?」

「私は興味あります。だから意味はあると思いますよ?」


それから私は埃の積もった台所用品を見る。

勿体無いなぁ。全部日本製だし。

一回も使った事の無い物ばかりだと思う。

私は考え込んだ。

何というか私の部屋にあるものは全部外国製で安物だから羨ましい。


「矢口さん」

「ああ。何だ?」

「折半しましょう」

「は?何をだ?」

「私はこの部屋で色々作ります。互いの食材費を互いで払って.....私がお料理作りますので」

「は!?いや待て!?それは迷惑だろ!?」

「迷惑じゃないです。こんなに使われてない包丁とかまな板とか.....勿体無いです。目が当てられないです」


私はプンスカ言いながら部屋に移動する。

それから「ほらほら。片しますよ」と話す。

すると矢口さんは「まるで奥さんだ」とはな.....ふぁ?

私は真っ赤になってから慌てる。


「や、矢口さん.....それは言い過ぎです」

「.....え?あ、そ、そうか」

「.....正直言って私は.....」

「.....?」


その次の言葉が出てこない。

まあ出てくる訳が無いが。

恥ずかしい。

思いながら私は「さ、さー!準備しましょうかね!」と腕まくりをする。

それから準備を始める。

すると矢口さんが口を開いた。


「.....高校とかそういうの。良い場所が見つかると良いな」

「.....!.....ああ。まあそういうのは今は考えれないので。有名になるって大変なんです。顔が知られるから」

「そうか。.....そうだよな」

「.....矢口さんも経験が?」

「俺は.....数年前だけどな。.....だから成長しているからもう関係無いと思うけど」

「そうなんですね」


私はその言葉を聞きながら矢口さんを見る。

矢口さんは複雑な顔で(あまり聞かないでほしい)的な顔をしている。

私は追及は避けてから「そっちのお洋服を拾って下さい。そしてタオルとか洗濯しましょう」と笑顔になる。


「.....真紀.....」

「その為にこの場所に来たんですから」

「.....そうだな。有難うな」

「いえいえ」


そして私はカレーを温める間。

矢口さんの部屋を片す。

先ずは洗濯物、雑誌、ゲーム機。

そういう大きなものを片してから.....。



「埃は後で払います。じゃないと汚いですから」

「そうだな。.....色々飛ぶもんな」

「そうですね。そうなると.....カレー温まったみたいなので食べますか?」

「せっかくお前が作ったからな。食べるよ」

「有難う御座います」


「それにしてもアイドルの作るカレーとかクッキーとか。他のファンから見たらマジに羨ましいだろうな」と言いながら苦笑いを浮かべる矢口さん。

私はそれに対して「そうですね」と返事をしながら笑みを浮かべる。

確かに羨ましいかもしれないけど。

そういえば。


「.....矢口さんって私の経歴に興味ないんですか?」


カレーを美味しそうに食べる矢口さんに聞いてみる。

そんな矢口さんは「ないよ」と笑みを浮かべる。

そして「君は普通の女の子だから」と私を見てくる。

正直衝撃的だった。

そんな本心を聞けるとは思わなかった。


「.....それは.....何故ですか?私は.....トップアイドルですよ?お金、性的、名誉で利用しようと思えば幾らでも利用できます」

「逆に聞くけどそういうの利用して何になるの?」

「.....え?」

「.....俺はそういうの嫌いだしそういう人間も嫌いだ」


言いながら目を横に向ける矢口さん。

私は目を丸くする。

利用される事しか考えてなかった。


だから初めての経験だった。

この人の様な謎の言葉は。

考えながら私はクスッと笑う。


「.....本当に不思議な人ですね。興味無いんですか?私は.....全ての地位がある。資産が一応沢山ありますよ?美貌もこの感じですよ?」

「.....興味無いって言ったら嘘だな。.....だけど俺は君を単なる女の子としか見てない。基本的にはな。.....君は大きな存在だ。俺にとってはとても大きな隣人関係だ」

「.....!.....本当の本当に不思議な人ですね。矢口さんって」


興味が湧く感じだ。

この人に対して。

考えながら私は「美味しいよ。カレー」と言ってくれる矢口さんに嬉しくなった。

そして私は恥じらった。

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