第2話 クッキー

☆(犬養智子?)サイド☆


私は痴漢から救ってくれたヒーローを探してこの場所に来た。

お礼が.....どうしても言いたい。

私は初めての経験でとても怖かった。

なのに周りはちっとも助けてくれない。

その中で彼だけは私に痴漢した男に対して「お前!何をしているんだ!!!!!」と怒ってくれた。


彼の事が好きとかいう事じゃない。

だけどフードを深く被っていて見えなかった彼の顔。

彼に.....お礼が言いたい。

だから彼が居ると思われる場所までわざわざ引っ越した。


正直、日本中で売れているアイドルである私はこういう事をすれば一気に大変な事になるとは思うが。

それでも私は探していた。

探したいと思っていたから探している。

だから引っ越した。


「.....」


と思って動いていた最中。

横の部屋の男の子。

彼から何だか違和感を感じる。


違和感というのはつまり彼自身が他の人とは違う感触がした。

私は「?」を浮かべながら彼に隣人になると挨拶をした。

何というか私の素性が知れてしまった様だが彼はそんなに動揺する事も無かった。

私は「不思議な人だな」と思いながら彼を見ていた。


私は素性が明らかにされてしまっては困るのでしばらくはどこにも通わない様に.....と言うかマネージャーに止められているので今は様子見で私は私のヒーローを彼を探す事にした。


私は今日も騒ぎにならない程度にダンスの練習をしてからデビュー曲を口ずさむ。

それから過ごしていたが.....何かお腹がすいた。

直ぐに私はお菓子を作る準備に取り掛かる。

そして私はクッキーを焼いた.....そうだ。

隣の男の子にも持って行ってあげよう。

もうちょっと観察してみたい。


「そうと決まれば」


立ち上がってから私はクッキーを持ってから外に出る。

それから横の部屋のインターフォンを押した。

左隣。

矢口と書かれているドアのインターフォンを。

すると「はいはい」と言いながらドアが開いて驚愕される。


「うあ!?な、何でしょう!?」


という感じで。

私は「面白い人だな」と思いながらニコッとする。

それから「実はクッキーを焼いたんですけど全部食べれないので食べませんか」と言葉を発する。

すると「うぇ!?良いんですか!?」という感じの表現をされる。

私はクスクスと笑いながら「はい」と笑顔になる。


「面白い反応ですね」

「そ、それはまあ。だって日本で有名なアイドル様ですし」

「アイドルじゃないですよ。今は。今の私は平凡な女の子です」

「そ、それは無理があります」

「あはは」


私は恥じらってから頬を掻く少年を見る。

この人は面白い人だなって思う。

信頼が出来そうな気配もする。


「モテるでしょ?矢口さんって」

「へ!?いや。モテないですよ?」

「え~?そうですか~?何だかモテそうなイメージがあります」

「それは気のせいだと思います.....」

「そうですか?あはは。優しい方だから」

「優しくないですよ。.....俺はそんなの」

「?」


矢口さんは何か触られてはならない感じになった。

私は考え込む。

それから「すいません。何か触っちゃダメな傷を抉りました?」と聞く。

不安げに聞いてみると矢口さんは「大丈夫です」と返事をした。


「.....抉っちゃならない傷なんてのは数多くありますから」

「.....そうなんですね」

「ここに住んでいるのもちょっと訳アリです。あはは」

「大変ですね」

「俺はもう慣れました」


そう言いながら矢口さんは苦笑する。

その姿に私は過去の傷を思い出す。

それから.....いや。

これはどうでも良いか。


「矢口さん。このマンションは良い場所ですか?」

「.....え?いきなりですね。うん。住み心地とか結構良いですよ」

「そうなんですね。すいませんいきなり変な事を。.....私、矢口さんが隣人で良かったです」

「?」

「私、本当に色々な経験をしていますから」

「前の住まいが良く無かったって事ですか?」

「まあそうですね。色々です」


私は色々な不愉快さを思い出す。

ストーカーとかそういうの。

それから私は矢口さんに顔を上げて向いた。

矢口さんは神妙な顔をしている。


「.....まあストーカー対策とかやらなかった。馬鹿だったんですよ。私が」

「.....ああ。そういう.....いやそれは無いですよ。何を言っているんですか。犬養さん」

「あはは。そう言ってくれるんですね。有難う御座います」

「貴方は良い人ですよ。俺はそう思います」

「貴方は優しいですね。矢口さん」

「.....」


矢口さんはクッキーを持ってから「ありがとうございます。美味しく頂きます」と言ってくれた。

その顔に私は疑問を投げかける。

「矢口さんは何で私の事を大きく言わないんですか?」と。

すると矢口さんは「逆に迷惑でしょう。そういう事をしたら」と言う。


「.....俺には分かります。.....そういうのがはっきり。絵のコンテストで.....あ。すいません。何でもないです」


「コンテスト.....?」と言いながら矢口さんを見る。

矢口さんは「忘れて下さい。過去の遺物.....だと思います」と苦笑に苦笑を重ねる。

私は考えながら「分かりました」と答える。

そして頭を下げてからそのまま後にした。


「.....絵のコンテスト」


そんな言葉が気になったので復唱した。

それから私は隣の部屋に帰る。

絵のコンテスト.....か。

そんな事を考えながら私はスマホで気になったので調べたが情報は何も無かった。

調べ方が下手くそなだけかもしれないけど。

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